ライオン対ニシキヘビ
 南アフリカのクルーガー国立公園で、大きなニシキヘビがライオンを攻撃したことがある。ライオンはそれを巧みにかわし、直ちに接近すると、ヘビがもう一度攻撃しようとしたときに、向きをかえて跳び、ライオンはほぼまっぷたつにヘビを咬み切った。それからヘビの一部を食べ、その側に横たわった(グッギィスベルク、1961)。
 バートラム(1984)はライオンに殺された大きなニシキヘビを見つけたことがあるが、それはほとんど喰われていなかったそうである。
 東アフリカでも、大きなニシキヘビが四つに裂かれていたのが見つかっており、その側の足跡から、ライオンにやられたのは確かだった(小原、1980)。

インドニシキヘビ トラ対ニシキヘビ
 トラとニシキヘビの対決はあまり知られていない。バートン(1933)はトラに体の一部を食べられていたニシキヘビの死体を発見している。トラにとってもヘビはゲテモノの部類だが、時には口にすることがあるようだ。
 Thapar(2004)はインド−ネパール国境の Dudhwa とインド中部の Bandhavgarh でトラがニシキヘビを食べていた例があったという。

 Smithsonian Tiger Ecology Project のメンバーもインドの Uttar Pradesh で雌トラとニシキヘビが戦った痕を発見した。そこから50mほど離れたところに大きなニシキヘビ(6m)が死にかけていた。ニシキヘビは頭に重い傷を受け、尾が少し食べられていた。

 1964年に、コタの森でバスの乗客が、トラとニシキヘビの戦いを実際に目撃した。結果は両方とも死んだとのこと(サンカラ、1977)。

 1980年6月、インドのコーベット国立公園で5mのインドニシキヘビと亜成獣のトラ(全長2.2m)が争い、共に死んだという。ニシキヘビの腹の中にはイノシシが入っていた。Singh(1983)はニシキヘビがイノシシを呑み、消化のために休んでいる所にトラが現れて戦いとなったと考えた。トラは窒息死しており、ニシキヘビには牙と爪による凄惨な傷があった。
 だいぶ古い話だが、Pollok 大佐(1894)はインドで人食いトラを待ち伏せている時、トラとニシキヘビが戦うのを目撃した。もっとも夜のことなので樹上からはほとんど見えなかったのだが、斑紋のある大きな長い体がよく見えない何かに巻き付いていた。トラの吠え声が聞こえ、それから静かになった。
 長い夜をマチャン(待ち伏せ用の棚)で過ごした Pollok は夜明けと共にマチャンから飛び降りて2頭の死体を確認した。大きなインドニシキヘビ(約6.5m)がトラに巻き付いており、トラの牙はニシキヘビの後頭部を捕らえていた。

 東南アジアを舞台にしたマルガという映画がある。いつ頃制作されたのかはわからないがかなり昔(1933年以前)のモノクロのフィルムで、そこにトラ、クロヒョウ、ワニ(種類不明)、アミメニシキヘビなどが登場して戦いが展開された。ニシキヘビはクロヒョウに勝ったが呑み込もうとはしなかった。また対トラ戦では締め付けに成功しているが結果は引き分け。画面を見る限り非常に大きなニシキヘビかまだおとなでないトラのようだった。
 実写というふれこみだったがかなり怪しい。小原秀雄氏(1970)は名指しこそされていなかったものの、おそらくこの映画を指して、現地の一画に網を張りめぐらし、よく慣れた両者を追い込んで撮影した、甘く見てもセミドキュメンタリー程度の作り物であろうといわれている。トラ対ヒョウもあって、ヒョウの攻撃をトラが払いのけるだけのものだった。
 ワニと他の3者のとの戦いも途中で両者が離れてしまうようにして終わっている。
 寺田寅彦氏(1933)もこのような大蛇と虎の闘争が実際にしばしばジャングルの中で自然的に行なわれるか、どうか、少し疑わしく思われる。この映画の大蛇と虎のけんかはやはり人間の仕組んでやらせた見世物興行ではないかという気がしないでもないと感想を述べておられる。

ヒョウ対ニシキヘビ
 ニシキヘビはヒョウに対しては脅威となることがある。1906年12月、ベンガルの Tondoo 森林で大きなニシキヘビ(5.5m)が見つかった。腹の中にはヒョウ(体長1.3m)が入っていた(Murphy & Henderson, 1997)。
 逆にヒョウがニシキヘビを殺したこともあった。ヒョウがニシキヘビを木の上に引き上げているところが目撃されている。しかし普通ヒョウはニシキヘビと出くわさないよう避けているといわれる。
 2004年8月、セレンゲティで4mのニシキヘビと2.5mのニシキヘビの死骸を発見した。大きい方のニシキヘビは腹が引き裂かれていた。近くには雌のヒョウの足跡があった。
 どうやら大きい方のニシキヘビが小さい方を殺して呑みこんだ直後に、ヒョウがチャンスとばかりに現れたようだ。あたりの草の乱れようから激しい争いがうかがわれた。ヒョウはニシキヘビを殺し、その腹から小さい方のニシキヘビを取りだしたが、食べたのは大きい方だった。

 南米ではアナコンダが獲物としてジャガーやピューマを襲うことはないが、ジャガーがボアやアナコンダを襲うことは珍しくない。しかしアナコンダの大物にはジャガーが不覚を取ることもあるようだ。
 Fountain(1904)はアマゾンを探検中に Maranhao で明らかに大蛇によって絞め殺されたと思われるジャガーの死体を発見している。アナコンダがジャガーを呑みこもうと試みた形跡が見られたが、大きすぎて断念したようだった。
アナコンダに絞め殺されたオセロット(大型のヤマネコ)写真は Kukaka さんから送っていただきました。→

ジャガー対アナコンダ


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