ワイオミングでワピチ(アカシカ)狩をしていた Robert Elman(1974)らは、大きな褐色のクマが木に向かって後足で立ち上がり、高さ2m余りのところの樹皮を爪で引っ掻いているのを見た。Elman はクマがハイイログマかクロクマか、そのときはまだわからなかった。
 彼らとの遭遇に驚いたクマは四つ脚の姿勢に戻ると Elman らに向かってゆっくりと近づいてきた。Elman はようやくこれがアメリカクロクマであることを確認した。正面から見たクマの顔はフラットで、ハイイログマほどおうとつがなく、肩の盛り上がりもなかったからである (Hunter's Field Guide)。

 北アメリカにすむクロクマはハイイログマに比べてずっと小さいので、軽く見られがちであるが、時にはハイイログマと見間違えるほど大きなものがいる。
 地域によって大分差があるが、最も大型とされるペンシルバニア産の雄で全長163〜211cm、体重95〜265kg、ワシントン州産だと雄の平均体重100kgほど。

 シートン(1925)によると最大の記録は1921年12月にアリゾナで撃ちとめられたウシ殺しの大グマで体重がちょうど900ポンド(408kg)あった。
 しかしこの記録は1976年11月に、カナダのニューブランズウィックで Joseph Allan が撃った別の雄グマによって破られた。このクマは体重が After Dressed(内臓を取り除いてからの計量)で409kgあったのだ。全長は241cmだったから決して肥満体というわけではなかった。
 ハンターはしとめたクマから腸やその他の内臓を取り除くことがよくある。運ぶために少しでも軽くするためであり、また腐敗を遅らせるためでもある。この場合、実際の体重は計量値より15〜18%ほど多いと考えられる。Joseph Allan のクロクマの本当の体重 Live Weight470kgくらいだったことになる。なお、彼の猟犬の一頭はクマの前足の一撃で殺されてしまった。

Live(kg) Dressed(kg) 場  所 備  考
400 ノースカロライナ(1998)
397 ミネソタ(1994) www.bearstudy.org/
389 カナダ、マニトバ(2001) 全長236cm。車に轢かれて死亡。
370 ミネソタ(1991) John Kimball(2000)による。
364 カナダ、マニトバ(1987) 3ヶ月前(6月25日)に生け捕りにされた時は195kgだった。
364 ウィスコンシン(1885)
299 ニューヨーク(1975)
296 ウィスコンシン(1963)
291 ウィスコンシン(1968)
288 ウィスコンシン(1963) 16歳の女子高生、Linda Lunsman が射殺
287 ペンシルバニア(1923) 全長2.7mとなっているが毛皮の測定では?
328 ペンシルバニア(1986)
325 オクラホマ(1912)
278 ミシガン(1974)
313 カリフォルニア(1969) 生け捕りにされた。
265 ウィスコンシン(1953)
295 263 ミシガン(1971)
274 ニューヨーク(1957) 調査のために生け捕り
263 ジョージア(2001) ジョージア州での最大記録

 雌は雄よりだいぶ小さく、ペンシルバニア産で全長142〜173cm、体重は60〜160kgくらいだ。最大の記録の一つは1993年8月、ミネソタで捕獲されたもので体重236kgあった。1980年にマサチューセッツで捕獲された雌は212kg(Dressed)だったので実際にはミネソタのものより大きかっただろう。


 ブリティッシュ・コロンビアの白いアメリカグマ Kermode bear について、シートンは、明るいクリーム色がかった白色のクマ。基準標本では、頚の上部と頭部に、黄色がかったクリーム色がはっきり認められる(狩猟動物の生活)と書いている。
 ホッキョクグマと間違えられそうなシロアメリカグマはカーモード島に棲んでいるが、カーモード島のクマの多くは黒毛で、これら白いクマは少数派だと Leonard L. Rue(1981)は書いている。そして狩猟は厳禁されているということだ。

 アメリカクロクマには毛色の型が5種類あるとされている。アメリカ西部には黒が多く、東部には茶色がよく見られる。ロッキー山脈周辺には黒も茶色も多い。またいずれの地域にも胸にV型の白い毛、つまり月の輪を持つものがいる。茶色のクマには明るい色合いの Cinnamon Bear から暗色のものまである。
 ブリティッシュ・コロンビア沿岸には白いクロクマ(?)Kermode bear がいる。これらは目が赤いわけではないのでいわゆるアルビノ(白変型)ではない。
 アラスカの南岸からカナダの西海岸にかけては稀に青っぽい毛色 Glacier Bear が見つかる。


