今から5億年〜4億4000万年前の古生代オルドビス紀。この時代、まだ陸生の生物はいなかった。三葉虫やウミサソリ同様に海で大いに繁栄した動物の一つが頭足類、つまりタコやイカ、貝などのなかまだ。

カメロケラス  Cameroceras

 オルドビス紀後期(4億7000万年〜4億4000万年)に北アメリカにすんでいたカメロケラスは現在のオウムガイの仲間で、長い真っ直ぐな貝殻に入ったイカのような動物−直角貝 Orthocone と呼ばれる−だった。
 直角貝の最大種・カメロケラスはオルドビス紀最大の動物で、完全な化石が見つかっていないので、正確な大きさはわからないが、殻の長さ6m以上(一説では11m)に達した。

 オウムガイ同様、貝殻の内部は隔壁によって多くの部屋(気房)に仕切られており、ここに空気か水を入れることで水中を上下に移動できた。軟体部は非常に小さく、一番下の気房(住房)に入っていた。
 体内に取り込んだ水を頭部の下から伸びる肉質の管(漏斗)から噴射して移動した。漏斗は柔軟で、どの方向にも向けることができた。8本の触椀(イカのような吸盤はなかった)で獲物を捕らえていた(BBC2006)。


 カメロケラスの殻の内部には隔壁が幾つも並び、細かな部屋に分かれている。軟体部があったのは殻口から3分の1ほどまでだった。そこから頭と腕が出ていた。
 軟体部の化石は発見されていないが、それなりに大きな眼、複数の腕があり、また姿勢を制御するために水を排出する漏斗があったとみられている。そして殻の内部の残り3分の2は浮力制御に使われた。この仕組みは現生のオウムガイで確認できる。

 カメロケラス少なくとも全長6mはあったと推定されている。その大きさゆえ、海中を自由に泳ぎ回るのは不可能で、浮遊さえも難しいとの指摘もある。海底に鎮座して、獲物が近づくのを待ち伏せしていたのかもしれない(海洋生命5億年史 2018)。


 オルドビス紀中期からシルル紀にかけ生息していたエンドケラス Endoceras も殻の長さが5mに達した。しかし直角貝にはもっと小さい種類の方が多かった。


 オルドビス紀中期に、ヨーロッパに棲んでいたオルソセラス Orthoceras は殻の長さ15cmほど。断面は真っ直ぐな円錐形をしており、その断面の化石は直角石とも呼ばれる(NEO大昔の生物 2004)。

 オウムガイは頭足類の1グループで、カンブリア紀前期に出現し、オルドビス紀に栄えてデボン紀に及んだが、その後は次第に衰え、三畳紀以降は現在のオウムガイに似た種類だけとなった。現在でもオウムガイ科に属する6種がある。
 この仲間は初めはまっすぐ伸びた殻を持っていたが、ついで角状に曲がり、次第に巻いた殻となった。
 近縁のアンモナイトは、シルル紀前期にオウムガイ類の先祖と分かれ、中生代に栄え、白亜紀末に絶滅した(万有百科大事典 1974)。


HOME