スミロドンSmilodon fatalis
体長:1.9m肩高:1m新生代更新世(200万〜1万年前)

  スミロドンはアメリカ大陸に生息していた。ユーラシアからは知られていない。サーベルタイガーの中でも最も新しい種族であり、およそ1万年前まで生存していたようだ。

 サーベルトラの長い牙の実用性について疑問を呈する向きもある。ナイフを単純に突き立てるように、牙を深々と突き刺すと、攻撃された獣が暴れて牙の方が折れてしまうかもしれない。
 もちろん、獲物に噛み付くと同時に両前脚でがっちりと押さえつけなければならないが、それでも相手の一瞬の動きによっても牙はダメージを受けることがあるだろう。だからサーベルトラの牙は武器ではなく、死んだ動物を引き裂くためのものだというのだ。
 だからといって、サーベルトラがスカベンジャーだったというわけではない。むしろ肉を引き裂くためだとしてもあの牙は大きすぎて使いにくい。また、攻撃獣の骨は損傷が多いが、腐肉食獣の方は骨に損傷がない。スミロドンの骨には損傷が目立つので、攻撃者だったと思われる(鹿間時夫、1979)。

 アメリカの William Akersten は最初の攻撃は獲物の首などではなく、腹や腰を狙ったとしている。
 上の牙は短刀のように突き立てるのではなく、口を大きく開けてのように肉を噛み切る。このとき、下顎の牙も突き刺さっていてアンカーの役目を果たす。そしてスミロドンが口を閉じると共に一塊の肉と皮が引き裂かれ、夥しい出血を招く。
 相手が倒れた後、スミロドンは喉に深々と噛み付いて止めを刺しただろう。
 しかしサーベルトラが倒した獲物をどうやって食べたかは今ひとつはっきりしない。

スミロドンは3、4種が区別されている。
 Smilodon gracilis
 合衆国東部、50万〜250万年前
 Smilodon populator
 最大種で体長2.4m、牙は28cmもあり、南アメリカに100万年前に出現。前脚がよく発達していて、肩は腰よりだいぶ高い。体重は推定340kg。
 Smilodon fatalis
 または californicus (北アメリカ)
     neogaeus (南アメリカ西部)


ランチョ・ラ・ブレアのタール坑から見つかる肉食獣
(Alan Turner,"The Big Cats and Their Fossil Relatives", 1997)

 左手前から、ダイア・ウルフ Canis dirus、スミロドン Smilodon fatalis、ショート・フェイス・ベア Arctodus simus、アメリカン・チータ Miracinonyx inexpectatus、カリフォルニア・ライオン Panthera atrox

 スミロドンはその生態には謎が多いながらも、よく繁栄したグループだ。ロサンゼルスのランチョ・ラ・ブレアからは多数の化石が見つかっており、タール坑に落ちた動物を狙って自分も落ちてしまったりしたようだが、200万年以上もの生存期間を持っていることは、彼らが自然に適合していたといえる。

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