週に1度、絶食させている。 東京多摩動物公園では、馬肉8kgと鶏頭2kgを毎週日、 月、水、金、の4日間与えている。 ライオンの大きさや性別によって違うだろうから、上記は総量を頭数で割った平均のようだ。 |
個々のライオン(トラ)がどのくらい食べるかについて、スミソニアン国立動物園での例(1998)を挙げてみる。
なお食事量は1週間分。メニューは馬肉と牛の尾。
ライオン | 雌(14歳、119kg) | 12.7kg | − |
雄(10歳、216kg) | 25.4kg | 同時に生まれた雄の兄弟(216kg)が同居。食事量も同じ。 | |
ト ラ | 雌(13歳、 81kg) | 28.1kg | 子供の時にスマトラで生け捕りにされた。 |
雌( 5歳、 84kg) | 14.5kg | 上の雌トラの子供。 | |
雄( 8歳、153kg) | 14.5kg | スマトラトラ。18kg減を目指してダイエット中。 | |
雄(14歳、154kg) | 29.5kg | 白いトラ。血統にはシベリアトラとベンガルトラがいる。 |
うまくシマウマやレイヨウを仕留めると飢えたライオンは早速食事に取りかかる。雌が狩りをしている間、後方でのっそりとしていた雄も強引に割り込んできて獲物を食べる。ではライオンは一度の食事でどれくらいの肉を食べるのだろうか?
よく知られているように野生のライオンは毎日食べるわけではない。たいてい数日間の絶食の後、彼らは獲物にありつくことができ、食べるときには遙かに多量の肉をむさぼり食う。 しかしどれくらい食べているか、正確に知ることは難しい。食前と食後に体重を量らせていただくわけにもいかないので。 死んだライオンの胃の中を調べた結果では、鎮静剤の打ちすぎで死んだ雌(体長154cm、体重126kg)の胃の中にはアフリカスイギュウの肉が9kg入っていた。戦いで死んだ雄(体重168kg)は胃の中にシマウマの肉を13kg入れていた。ハンターのキルビイは自分が撃ったライオンを調べた結果、十分成長したライオンは18kgの肉を一度に食べられると考えている。 |
観察者は大変な苦労をしてライオンの食べ残しを調べる。骨と皮、胃、腸(一部は食べられている)などが残されていることが多い。 ある雄は2時間で1頭のトムソンガゼルを食べ、1時間おいてもう1頭のトムソンガゼルを2時間ほどで食べた。シャラー(1972)は食べ残した部分を調べて、このライオンが2回で27kgを食べたことを確認した。このライオンは2日前にシマウマを食べていたので、特に飢えていたわけではない。 また別の時、シャラーは1頭の雄ライオンにヤギの死体を与え、一晩の間に33kgを食べていることがわかった。このライオンも食べ始める前、痩せていなかったことから本当に空腹だったら40kgは食べられるだろうと考えた。 |
数頭のライオンが1頭の獲物に群がると、死体がバラバラになるまで組み合い、打ち合い、唸りながら食べられる部分はすべて食べる。何頭ものライオンが唸り声を発し、口の周りを血だらけにして食べる様はフィルムで見ても凄みがあるものだ。 数頭のライオンでは1頭のシマウマを一度には食べきれないだろう。満腹すると獲物から離れ、眠りだしたり、また水を飲みに行ったりする。そして休みを取ってまた食べる。4頭の雌ライオンがほぼ5時間で1頭のシマウマの大部分を食べたことがある。残骸から推してシマウマは150kgくらいだった。ライオンはその3分の2ほどを食べていた。 夜が明けて、日差しが暑くなってくるとライオンは日陰に引っ込んでしまう。しかしまだ肉が残っていると群の1頭は残りを見張っていることが多い。もしそうしなければ夕方、ライオンが戻ってきたときにはほとんど何も残っていないだろう。 クルーガー公園で長年観察したスティーブンソン・ハミルトンは6頭の群が平均して週2回、大きなレイヨウを殺すと報告している。ブライアン・バートラムも、主にシマウマやヌーなどの比較的大きな動物を捕らえている場合は、小さいグループならば平均して3日置きに食べると言っている。 子供が大勢いる大きなプライドでは各自の分け前が少ないのでもっと頻繁に狩りをしなければならない。子を持つ雌はしばしば単独で狩りをする。しかしグッギィスベルクによればこんな時は、他の雌に手伝ってもらうことが多い。 |
|
雌が倒した獲物を雄が割り込んできて独りで先に食べることもある。獲物の奪い合いは力関係によるところが多いが、また彼らの気性や空腹度にもよる。バートラムは雄に獲物を奪われた1頭の雌が、別の雌2頭とともに奪い返すのを見ている。 また写真家の岩合光昭氏も3頭の雌が食べているそばで、雄が物欲しそうに待っているところを見ている。雄が割り込もうとすると雌が激しく威嚇してそのたびに雄はあわてて引き下がるのだった。 シャラーによれば1頭の雌が雄を攻撃すると、他の雌達も雄に対する戦いに参加することがあり、このような一致協力した攻撃には力の強い雄でも耐えられないので戦いを避けようとする。 雌同士は大きな獲物は分かちあう。獲物が小さい場合はしばしば奪い合いをする。雄同士だと一方が簡単に引き下がることが多いが、雌は雄よりも容易に諍いをする。 1頭の雌は捕らえた獲物を先に子供に食べさせることが多いが、群全体の食事となるとライオンたちは皆我先に食べようとして激しい競争になり、弱い子供達は割を食うことになる。 |
しかし子供もなかなかにしたたかで、最上の部分を咬み獲って独りで食べている雄に近づきその口から肉片を奪い取ったりもするのだ。 シャラーが観察した例では、1頭の雌がガゼルを捕らえた時、他の3頭の雌と4頭の子供がやってきて奪い合いとなり、獲物を捕らえた雌ともう1頭の雌がガゼルのそれぞれ3分の1以上を確保して乱闘から離れたが、1頭の子供も脚1本を確保した。 |
独り暮らしのトラはライオンよりも食事のインターバルが長い。それは狩の成功率が低いこともあるだろう。飢えたトラはしばしば獲物のそばに数日間とどまって食べられるだけ食べる。 雄のトラが体重約110kgのバラシンガ(ヌマジカ)を3日で食べ尽くしたことがある。このトラは1日平均25kgほど食べたといえるだろう。また180kgほどの子ウシを4日で食べたトラもいた。Arjan Singh(1973)によればトラは1週間から10日の間食べずにいるのが普通だという。 1回目の食事を終えるとたいてい近くの川や池に水を飲みに行き、戻ってきて休憩する。そして夜が明けるまで何度も食事を繰り返す。日中であってもトラは残りを食べにくることがあるが、たいていは日が暮れてからである。 ハゲワシやジャッカル、ハイエナなどが死体を盗みにやってくる。死体が放置されているように見えても、近くの茂みにトラが潜んでいることもあり、時にはトラが猛然とダッシュしてこれらのスカベンジャー達を追い払う。 |