ジュラ紀後期のトルボサウルス Torvosaurus tanneri は大型で重厚な体格をした肉食恐竜で、頭部や腰回りの骨、前足などがコロラドのドライ・メサから見つかっている。スーパーサウルスやウルトラサウルスの発見で有名なジェイムズ・ジェンセンらによって1979年に記載された。これらの骨から、トルボサウルスは全長9m前後、腰までの高さ2.5mもあった。全長はアロサウルスと同じくらいだが、もっと頑丈で重く、発見当初は体重5−6tと推定され、活動的なハンターと考えるには重すぎるといわれていたほどである。最近の見積もりでは2-3tくらいともいう。

トルヴォサウルス トルヴォサウルス

トルボサウルスは短いが強力な腕と恐ろしい爪を持っていた。発見者、J. Jensen が右手に持っているのが、トルボサウルスの上腕骨。左手のアロサウルスのそれと比べると、かなり大きい(ブリガム・ヤング大学、地球科学博物館)。

 トルボサウルスは、大型獣脚類としては新参者で標本も少ない。このトルボサウルスが日本にお目見えしたのは、幕張メッセでおこなわれた「世界の巨大恐竜博2006」でその−かなりうつむき加減の−復元骨格(8.5m)が展示された。


 2012年にはやはりコロラドで良好な化石が発見されている。骨盤や後脚、背骨、約1.3mもある頭骨など全体の骨の約55%が見つかった(maxilla_mandible)。

 1998年にポルトガルで脚の骨が発見され、トルボサウルスと鑑定されている(アロサウルスではないかとの説もあるが)。これは北アメリカのものよりかなり大きいという。大腿骨からの推定では全長11m。
 ポルトガルで発見された新種は Torvosaurus gurneyi と命名された。ヨーロッパでは最大の肉食恐竜だった。およそ1億5千万年前(ジュラ紀後期)に、現在のスペイン、ポルトガル、アンドラ、そしてフランスの一部が属するイベリア半島を闊歩していた(ナショナルジオグラフィック)。

エドマルカ
 エドマルカ Edmarka rex はコロラド大学のロバート・バッカーやドナルド・クラリスらにより、1992年、ワイオミング州 Como Bluff のモリソン・フォーメーションで発見された頭骨(一部)に基づき、メガロサウルス科の新種として発表された。
 1993年から96年にかけて、肋骨や肩の骨など更にいくつかの化石が見つかっている。
 なお名前はコロラド州立大学のウィリアム・エドマーク博士にちなんで命名された。
エドマルカ

 エドマルカはジュラ紀最大の肉食恐竜で、全長11−12m、体重は4−5tに達したと推定された。他の大型で体の重い肉食恐竜同様に、エドマルカの場合も当然のごとく、捕食者だったのかどうか疑わしいとの意見もある。
 エドマルカはジュラ紀後期の Kimmerridgian 期の地層から出ているが、その一ステージ後、Tithonian 期後期(1億5000万年前)のトルボサウルスと同一の恐竜であると考える古生物学者が多い(ホルツ)。

メガロサウルス(大英博物館)

 トルボサウルスやエドマルカはメガロサウルス科に分類されている。この科を代表する種であるメガロサウルス Megalosaurus bucklandi は、科学的に記載された最初の恐竜としてよく知られている。19世紀初め、イギリス南部のジュラ紀中期の地層から全長7−8mの大型肉食恐竜の化石が見つかり、William Buckland が1824年に発表した。元となったのは顎の骨や、数個の背骨、骨盤や後脚の骨(一部)などである。ここまではよかった?
 問題なのはその後、肉食恐竜の断片的な化石が見つかるたびに、それらがメガロサウルス属の新種として発表されたことだ。その結果、メガロサウルスはイギリスのみならず、フランス、ドイツ、ベルギー、ポルトガル等ヨーロッパ各地、さらにはアジアや北アメリカ、北アフリカからも報告された。これらのほとんどは原記載の Megalosaurus bucklandi に似ていたわけではない、もしくは大型獣脚類であることぐらいしか判明しない僅かな骨しかなかった。少なくとも26種が、メガロサウルス属の新種として報告された(David Norman, 1985)。これらの中には、後にまったく別の恐竜として再記載されたものが少なからずある。ディロフォサウルス(コエロフシス類)、マジュンガサウルス(ケラトサウルス類)、カルカロドントサウルス(カルノサウルス類)などだ。

クリオロフォサウルス

 一時は、大型の肉食恐竜の中で最も大きな科で地球上のすべての地域に分布した(恐竜の百科、1983)とまでいわれたメガロサウルス科だが、多くの者の脱退で少数派閥に落ちてしまったかもしれない。
 1991年、南極大陸でジュラ紀前期の肉食恐竜、クリオロフォサウルス Cryolophosaurus elliotti (6m)が、氷の上に突き出している数少ない岩の中から見つかっている。頭の上には角のような稜があり、前方にカールしている。クリオロフォサウルスの分類はまだ完了しているわけではない。ケラトサウルス類かもしれないが、メガロサウルス科の可能性がある。Dougal Dixon(2007)はカルノサウルス類に分類しているが。
 南極大陸のような、不毛の地でこの恐竜はどんな暮らしをしていたのだろうか? 普通はこんな疑問がわくが、ジュラ紀には、南極大陸は今の位置よりもずっと北の方にあった。現在のように氷で覆われていたわけではなく、森や丘、川など南極以外の陸地で見られるあらゆるものがあった。南極大陸が今の位置に移動して行ったのは、中生代が終わってからであり、気候が変化して氷に覆われたのはさらに後のことだった(トーマス・ホルツ、2007)。
 発見者の一人、ジョージア州 Augusta College の William Hammer は2004年の南極探検で、さらに多くの化石を発見している。

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