アフリカニシキヘビはサハラ以南のアフリカに分布し、植物の生い茂ったサバンナに棲み、川や湖、湿地近くにいることが多い。泳ぎは巧みで、暑い時にはことさら好んで水に入る。ジャングルにもよく入り込み、木にも登るが他のニシキヘビほど頻繁ではない。アフリカニシキヘビは大蛇の中でも最も危険との評判が高い種類だ。2000年6月にもケニヤで人が呑み込まれた事件が起こっている。

 1961年、南アフリカの鉱夫がどういう訳か大きなニシキヘビを捕らえようとして巻き付かれ大地に投げ出された。彼は何とか脱出し、たいした傷も負っていないように見えたが、翌日に死んだ。脾臓と腎臓が破裂していたのだった。
 1973年、モザンビークで若いポルトガル人兵士が、ある夜歩哨に立っていて行方不明となり、後に大きなニシキヘビの胃袋から発見された。

 飼育下でも長さ5.1mのアフリカニシキヘビがヘビ使いを殺したことがある。男はこのヘビをよく自分に巻き付かせて見せていたものだった。彼の骨は84ヶ所に渡って骨折していたという! これはどうだか。ニシキヘビはそこまで締め付けはしないし、その必要もない。


 2013年、カナダのニューブランズウィックでペットショップから逃げ出したアフリカニシキヘビ(約4.5m)が、同じビルの住宅に侵入し、住んでいた二人の子供(5歳と7歳)を殺すというショッキングな事件が起こった。
 ニシキヘビは子供たちを獲物と誤認したのかもしれないという。事件当日、二人の子は農場で遊んでいて動物に触れていたので、その匂いが残っていたのだろうと(Treehugger)。

 大蛇の襲撃は咬みつきから始まる。咬みついて来るスピードは秒速6mくらい(Minton, 1973)、そう速くはない(ボクサーのジャブの方がずっと速い!)。内側にカーブした歯としっかりした顎ががっちりと獲物を捕らえる。それからすばやく体を巻きつけ、締め付けてくる。同時に尾を近くの木に巻きつけてアンカーとすることがある。この場合、締めはより強力になるが、大蛇の締めは骨を砕くのではなく、呼吸困難にさせて窒息させるのが目的である。
 したがって締め付けに成功したヘビはその後は大して力を増大させる必要はなく、相手が死ぬのを待っていればよい。大蛇は獲物の鼓動が止まったのを確認してから呑み始める。
 もし人が大蛇に巻きつかれた場合、倒れずに持ちこたえることができれば大蛇のほうが諦めるかもしれない。しかし大蛇は重い。立ったまま持ち堪えることは無理だろう。柔道の絞め技も寝技で行われることが多いのと同じか。倒されてしまったら締めから逃れることは不可能だろう。


2012年、南アフリカの Welgevonden Game Reserve でアフリカニシキヘビがヌー(ウシカモシカ)を襲う瞬間が目撃された。ニシキヘビがこんな大きな獲物を飲み込むところが撮影されたのはおそらく初めてのことだ。彼らは30分ほど観察していたが、日没が迫ったのでやむを得ず引き上げた。翌朝、再び訪れた時には何も残っていなかったという(MailOnline)。


 1932年、イギリスの陸軍大尉でナチュラリストだった C. R. S. Pitman はウガンダで40mもあったニシキヘビの話を聞いた。このヘビは大変な老齢で、原住民から崇められていたそうだが、彼らはある日、宗旨替えでもしたのか、このヘビを殺して食べてしまった!
 Pitman にその話をした男は歯のついた顎と2個の背骨を入手したという。原住民は大蛇を開けた土地で測定したが、その場所を見た彼は地面に残るヘビの痕は確かに40mあったと言った。

 コンゴ(ザイール)がまだベルギー領だった1959年8月、陸軍のヘリコプターから木はまばらだが草の生い茂ったサバンナに、長い木の幹のようなものが動くのを目撃した。
 ヘリコプターを下降させ、乗っていた4人の兵士はそれがとてつもなく大きなヘビであることに気がつき、その巨大なニシキヘビを約40m上空から撮影した。もしこの高さが正確なものであれば推定長さ12〜15m、胴の直径およそ45cmもあったことになるのだが(Wood, 1982)。


 1963年5月、ボツワナで生まれて間もない子供が大きなニシキヘビに殺された。このヘビは何年もの間、村の近所に住み着いており、大蛇の爺様と呼ばれ生きながらにして半ば伝説化した存在だった。長さ10mはあるといわれていたが確認されていない(Wood, 1977)。
 Van Rompaey(1985)によれば1953年、ザイールのカナンガ近くで長さ11mもあるニシキヘビが43kgの仔牛を呑みこんだ。この写真を見た Murphy(1997)は確かに巨大なヘビだが、11mもあるとは考えられない。しかし7mはあったかもしれないという。

