グリプトドン Glyptodon asper 鮮新世から更新世末期まで(500万年〜1万年前)南アメリカに棲んでいたグリプトドン類は、全時代を通して最も完全に甲冑を着けた哺乳類であり、まるでカメのように見える。それ故クルテン(1971)は哺乳類のカメと呼んでいる。非常に大きくて球状の甲羅を持ち、頭と足をその中に引っ込めることができた。頭にも帽子のような骨質の甲羅があったし、長い尾も鱗で覆われていた。指は前足に5本、後足に4本で鋭い爪が付いていた。 |
現在のアルマジロ類は合衆国南部からアルゼンチンにかけて20種ほどが棲んでいる。ほぼ全身が固い殻で覆われているが、グリプトドン類とは違い、よく見ると縦に何列かの帯状になっている。 最大種オオアルマジロは全長1.5m、体重45kgに達する。前足中央の指に頑丈な爪があり、これを使って巣穴を掘ったり、アリやその他の虫を食べるために地面を掘る。 |
グリプトドンは現在のアルマジロ類に似ているが、甲羅にはアルマジロのような間節がなく、五角形の小さな骨質板がびっしりと集合して互いに結びついている。その厚さは2cmほどもあった。アルマジロ類はグリプトドンよりも古く、すでに6000万年前の暁新世にパタゴニアに出現していた。しかしその頂点に達したのはやはり鮮新世後期から更新世のパンパテリウム Pampatherium(全長2m)である。 |
グリプトドンは全長3m、高さ1.3mもあり、ウシよりも重かった。グリプトドンは動きは遅かっただろうが、鉄壁の守りで固めていた。クリプトドンの堅固な武装は当然外敵に対応するためのものだったろう、つまりグリプトドンを襲う肉食獣も存在したわけだが、スミロドン Smilodon のサーベルも固くて丸いグリプトドンの甲羅には文字通り歯が立たなかっただろう。奇襲をかけてまだ引き込めていない頭の前部を捕らえるくらいしか手がなかったと思われる。 手前がフロリダのスミロドン Smilodon fatalis、背面がアルゼンチンの S. populator(Alan Turner, 1997)→ |
更新世(200万〜1万年前)にアルゼンチンやウルグアイのパンパスに生息していたドエディクルスは、グリプトドン類の最大種で全長4m、高さ1.7mに達した。体重は1.5tもあったと推定される。
ドエディクルスの太く長い尾の先には、直径が60cmもある棘のかたまり。まるで中世の騎士が持っていたスパイク付の棍棒だ。尾の基部6節が可動部分になっている。もちろんこれで襲撃者に一撃を加えたことだろう。また繁殖期には雄同士がこれを振るって争ったに違いない。 ドエディクルスの甲羅はグリプトドンほどの球形ではなく、肩の辺りが最も高くなっている。またグリプトドンとは異なり指は前足に4本、後足に3本だった。爪はやはり強大でこれで(現在のアルマジロのように)蟻塚を壊してアリを食べたらしい(鹿間、1979)。最近ではグリプトドン類は草や葉を食べていたのではないかともいわれている(BBC, 2006)。 |