今までに知られている最大のヒグマは、1948年5月28日、Robert C. Reeve がアラスカ半島はコールド湾近くで撃ちとめた巨大な雄で全長10フィート(3m)、体重はまだ5月であまり脂肪をつけていない状態だったがそれでも推定1600〜1700ポンド(750kg前後)。
 毛皮は左右の幅が3.7m、重さは88kgだった。頭骨はニューヨーク自然史博物館に保存されており長さ465mm、幅282mmある。

 ビッグゲーム・ハンティングでは肉食獣は頭骨の大きさ(長さ+幅)でトロフィーが決められる。Records of North American Big Game 1999ではこの頭骨は27位にランクされている。
 第1位の頭骨はロサンゼルス郡博物館にあり長さ455mm、幅326mm。これは Roy Lindsley が1952年5月にコディアク島で撃ちとめたクマで毛皮は長さが341cm、幅が296cm、重さが71kgあった。体重はクマの体をいくつかにばらしてから量られて539kg。流出した血液等を考慮すれば実際の体重は600kg近くあったかもしれない。展示されている剥製は高さ2.6m。
 ちなみに最も長い頭骨は503mm。Herschel A. Lamb がポート・ヘイデンで1961年に撃ち止めている。幅は270mmなのでランクは6位だ。

 犬飼哲夫・北大名誉教授(1987)はアラスカヒグマは大型の系統であるカムチャツカ地域のヒグマ(ベーリングヒグマ=アカグマ)の末裔であるという。アラスカ南部及びその沿岸の島々に分布する。コディアク島産が有名だがこの島だけにしかいないのではない。
 ただコディアク島とその近くのシュヤク島、アホグナク島のヒグマは他の地域のものと比べ、頭骨に差異が見られるとして区別されることがある。その場合、3島産を Kodiak Bear、他を Big Brown Bear と呼び分けることもある。
 1894年、J. C. Tolman がコディアク島で頭部へのライフル1発で仕留めた雄は体重が751kg、毛皮の全長は4.1mもあった。後足(掌)の長さ46cm。
 クマの毛皮は普通に剥いだ状態では長さ(鼻から尾まで)より幅(左右に伸ばした両手の爪の間隔)の方が大きいが、壁や大きな板などに貼り付けて下に岩などの重石をつけて伸ばすと長さ方向のほうが大きくなる。まだ乾いていない毛皮をこのようにして伸ばすと本来の体長より3割以上も伸びるだろう。毛皮で長さのほうが幅より大きい場合、それがかなり引き伸ばされていると考えて良い。
 ブルックリン博物館のロバート・ロックウェルは1918年にアラスカ半島で黒っぽい大きな雄を撃った。毛皮の長さ3.2m(頭胴長は239cm)、肩高1.2m、前掌幅22cm、後足の長さ37cm、体重は推定で1500ポンド(681kg)という。シートン(1925)はこの測定値は本種の最大記録に近いと言っているが、胸囲は170cmしかなかったので体重の見積もりは過大のように感じられる。

2006年度最大のアラスカヒグマ?
 2006年5月、狩猟の経験はあったが、クマ狩りは初めてのわずか9歳の少女 Fern SpauldingRivers が巨大なアラスカヒグマをしとめたと伝えられた。
 そのクマは全長358cm、推定体重1800ポンド(816kg)、頭骨は839mmもあったという。しかしワールドレコードとは認定されなかった。それでも興味深い話には違いない。ハンターとその獲物の大きさの差からすれば最大のクマであり、今後この記録が破られることはないだろう?

 US Fish and Wildlife Service によればこのクマの毛皮は、鼻先から尾まで345cm。また Boone and Crockett クラブによれば頭骨は738mmだった。最初の報道には多少の誇張があったわけだが、それでも巨大なヒグマには違いない。
 アンカレジ北方の Talkeetna から両親に伴われてアラスカ半島を訪れた少女は、父親に震える両膝を支えてもらいながら、32ヤード(約29m)先のクマを2発でしとめたという(Blackbearheaven)。

体重(kg)全長(m)場 所備 考
720(推定)2.8カナダ西部(1949)
720(推定)アラスカ半島(1916)毛皮の長さ345cm、幅320cm
719+アラスカ半島1960年代に Ron Hayes が撃ち止めた。
解体後の計量。
680(推定)2.7アラスカ半島(1948)剥製がアラスカ大学に展示されている
630(推定)コディアク島(1977)剥製の高さ2.7m、毛皮は356cm(square)
頭骨全長455mm(幅281mm)
599ウニマク島(1909)肩の高さ122cm、毛皮の長さ335cm
540以上(推定)コディアク島(1928)剥製の高さ2.5m
4602.4アラスカ毛皮の長さ285cm