 ケープタウン・スネークパークで、どんな経緯からか、大きなミズオオトカゲがアフリカニシキヘビの首に噛みついた。オオトカゲの内側にカーブした歯はさして鋭くはない。そのためニシキヘビの皮を噛み通すことはできないでいた。いささかうんざりしたようすのニシキヘビはオオトカゲに巻き付き、絞め殺し、呑みこんでしまった(FitzSimons, 1930)。両者の大きさについては触れられていない。
 Brehm(1970)によれば3mのアミメニシキヘビが1.7mのオオトカゲを呑みこんだことがある。


2015年6月、南アフリカの私設ゲームパークで、長さ3.9mのニシキヘビが発見された。その腹部は膨れ上がり、中には体重14kgのヤマアラシが呑み込まれていた。ヤマアラシの棘がニシキヘビの消化器官に穴を開けていた。最初に見つかった時にはニシキヘビは生きていた。周囲で人が騒ぎ始め、それがストレスとなってヘビが吐き出そうとしたのかもしれないという(CNN)。

9.8m 1932年、象牙海岸、Bingerville の校庭で Beart 夫人が射殺した。
9.4m John Duncan(1847)が西アフリカで射殺した。
7.9m 人類学者 Mary Kingsley(1897)が西アフリカで測定した。
7.5m タンザニアの Nigeri 川で原住民が殺した。アーサー・ラバーリッジ(1929)がその皮(9.1m)から推定。
7.3m 1896年、ザンベジで Edouard Foa が殺した。彼はニヤサ湖近くで少年を呑み込んでから射殺されたニシキヘビの皮を見ている。それは9m以上あった。
7.0m 1958年、ローデシアで K.H.Kroff が殺した。腹の中には1.5mほどのワニが入っていた。


 南アフリカ産は亜種、または別種とされ、北方のものより小型である。最大のもので5.8m(トランスバール北部)。

 長さ5.5mのアフリカニシキヘビがヒョウを殺して呑み込んだことがある。ジャッカルを3頭も呑みこんでいた個体もある。
 しかし野生動物界において大蛇はワニほどには強力な存在とはいえない。イノシシの若い個体はニシキヘビの餌食になるが成獣となるとそうはいかない。イボイノシシが3.7mのアフリカニシキヘビを殺したことがあり、またやはり餌食になることがあるヒヒも、群の力でニシキヘビを殺すことがある。

 アフリカニシキヘビはジャングルからサバンナまで幅広い環境に住んでいて、川や池にもよく入る。水鳥や水生の獣を捕らえるためだが、30分くらいは潜水していられる。ケニヤの Mzima Springs ではナイルワニの腹からニシキヘビの死骸が見つかったことがある(National Geographic Magazine, vol.140)。

 アメリカのフロリダでは、インドニシキヘビの自然繁殖が環境問題になっているが、最近になって新たな脅威がやってきた。アフリカニシキヘビがフロリダに定着しようとしている兆候が発見されたのだ。フロリダでは2002年以降、6匹のアフリカニシキヘビが発見されているが、厄介なことに妊娠中の雌1匹と孵化したての2匹の幼生まで見つかっている。つまり、獰猛なこのヘビがこの地で所帯を持ったということだ。
 現在のところ、アフリカニシキヘビはマイアミから西に行った郊外の2.6平方キロメートルの範囲でしか見つかっていない。このヘビの凶暴さを理解していなかったブリーダーが放したのではないかと、フロリダ自然史博物館で爬虫類と両生類を研究するクリスコ氏は推測する。
 アフリカニシキヘビが見つかった場所から道を隔てた向こうにエバーグレーズ国立公園がある。ここには数千ものインドニシキヘビ(ビルマニシキヘビ)が住み着いている。アフリカニシキヘビはインドニシキヘビよりも大型で、さらに気の短い種類である。人が襲われる可能性もある(National Geographic)。


 アフリカニシキヘビはフロリダに侵攻しているようである。2015年1月の時点ですでに30匹以上のアフリカニシキヘビがマイアミ西部の郊外で見つかっている。2013年にはイヌが襲われたことがあった。すばやい対応がとられないと、ビルマニシキヘビと同様に環境にとっての脅威となるとフロリダ野生保護局は危惧している(DailyMail)。
 アフリカニシキヘビの生息地域はまだ狭い範囲にとどまっているうちに手を打つべしと、その狩が始まるようである(Sun Sentinel)。

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