ミシシッピワニ | American Alligator |
アリゲーターは合衆国南部・ノースカロライナの沿岸部からメキシコとの国境を流れるリオグランテ川の下流域まで分布している。ワニ類の主流・クロコダイルと比べて口先の幅が広く、頭部が角張っており、全体にごつごつした印象だ。成長すると3m以上になり、稀には4mを超えるものも現れる。
合衆国南部諸州に棲むアリゲーターで最大の記録としてよく知られているのは、アメリカのナチュラリスト、E. A. McIlhenny が1890年1月2日にルイジアナで射殺したもので長さ5.8mもあった。
McIlhenny はこのワニは寒さでほとんど動けない状態にあり、また冬眠もできないほどの老齢でその冬を越すことはできなかっただろうという。
その11年前の秋には、McIlhenny の教師が5.6mもあるアリゲーターを仕留めている。まだ少年だったMcIlhenny は家の近くの河口に棲んでいたこの大きなワニを Old Monsurat と呼んでいた。ワニの死体を家に運ぶのに4頭のウマが必要だった。
↑ミシシッピ州で、2013年8月30日から10日間だけ解禁されたワニ狩りで、Dustin Bockman ら3人の狩猟パーティが長さ410cm、体重330kgのアリゲーターを射止めた。体重は同州の最高記録だという。
彼ら3人の力ではボートに引き上げることができなかったため、朝を待って仲間の助けを借り、死骸を持ち帰った。友人宅で計測して、その大きさを改めて思い知ったという。このアリゲーターは推定50〜60歳。別のハンターがしとめたもう1頭のアリゲーター(全長410cm、体重328kg →)と共に、同州におけるこれまでの体重の記録(316kg)を更新した。(CNN)。
※ hidenoriさんから知らせていただきました。
ボックマンは「川にはもっと大きなワニがいるはず。記録は今夜にも破られるかもしれない」と話していたが、はたして1週間もしないうちに記録は更新された。Dalco Turner ら4人が9月8日に全長・体重共に更新する、414cm、337kgの大物を撃ち止めたのだ↓
↑2014年8月、アラバマで全長4.6m、体重459kgもあるアリゲーターが捕獲された。アラバマのハンター一家、5人がが金曜の夜から土曜の朝にかけて、10時間も要してしとめた(MailOnline)。
↑Florida Power and Light Company の作業員がフロリダで工事中、電線埋設用のパイプに入り込んでいたアリゲーター。長さ5.5m? 最近の話のようだが詳細は不明。写真から推してかなり大きいが… |
第2次大戦中、フロリダで戦闘訓練を受けたジョージ・S・フィッシャー(1966)はそこでの障害物突破訓練で次のような経験をした。 最終コースが広く浅い水たまりをロープを使って向こう岸までジャンプするというもので、暑くて既に汗だくになっていた訓練兵達は、池の中程まで跳んでわざと落ちてしまうのだった。 そんなある日、指導教官の中尉は池の中に1頭のミシシッピワニを放すという奇手に出た。 その時以来、兵士達は水際を4.5mも離れたところからジャンプし、向こう岸でもできるだけワニの口から遠くまで跳んでから着地する仕儀となった。 ワニの方は頭上を音を立てて跳んでいく人間にも興味を示さず、じっと眠っているかおとなしく日光浴をしていた。しかし外見がいかにも凄いのと、ワニの怖い話を聞かされていたので訓練の成果は上々だった(リーダーズダイジェスト)。 |
2004年3月4日、アメリカ・ジョージア州南部のサバナ近くで大きなアリゲーターが目撃された。U.S. Fish and Wildlife Service によるとシカをくわえていたこのワニは約4m。写真は計画的な火災を発生させる目的で飛んでいたヘリコプターから撮影された。それまでにも大きなアリゲーターがシカを襲うという話は知られていたが、確認されたことはほとんどなかったという(USFWS)。 ※ yasunori さんから知らせていただきました。 |
全長(cm) | 体重(kg) | 場所・備考 |
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531 | − | フロリダ、Lake Apopka(1956)。Wilfred T. Neill による。 |
473 | − | Hurlburt, G. R(2001)による。 |
452 | 450(推定) | テキサス(1929)、W. T. Block が射殺。 |
450 | − | フロリダの Silver Springs にある Ross Allen's Reptile Institute に飼われていた Big George という名のワニで1967年に推定59歳で死亡。最後の17年間は長さの伸びはほとんどなかったという。 。 |
437 | 400(推定) | テキサス(1998) |
428 | 約360 | フロリダ、St. Johns River(1997) |
425 | − | フロリダ、Polk County(2001)、罠師の Charles Fagan が射殺 |