Glacier Bear

Cinnamon Bear

 クマは獲物を両腕で抱きかかえるようにすることがあるが、それは咬みつくためであり、いわゆるベア・ハッグとは違う。
 デービッド・L・ニューエルは一度、クロクマが60ポンド(27kg)ほどのブタを前足で抱え込み、その首に咬みついて、ブタの頭を体から食いちぎってしまったのを目撃している。ブタの体が倒れても頭はしっかりとクマの体に押しつけられていたのだった(リーダーズ・ダイジェスト、1966)。

Kermode bear

ブリティッシュ・コロンビア Provincial Museum of Natural History
 アメリカクロクマの毛色は固定されたものではない。黒い雌グマがシナモンの子を産むことがあり、その逆もある。また兄弟で色が違うこともある。しかしながら地域によって毛色に偏りがあることも確かである。Cinnamon Bear は長い間独立した一種と考えられていた。茶色のクマが多い北アメリカの東部地域でもめったに見られないのだが西部ではしばしば見出される。
 Glacier Bear は青味を帯びた灰色をしているのだが、これも当初は、同じ雌から青っぽいものと同時に黒毛が生まれることが知られるまで別の種類と考えられていた。一方、白い Kermode bear については少なくとも独立した亜種であるといわれている。他の地域では見つかっていないからだろう。

 2004年8月18日、アメリカ・ワシントン州のベーカーレーク・リゾートで、芝生の上でアメリカクロクマが寝ているのが発見された。作業員が何事かと思って近づいてみると、周囲にはビールの空き缶36本が転がっていた。クマはキャンパーのクーラーボックスを壊し、中に入っていた缶ビールを取り出し、爪と歯でこじ開けて飲んだもよう。
 ドーナツや蜂蜜のほか、お気に入りの地ビールも2本入れた罠を仕掛けたところ、翌日クマはまた戻ってきて、捕獲に成功。その後、このクマは別の場所に移された(インフォシークニュース)。
※このニュースは tyawat さんから知らせていただきました。ありがとうございました。
 フロリダのオーキフィーキー湿地帯にある湖でワニ狩漁師が釣りをしていた時、1頭のアメリカクロクマが現れて湖を泳いで渡り始めた。中程まで行ったところで、不意にアリゲーターがクマを襲い水中へ引き込もうとした。怒ったクマは前足でワニの頭を突き飛ばした。
 すさまじい格闘が繰り広げられる間、水は激しく渦巻いていた。再びクマが水面に現れ、泳ぎ始めた。ワニは何処へ行った?
 別のハンターが捕獲したアリゲーターには脇腹に長い掻き傷があり、頭の片側が引き裂かれ、下顎の骨が露出していたことからこれもクマにやられたのだろうと考えられた(O. ブレランド、1963)。

 1977年8月、地質学者のシンシア・デュセル=ベーコンは、アラスカのフェアバンクスでアメリカクロクマに襲われた。クマは彼女を腕で捕らえ、深い藪に引きずり込んだ。シンシアは死んだふりをしたが、クマは彼女の右の脇あたりを食べ始めた。クマが頭を噛み、頭皮を剥ぎ、その歯が頭蓋骨にひびを入れるのを実感したという。それでも彼女は冷静さを保ち、食べられていない方の手で、無線機を操作し、助けを呼んだ。
私はクマに食べられている!
 無事だった方の腕も食べられた頃にようやくヘリコプターが到着し、爆音に驚いたクマはその場を去っていった。シンシアは両腕を失ったが、頭の傷は治癒し、アラスカで暮らし続けている(ハート&サスマン、2005)。

 被害者からの報告がほとんどないので断言はできないが、ライオンやトラ、そしてヒョウも人を襲った時には、食べる前にとどめを刺してくれるだろう。しかし純然たる捕食者とはいえないクマの場合、その保証はない。

 ナチュラリストでクマの専門家・スティーヴン・ヘレロ(2000)の推算では、北米に生息するアメリカクロクマは60万頭(Leonard Lee Rue によれば1980年では約40万頭だった)、グリズリーは6万頭。一方クマによる死亡者の数は、グリズリーによる被害者の方がクロクマより倍ほど多い。凶暴なグリズリーのイメージに合致する統計だ。
 ヘレロはクマの攻撃を防御と捕食の二つに分けている。彼は1900−1980年の間に起きたクロクマによる人への致命的な攻撃のほとんどが捕食目的だったと分析している。イメージに反して大きくて怖れられているグリズリーよりも、クロクマの方が人を獲物と見なしているらしい。
National Geographic

BACK