ゾウのほうがトラより強いというのが一般的な感想だろう。子供の頃に見た本に子を殺された雌ゾウがトラを踏みつけている絵が載っていたのを覚えている。ハンターからの伝聞によって描かれたものかもしれない。 |
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![]() だいぶ古い話だが、ネパール国境近くの Sardar 川の土手で2頭のトラと雄のゾウが戦い、ゾウが殺されてしまった事件が、インドの新聞や雑誌に掲載されて評判になった。そこにはトラの夫婦が子供を殺されたためにゾウに復讐したのだと尾鰭が付いた物語が展開されていたようだ。 |
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ただ40kgの牙を持つ雄のゾウがトラに殺されたこと自体は事実らしく、著名なハンター、ジム・コーベットは事件から10日後に現地 Tanakpur に赴きいろいろと見聞した。二人の目撃者(漁師)の話すところによると、日暮れ時、歩いて帰宅の途中だった二人は、大きな牙を持った雄のゾウが2頭のトラがいる河床に入ってきた。ゾウは鼻を持ち上げ、あのラッパを吹くような声を発してトラに向かって前進した。 繁殖期だったためかトラも気が立っていたようで、ゾウに向き直ると、1頭は正面から、もう1頭は円を描くようにゾウの後方に回り込んだ。1頭が後から飛びかかり、それを払い落とそうとゾウが頭を回して鼻を伸ばした時、もう1頭が正面から頭に飛びついた。両者の発する恐ろしい唸り声に怖くなった二人の目撃者はそこで逃げ出してしまったのでその後の経緯はわからなかった。 激しい戦いの叫び声は近所に住む多くの人が耳にしていた。戦いは真夜中まで続いたとも、夜の間中おこなわれたともいわれ、朝になって恐る恐る現場を見にやってきた村人たちは川岸の近くでゾウの死体を発見した。ゾウは明らかに出血多量で死んでいた。食べられた痕はなかった。 ゾウの目がトラの爪にやられていたことや、石がごろごろした川原に入り込んでゾウが動きが取れなくなってしまったらしいことがゾウの敗因のようだとコーベットは考えた(Jungle Lore, 1953)。 E. A. Smythies もこの話を3人の住民から聞き込みをおこない、ボンベイ自然史学会ジャーナルに寄稿している。戦いは3時間ほど続き、午後11時頃に恐ろしい吼え声は聞かれなくなったという。 翌朝、彼らはゾウの死体を発見したのだが、鼻はほとんど傷つけられていなかった。しかし目の回りには深い爪痕が見られた。そして頭頂から腰にかけてはすさまじい咬み痕、引っ掻き痕があった。喉もひどく引き裂かれていた。 |
![]() 2件は雌ゾウへの、もう1件は Tusker、つまり大きな牙を持つ雄への攻撃だった。 この時は雄ゾウはトラの攻撃から辛くも脱したようだが(おそらくトラが断念した)背中一面がひどく咬まれていた。そして数日後に死んだという(Wild Cats of the World)。
アッサムでトラが子ゾウを殺した時、1頭の大きな牙を持つ雄ゾウがトラを攻撃した。トラは逃げようとはせず、反撃してきた。ゾウの前後から跳びかかり、その背に飛び乗ることに成功し爪を立てた。戦いは長時間続いた。ゾウはトラを振り落とそうと茂みの中を走り回り、一度は成功したがトラは再びジャンプして攻撃をくわえた。 |
2005年5月、インド北部でゾウが雌のトラと戦って負傷し、それが元で死んだと Indo-Asian News が伝えている。鼻に傷を負った雄のゾウは Corbett National Park の管理官に目撃されていた。彼ら(公園管理官)はゾウの動向に気をつけてはいたが、致命的な傷だとは考えていなかった。ゾウは鼻に受けた傷のためにほとんど食べることができず、衰弱して死んだという。
2頭の子を持つトラの行方にも注意が払われた。トラとゾウと戦いがあった前夜におそらく同じ個体とおぼしきトラが人を襲って深手を与えた事件があり、またトラもゾウとの戦いで負傷している可能性もあった。そこで徹夜の警戒がなされたが、その後、人食いトラが出現したとの報告はなかった。
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←シャム国王が18世紀に描かせた水彩画。ゾウは調教師の指図によってトラを鼻で巻いて空中に放り上げ、踏みつけ、牙で刺したとキャプションに記されている。
ゾウの牙は野生動物がもつ最大の武器である。インドゾウの雄の牙はしばしば2m以上になる。しかし雌には牙がない。これは大きなハンディとなるだろう。ゾウの群は近くにトラがいることに気づくと体を硬くし、警戒して混乱をきたすこともあるという。 |