2002年度最大のアラスカヒグマ
 2002年にコディアク島で狩猟された最大のクマは、ベルギーの Xavier Knauf が春に撃ち止めたもので毛皮のサイズが312cm、頭骨のスコアが753mm(長さ+幅)あった(alaska-biggamehunting.com)
 一方、ボウハンティングでは5月にやはりコディアク島で316cmの毛皮(頭骨は732mm)が記録されている。推定体重は1000ポンド(約450kg)。
 ここで最大とは頭骨のスコアのことであるが、頭骨は必ずしも体の大きさを反映しない。
 Ben East(1977)も Boone and Crockett Club が頭骨のみしか記録として受け入れないことに不満を漏らしている。彼の言うように頭骨のサイズなどより体重の方が more impressive and dramatic なのだから。もちろん頭骨は証拠として残るが、体重は確認が難しいからなのだが。
 そこで毛皮である。一般のハンターにとっても頭骨よりも大きさが実感できる毛皮の方が受け入れやすいのだろう、商業ハンティングではクマの大きさをアピールするのに毛皮のサイズを使っている。
 アラスカ半島のあるハンティングの主催者は客に9フィート(2.7m)以上のクマを撃たせることを目指すとしており、事実、彼のキャンプでは過去20年以上の間に狩猟したヒグマの毛皮は264−351cm(平均285cm)だそうだ(351cmとは非常に大きいが詳細には触れられていない)。
 ここで言う毛皮のサイズとは square、つまり長さ(吻端から尾まで)と幅(左右に伸ばした前足の開き)を足して2で割ったものだ。通常、長さより幅の方が大きい。また毛皮は剥がす時にどうしても伸びるし、力を加えることによって相当に伸びるからあくまで参考扱いにとどまっている。このあたりはハンターやそのガイドを信頼するしかない。
 最近の傾向としては狩猟されたクマの大きさは毛皮と頭骨の2本立てで表現されるのが主流になっている。体重や体長の方がよほど現実的な数字なのだが、実測例が乏しい。

飼育下で最大のクマ
 Leonard Lee Rue III(1981)は彼の友人がニュージャージーで経営する Space Farms Zoo で非常に大きなヒグマが高さ2.7mの柱のてっぺんに頭をこすりつけているのを見た。肩高1.5m、体重は推定だが2000ポンド(約900kg)以上という。このヒグマはギネスブックにも記載された。
 Space Farms Zoo の公式サイトによればこの巨大グマ、Goliath は1967年から飼われていて、1991年に死亡。体重はやはり2000ポンドとなっているが、高さは12フィート(3.7m)もあったという(この数字はギネスブックにはなかった)。先の Rue の目撃談とはだいぶ隔たりがあるが。

 2003年10月3日に知らない人からメールをいただいた。Largest Bear kill in History というタイトルで、直立した時の高さは肩までで12フィート半(3.8m)、頭頂までだと15フィート(4.6m)以上あるだろうと書かれており、体重は1600ポンド(725kg)という。そして2葉の写真が添付されていた()。
 巨大動物図鑑が海外のリンク集にも掲載されていることは知っていたのでマニアックな人が教えてくれたのだろうと考えたが、数字が大きすぎるので(そしてバランスもおかしいので)信憑性は薄いと感じていた。
 私がもらったのと同じメールはあちこちのサイトに送られたようだ。Anchorage Daily News は Giant bear grows on the Internet と題して事の詳細を綴っている。
 このクマは2001年10月に Prince William 海峡で射殺された。ハンターは Theodore Winnen という22歳の空軍兵士で、本当のところは毛皮の長さ320cm、幅が335cm。頭骨は長さ452mm、幅が272mm(これは現場での測定−green score−で公式には60日が経過し、頭骨が乾燥してから再度測定され公認されることになる)。
 同行したベテランガイド Joe Want はこのクマの体重を1000−1200ポンド(450−540kg)と推定した。また彼は1年か2年の間にこのクマの体重は1800ポンド(816kg)に膨れあがっているだろう、そしてこの話を聞かされた Winnen が訂正しようものなら彼が嘘つきにされてしまうだろうと語った。彼の予測は正しかった(http://cityofwatertown.com/bear.htm)。


体重(kg)場 所備 考
757コロラド Cheyenne Mountain 動物園コディアク島産。1955年9月に死亡
725Creative Animal Talent(カナダ)後脚で立ち上がって高さ2.9m。
671Doug and Lynne Seus(ユタ)後脚で立ち上がって高さ2.9m。1978年生まれ、数々の映画に出演し、2000年5月に死亡
640シカゴ動物園(1957)3.2mの高さにぶら下げられた餌をくわえることができた。兄弟のもう1頭はさらに大きかったが計量されていない
526ワシントン国立動物園(1911)肩の高さ1.3m。高さ2.8mの棒の先に取り付けられたりんごを咥え取ることができた
520イギリスの Whipsnade 動物園(1963)3.1mの高さにぶら下げられた肉をくわえることができた

アメリカ東部・メリーランドの Catoctin Wildlife Preserve and Zoo で名物になっていた巨大なヒグマ Griz が2005年11月に死んだことが伝えられている。死後の計量で体重785kg。1986年にオハイオ動物園で生まれ、生後半年で Catoctin にやってきた。翌年の1月に20歳の誕生日を迎える予定だった。

こちらは Creative Animal Talent が飼育している巨大な Kodiak Bear Koda 1994年生まれで高さ2.9m、体重1600ポンド(725kg)もある。


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