423 | 473 | フロリダ、Orange Lake(1989) |
408 | 345 | フロリダ、Palatka(2004)、Bruce Ditto と Rinnert of Grandin が射殺。 |
396 | − | フロリダ、Lake George(2001)、Florida Fish and Wildlife Conservation Commission による。 |
393 | − | フロリダ、Lake Okeechobee(1996) |
391 | 約270 | テキサス(2002)、ヒューストンの Mike Bogart がピストルで射殺。 |
384 | − | ノースカロライナ、Carteret County(1981)、ノースカロライナはアリゲーターの北限とされる。 |
381 | 301 | Journal of Zoology of Londonによる。Hercules という名の飼育個体。咬む力964kgを記録。 |
379 | 374 | ニューヨーク動物園で飼われていた。Raymond Ditmars(1936)による。 |
368 | 208 | Clifford H. Pope(1966)による。 |
2003年3月8日、フロリダのウエスト・パーム・ビーチで9歳の兄と遊んでいた6歳の Jesse Valdez は突然、ワニに襲われ近くの運河まで引きずられた。Jesse の叔父(25歳)が駆けつけた時、ワニは子供をくわえて運河に入り込んだところだった。彼は子供の腕を掴んで引き離そうとした。一度は放したがワニは再び子供に噛みつき、叔父とワニとの引っ張り合いになった。そして子供を救出することに成功した。 二人は病院へ運ばれ手当を受けた。子供は腕や肩、背中にかなりの傷を負っていた。叔父も右手を咬まれていたがたいした怪我ではなかった。 Florida Fish and Wildlife Conservation Commission (FWC)の Dennis Perkins がその日の内に到着し、長さ290cm、体重147kgのアリゲーターを捕獲した。 フロリダ州で起きたワニによる人間への被害は記録を取りだした1948年以降、275件に及ぶ。うち死亡した例は約20件だという。 |
2004年7月21日、フロリダの Sanibel で54歳の造園家の女性がアリゲーターに襲われ重傷を負った。彼女はワニに噛みつかれ池に引きずり込まれたが、近所の人や警官が女性をワニの顎から引き離した。射殺されたアリゲーターは全長373cm、陸に引き揚げるのは6人がかりだった(CNN)。 |
最近では2006年11月29日に、フロリダ中部の池で45歳の男性がワニに水中へ引きずり込まれた。駆けつけた保安官4人が池に飛び込み被害者を救出した。男性は左腕部を失い、右腕骨折するなどの重傷を負った。
ワニに襲われた経緯は不明だが、男性は被害に遭う前、コカインを吸引していたことを認めたという。池を捜索した結果、加害者と見られる3.6mのワニを捕獲した(CNN)。※ ac7059さんから知らせていただきました。
2015年3月11日、フロリダでゴルフ場に全長4mのワニが出現した。このワニはゴルフ場をうろうろと歩き回った。このゴルフ場は女子ゴルフの試合を行う予定だ。ゴルフ場のマネジャーによると、試合は予定通りに行われ、ワニの出現で日程を変更することはないという(新華ニュース)。
動物図鑑ではおとなしい種類だと解説されることが多いアリゲーターだが、あくまでワニのなかではということだ。大型の個体ではウシを襲うことがあり、またイヌはよく殺されている。
2006年5月9日夜にマイアミで運河の付近をジョギング中に姿を消した女性が、アリゲーターに襲われて亡くなっていたことが11日に明らかになった。建設作業員が10日、運河に浮かんでいる女性の死体の一部を発見。検視解剖の結果、死因はアリゲーターにかまれたショックと出血によるものと判明した。
検視解剖を行った医師はアリゲーターは女性を襲い、両腕を食いちぎり、足と背中をかんで水中に引き込んだと述べ、女性の体に引きずられた跡が無いことから、襲われた際に女性が運河の縁の非常に近くにいたと思われる、との見解を示した(ロイター)。
5月14日、BBC はジョギング中の女性 Ms Yovy Suarez Jimenez を殺したアリゲーターが捕獲されたと報じている。ワニは彼女が最後に目撃された橋の下に仕掛けられた罠にかかったという。ワニは全長2.9m、その胃から2本の人の腕が見つかった。
ワニは彼女の腕を噛みちぎってから、脚や背中に咬みついて運河に引っ張り込んだらしい。その時被害者は既に死亡していただろうと推測されている。Jimenez はフロリダでは1948年以来、18人目のアリゲーターによる犠牲者となった。
※ わたぴーさんから知らせていただきました。
←フロリダで発見されたアリゲーターの化石。新生代更新世(100−170万年前)のものだが現在のミシシッピーワニと同種とされている。
長さ77cm。推定全長6m。昔のアリゲーターが現在のものより大型だったことを示唆する化石だが、これほど完全な頭骨は他にはないという。残念ながら売却されてしまっている(paleodirect)。