インドやネパールではサイを観察するときゾウに乗ってサイの生息地に入るが、時にはサイに攻撃されることがある。インドサイは角ではなく、牙を使ってイノシシのように攻撃してくる。生死をかけた戦いではないから、こんな時ゾウは逃げ出すが、間に合わなくて傷を負うことがある。

インドゾウ対インドサイ

 インドの動物学者ギーがゾウに乗ってインドサイの棲息地域に入った時、ものすごい吼え声を聞いた。ゾウを急がせて現場に到着した時、雌のインドサイが子供を背にして、攻撃姿勢をとっていた。近くの深い藪の中にトラが潜んでいた。
 サイは近づいてくるゾウに気づくと今度はゾウに向かって突進してきた。ゾウは最初の一撃はかわしたが、2度目の攻撃で脇腹を切られた。傷は深さ2〜3cm、長さ45cmに及んでいた。

 インドサイの保護区では観光客はゾウの背に乗って見物するのだが、サイはゾウが近づいてくると突進してくることがあり、その時ゾウは必死に逃げ出すそうである。
 随分昔のことだが、ポルトガルでゾウとサイを闘技場で戦わせた例が二つあった。そして全く反対の結果が出ている。サイを囲いの中に入れて幕で囲っておいたところへ、ゾウが引き入れられ、幕が開けられた。
 最初、サイは飼育係の方へ逃げようとしたが、ゾウの方へ押し戻される。今度はゾウの方が慌てて逃げ出し、ゾウ使いを振り落とし、大声を上げながら囲いを突き破って自分の小屋へ帰ってしまった。
 もう一つのケースでは、戦いのゴングがなると、サイは勢い良く檻から飛びだし、のんびりかまえているゾウに向かって突進したが、ゾウにかなり近付いたところで立ち止まり、その後向きを変え、檻に逃げ込んだ。ゾウは最初から何事もなかったようにゆっくりと歩きだし、ゆうゆうと檻に戻った(O.ブレランド, 1963)。


ゾウとサイの遭遇 Etosha Waterhole(ナミビア)

アフリカゾウ対クロサイ

 アフリカでもゾウとサイの出会いは時々ある。その時の状態によってどちらかが避けることが多い。
 グッギスベルグはケニヤで1頭のサイと3頭の雄ゾウの出会いを目撃している。
 最初ゾウは甲高い叫び声をあげてサイを牽制したが、サイがかまわず進んでくると、3頭が前進を始めるとサイの方が退却した。
 あるハンターが水飲み場でゾウを待ち伏せている時、子供をつれた雌のサイが水を飲みにきた。遅れてやってきたクロサイはしばらくは2頭のゾウが水の中で戯れているのをじっと待っていたが、ついに待ちかねてゾウに突進した。その勢いでゾウたちは突き飛ばされてしまった

 マーチソンフォールズでは1頭のゾウとサイの対峙が目撃されている。
 両者がお互いの存在に気づいた時、間隔は10mくらいだった。ゾウは大きく耳を広げ、サイに向かって前進した。サイが動かないのを見るとゾウはさらに突っかけ、ついにサイは元来た道を逃げ帰った。

 実際に死に至る激突も起こっているようである。
 ゾウに刺し殺されたらしいクロサイの死体が見つかったことがあり、子連れのサイが本気でゾウを攻撃したため、返り討ちにあってしまったらしい。

アフリカゾウ対カバ

 カバがゾウの尾を噛むことは時折見られる。ウガンダとザイールの湖では、歩いているゾウがカバに噛みつかれる事がよくあり、尾の切れたゾウがしばしば見られるそうだ。
 これが陸上では事態は一変する。戸川幸夫氏はウガンダの岸辺で日光浴をしている十数頭のカバを見つけた。その時1頭のゾウがやってきて、ゾウが耳を拡げて唸るとカバたちは慌てて川に飛び込んだ。


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