トラとヒョウの交流?

 インドのある村で大暴れをした非常に大きなヒョウのことが記録されている(サンカラ、1977)。それは雌トラと雄ヒョウの混血だとも言われている。頭と首はヒョウで、縞模様の所々に薔薇の花形がある体はトラであると言う。そのような混血の存在は信じ難いが、あるハンターは、雌のトラと大きなヒョウが一緒に狩をしているのを何度か見たと言っている。
 この2頭が交配したのかどうかまでは判らないし、サンカラは単なる狩猟仲間と見た方がいいと言っているが、トラとヒョウが一緒に行動すること自体ありそうにない。まずヒョウがトラを避けてしまうからであるし、それはトラがヒョウに対し、頻繁に敵対行動を取るからだ。野外における同棲(?)更に混血の出産は、噂に尾鰭が付いてできあがった話ではないだろうか?

ぶちライオン

 アフリカにはライオンとヒョウの混血を示唆する幾つかの話がある。最も有名なのが、ケニヤのマロジで第2次大戦の少し前、アバーデア山の標高2700m辺りで撃たれた。
 ロンドンの大英博物館に送られた全長264cmの毛皮は、体に斑点があり、短いたてがみを持っていた。もしライオンなら3歳くらいの若い雄であるが、これは山に住む小型のライオンであろうと考えられた。
 幾度かの探検が試みられたが、遂に新種のライオンは発見されなかった。原住民は山の森林に斑点ライオンマロジが居る話を探検隊に話して聞かせたが。
 ケニヤからエチオピア、中央アフリカに到る山間部に似たような話が幾つか聞かれるのだが、時がたつうちにいつしか、小型で新種のライオンから、ライオンとヒョウの雑種であろうとの話に変わってしまった。なかなか見つからないのもそのためだと考えられた。
 しかしライオンの子供には斑点があり、特に東アフリカのものには、半ば成長するまで残っていることがあるので、斑点ライオンの話は単なる若いライオンのことだろう。もともとライオンの多いサバンナでは、却って目立たないのである。

ぶちライオンの唯一の証拠の毛皮(大英博物館所蔵)



 ライオンとヒョウの混血・レオポンが自然界にもいるのではないかと考える人はいないだろう。ライオンとヒョウの雑種は世界の動物園でもごく少ない。それだけに1959年11月、西宮市の阪神パークで雌ライオン(125kg)と雄ヒョウ(32kg)との間に誕生した雑種は世界でも稀有な例だった。
 トランキライザーを使用して交配に成功したもので、雄には繁殖能力がない。雌雄とも斑紋があり、体つきはライオンに近い。雄はたてがみもある。アフリカにはライオンとヒョウ、共に生息している地域は多くあるが、双方が実際に出会うことは少なく、ヒョウの方がライオンの存在を察知して避けてしまうので、戦いはめったに起こらない。友好はさらにむずかしい。発情期だったとしても交配は起こりえない。

ヒョウを食べた男

 1934年11月、スイスのチューリッヒ動物園からクロヒョウが逃げ出したことがあった。もう数日でクリスマスというある日、チューリッヒに近いある村に住む農夫が、納屋の中でクロヒョウを見つけ斧で簡単に殺してしまった。
 この男が後に語ったところによれば、彼は自分が見つけた獣が何であるか全く関知せず、料理して食べてしまうこと以外に何も考えなかったそうである。(Wood, 1977)

若い娘たちと年老いた男?

 1971年、カリフォルニアのゲームパークに11頭の若い雌ばかりのライオンの群が到着した。暫くして、彼女たちのために若くてたくましい雄が連れてこられた。ところが雌達は全く気に入らなかったようで、この雄は散々に打ち据えられ傷だらけにされてしまった。その日から5日連続して若い雄を連れてきたが、結果は同じで、飼育係は翌朝、雌たちにつけられた傷を嘗めている哀れな雄を見出すのだった。

ご老体  自棄になった飼育係は、フレーザーと言う名の老いぼれライオンを呼んできた。この17歳のライオンときたら3歩も歩けば息切れする程だった。
 ところがこの染みだらけの老ライオンは雌達からすっかり歓迎された。
 肉は彼に食べられるよう雌が噛んで軟らかくしてくれたし、彼の毛並みは雌達が常に嘗めてきれいに保たれ、歩くときには左右から寄り添って支えてくれるのだった。
 また彼女らは、フレーザーを嫉妬に燃えた若い雄たちから護ってもくれた。
 その代わり彼は余生を無駄にしないよう男の勤めを果たし、1年半に渡って、雌達を次々と妊娠させた。そして死ぬまでに35頭の子供の父になっていた。

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