オーストラリアやニューギニア、インドネシア東部には12種ほどのニシキヘビが分布している。南アジアやアフリカよりもその密度が高い。ひとつには競合する肉食獣がほとんどいないせいだろう。また他に無毒のヘビ類がいないことも関係あるかもしれない。
 アメジストニシキヘビ Amethystine Python は、オーストラリアのクイーンズランド北東部とニューギニア、およびその周辺の島々に生息している。また Scrub Python と呼ばれることもある。成長すると4.5mくらいになる。

5.9m クイーンズランド北部の Maxwellton。1927年 Oliver, 1958
6.1m クックタウン近くのShiptons Flat。1970年頃 Lewis Roberts
7.2m S. Dean, 1954


 アメジストニシキヘビはよく夜間に活動する。車のヘッドライトに照らされると、アメジスト(紫水晶)のように輝いて見える(Amazing Australia)。

 最大の記録は1948年にケアンズ近くの Greenhill でLouis Robichaux が撃った個体で長さ7.6mあった(Eric Worrel,1954)。また皮で測ると8.5mだったという。あまり伸びていないのはアメジストニシキヘビが細身の故だろうか。
 世界の大蛇をピックアップする時によくビッグファイブと題されるが、その中にアメジストニシキヘビが含まれていないのは、長さの割に細いからだろう。長さ3〜4mの個体の胴回りは40cmに満たない(カール・H・アーンスト、1997)。

 2009年3月、オーストラリア北東部のタウンズビルで長さ4.1m、体重15.1kgのアメジストニシキヘビが捕らえられた。ニシキヘビはポッサムを捕食して休んでいたらしい。このヘビを抱え上げ、バッグに詰めるには4人がかりだった。そして遠くへ運ばれ、放された。
 発見者の Chadwick 夫人は裏庭の小屋でポッサムを飼っていた。ニシキヘビの出現後、ポッサムはいなくなっていた。ヘビの腹に収まっていたのだろうと彼女は言う(news.com.au)。


2015年5月、クイーンズランド北部の Kuranda 近くの Rainforestation Nature Park で捕らえられたアメジストニシキヘビ。長さ5m。体重は推定50kg。同国立公園のワイルドライフ監視員は、こんなに太った個体は誰も見たことがないだろうと話す(ABC)。


アメジストニシキヘビはワラビーを捕食することもある。ワラビー Wallaby は小型のカンガルーで約30種がある。生息地によってイワワラビー、ヌマワラビーなどと呼ばれる。ニシキヘビに狙われるのは潅木地帯の茂みに棲むヤブワラビーかもしれない。その小型種では体長60cmほどで体重は10kg以下だが、それでもアメジストニシキヘビにとっては大きな獲物だろう。


 2016年12月、ごく普通のゴルフコースにオーストラリアでしかあり得ない波乱があった。4mくらいのアメジストニシキヘビがワラビーを呑み込んだのだ。オーストラリア北部の熱帯地域には多くの野生動物が生息し、ワラビーもよくゴルフコースに現れるが、ニシキヘビは珍しいという。
 発見者によると、このヘビにはゴルフコースのような開けた場所でワラビーを捕獲する能力はないため、木に登っていたヘビが何も気づいていないワラビーの上に落ちてきて格闘を演じた末、ゴルフコースのど真ん中まで転がってきたのではないかと語ったAFPBB)。


 オーストラリア北部のアーネムランドに住む人々は、アメジストニシキヘビよりもエンペリーニシキヘビの方が大きいというが、専門家が確認したことはない(アーンスト、1997)。
 エンペリーニシキヘビ Oenpelli Rock Python はアーネムランド辺りに限られているようだ。大きな雌だと5mを超えるものもある(AustrariaGeographic)。
 一説には7〜8mに達するという(Gow, 1989)。その卵は、アメジストニシキヘビの卵の倍近くもあるそうだ。

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