ケラトサウルス Ceratosaurus nasicorinis は1883年、コロラドで M. P. Felch によって初めて発見され、同じ場所で保存状態の良好な化石がマーシュにより新たに見つかった。アロサウルスに似ていたが、頭骨は体の割に大きく、首は短めで、腕も短かった。前足には指が4本あった(後足の指は3本)。両眼の上あたりには、アロサウルスと同様な突起があり、頭骨の先端近くには肉食恐竜としてはきわめてユニークな角をはやしていた。

 角のある肉食動物はかなり人騒がせだ。このような防御武器はたいてい草食動物が独占している。肉食恐竜でこのような特性を持っていたのは、ケラトサウルス以外では、イギリスで発見されたメガロサウルスの1種くらいだ(クルテン、1968)。

福井県立恐竜博物館

2009年4月、福井県立恐竜博物館に特別展示された骨格。全長4.2m。ワイオミングのアルバニーで発掘された。

 顎は頑丈だが体の作りは軽快にできていて、活動的な捕食者だったことがうかがえる。ジュラ紀後期のケラトサウルスはけっこうポピュラーな恐竜だが、化石は意外に少ない。Marsh によるタイプ標本は、全長5.7m、頭骨の長さ63cm、大腿骨62cm、腰の高さ1.5m。推定体重は520kg。アロサウルスよりだいぶ小さいが、歯は大きく鋭い。

 ケラトサウルスの角がどのように使われたのかはよくわからない。雄同士の抗争に、あるいはディスプレイに用いられたのかもしれないといわれている。D. ランバート(1983)は競争相手になった雄たちは、互いに頭をぶつけ合ったかもしれないが、実際に傷を与えることはなかったようだと書いている(恐竜の百科)。しかし現在のところ角のない頭骨は見つかっていないので、雄だけが角を持っていたのかどうかも不明である。

長い間、ケラトサウルスは C. nasicornis 1種とされてきたが、1976年に西コロラド博物館によって発掘された完全に近い骨格は、新種のケラトサウルス C. magnicornis とされた。nasicornis よりも more massive だという。頭骨は約60cm。大腿骨は63cm。上顎の最大の歯は80mm (Madsen & Wells, 2000)。


 ケラトサウルスはアロサウルスよりも器用で、すばしこい捕食者だった。そして化石が少ないことからも、群れていたアロサウルスとは違っておそらく単独のハンターだった(David Norman, 1985)。しかし、Morrison Formation から発見された足跡の化石の集まりから、群をなしてカンプトサウルスなどを襲っていたと考えられる(D. ランバート)。

 Ceratosaurus nasicorinis の最大の歯は70mm、大型種の C. dentisulcatus では最も長い上顎の歯が93mmもある。
 ケラトサウルスは歯が大きいので、アロサウルスの獲物より大きい相手を倒せたようだ。そしてカミナリ竜の死体を奪いあって戦う時には、大きな歯を持つケラトサウルスの方が有利だったかもしれない(G. ポール、1988)。
 歯の大きいことが軽量のハンディをどれだけ補えるかはともかく、C. dentisulcatus だと(ケラトサウルスは尾が短めなので、全長は少し小さくとも)頭骨のサイズではアロサウルスと遜色ないので、戦えば優勢だったとはいえるだろう。

タンザニアにいた大型のケラトサウルスは、巨大なブラキオサウルスをも襲っただろうか?

ユタの自然史博物館には、長さ77cmの頭骨や76cmの大腿骨がある。全長7m、体重は1トンくらいもあっただろう。
 James H. Madsen(Dinolab) と Samuel P. Welles(U. C. バークレー古生物学博物館)によって別種のケラトサウルス C. dentisulcatus として2000年に再記載された。またポルトガルから見つかっている化石も C. dentisulcatus だと鑑定されている。

ケラトサウルス・インゲンス?

 根拠になっているのは、タンザニアのテンダグル累層で発見された刃の部分が薄いケラトサウルス類の歯数本だけで、抜け落ちたものらしい。これだけで検討する余地があるのは、その歯が145mmと非常に大きいからだ。
 当初、Janensch(1920)によってメガロサウルス・インゲンスとして記載された。Rowe and Gauthier (1990)がケラトサウルスの新種であると提唱。しかし Madsen と Wells(2000)はこの命名( Ceratosaurus ingens )は間違いではないかと疑問を呈している。単に大きすぎるからというのが理由のようだが。
 単純に歯だけで比較すると C. nasicornis のほぼ2倍もあったケラトサウルスをイメージしなければならない。全長11.5mにも達しただろう。タルボサウルスなみである(タルボサウルスの歯も15cmくらいある)。
 テンダグルからは別に Ceratosaurus roechlingi が Janensch(1925)によって記載されている。見つかったのは方形骨、腓骨など。これもかなり大きい。


プロケラトサウルス

 1910年にイギリスの Gloucestershire で頭骨の一部が見つかり、ロンドン自然史博物館に収納された。ジュラ紀中期の小型の恐竜でメガロサウルス科の1種として記載されたが、ケラトサウルスに近いのではないかといされ、その祖先かもしれないといわれていた。ドイツの Friedrich von Huene によって1926年に Proceratosaurus bradleyi と命名されている。しかし Dougal Dixsonm(2007)はこの2mほどの小恐竜は、ケラトサウルスよりはカルノサウルス類(の最古のメンバー)であろうと考えている。

 2009年11月、ロンドンの博物館にある頭骨がCTスキャンにかけられて再鑑定された。そして1億6500万年前のこの頭骨はいくつかの点でティランノサウルスに似ていると発表された。この頭骨は、ヨーロッパで発見された恐竜の頭骨としては保存状態が最も良好なものに挙げられる。にもかかわらず、最初の記載以来(80年以上の間)ほとんど注目されていないことは驚嘆すべきことだと、ドイツの Oliver Rauhut 博士はいう(ロンドン自然史博物館)。

 2009年6月、ケラトサウルス類の新種が発表された。角はない。見かけはほとんど鳥である。しかも草食性!
 中国北西部のジュンガル盆地にある約1億6000万年前(ジュラ紀)の地層から発掘された恐竜の化石が、新種だったと中国、米国などの研究チームが突き止めた。リムサウルス Limusaurus inextricabilis と名付けられた。前脚の指の特徴が鳥類と似ており、鳥類の恐竜起源説につながるものだという。
 全長1.7mほど。頭部は前後に短く、歯の代わりにくちばしを持つ。前脚が短く、体形はダチョウにやや似ているとみられる。東アジアでは見つかっていなかった獣脚類恐竜ケラトサウルス類の原始的な種として分類された。しかも植物食だったとみられている。3本ある前脚の指は鳥類と同じで、元々5本あった指のうち、進化の過程で第1指(親指)と第5指(小指)が退化したとみられる。
 国立科学博物館の真鍋真・研究主幹は獣脚類の3本指が、第2から第4の3本だったことを示す初めての化石だ。恐竜が鳥に進化したことを示す物的証拠になると話している(朝日新聞)。
※ nekoさんから知らせていただきました。

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