ゾウは高度な知性を持ち、傷ついた仲間を支えたり、死んだ仲間を起こそうとしたりする。時にはもっと複雑な行動をすることがある。

 アフリカゾウは鼻と足を器用に使って井戸を掘るといわれる。干上がった川床に地下水を嗅ぎ当て、巧みに穴を掘る。
 この井戸はゾウのなかまだけでなく、他の動物にとっても水の供給源になるのだが、いよいよ水が少なくなると、ゾウはその穴に蓋をしてしまい、他の動物には飲ませないことがあるそうだ。ゾウは本当に自分から思いついて蓋をするのだろうか?
 動物園では独り暮らしのゾウがサッカーボールをいじって遊んだりする。見ている人間に鼻息を吹きかけて悪戯したり、ゾウ舎を洗っている飼育係の隙を見て、ホースで水を浴びせたりする。

←ゾウが掘った井戸。ゾウは地下水を感知し、穴を掘って水がたまるのを待つ。Lake Manyara National Park(タンザニア)


ゾウとラクダ

 カリフォルニア、サクラメントの動物園ではゾウとラクダが隣り合わせの檻にいた。
 ゾウの水桶はすぐ近くにあったが、どういうわけかラクダのそれは遠くに置かれていた。
 水を飲みたくなったラクダが、頭を振って喉の渇きを知らせるような声を出すと、ブラブラしていたゾウは、耳をばたばたさせて自分の水桶に近づき、鼻で水を吸い込むと塀越しに鼻をラクダの口に入れたのだった。もちろんラクダはゾウが注ぎ込んでくれた水を満足そうに飲んだ。

ゾウとカバ

 オランダのロッテルダム動物園ではゾウとカバが隣同士だった。両者の間は塀で隔てられていたが、カバはその塀に前足をかけて身を乗り出し、隣のゾウにモーションをかけた。カバのしぐさを了解したらしいゾウは、やはり塀に近づいて肘をかけ、身を乗り出した。
 ゾウは大きく開けられたカバの口に鼻を差し込んだ。自分の牙でカバの牙をこすり、さらには口の中に頭を差込さえした。カバはゾウの頭や耳の付け根を軽く噛んだ。ゾウは後足や尾を差し込み、そのつどカバはそれを咥えた。塀越しに両者は並行して動きながら、これらの動作を繰り返したが、まるで求愛のしぐさのように見えたということである。カバは決して強く噛んだりはしなかった。

 動物園では飼育係がカバの口の中に手を入れて撫でてやることがある。カバは気持ちが良いのか口をあけたままじっとしている。
 ハーレ動物園ではカバの口の中に入って舐めまわしたイヌがいる。
 どんなきっかけで始まったのかはわからないが、一日数回、数日の間、イヌはカバの口の中に体半分まで入り込み、しきりに舐めるのだがカバは一度もいやな顔をしなかった。

 ニューヨーク自然史博物館のカール・アーケレーは博物館のアフリカ・ホールに展示するために、ケニヤで竹林を背にしたアフリカゾウを撮影していた時、あわや押しつぶされそうになったことがある。
 ゾウが近くにいると感じた時、彼は撃たねばやられると銃を構えようとした。アフリカゾウが猛然と突進してきた。胸に向かって牙が突き出された。
 アーケレーは咄嗟に左手で牙を掴み、ついでもう1本を右手で掴んだ。まったく自然に、牙の間で体が浮き上がった。ゾウはアーケレーが牙の間にいるのを認めてか、牙を地面に突き刺すと鼻を丸めて彼の胸を押し始めた。唸り声と共にゾウが頭を下げてきた。肋骨が折れた。そして彼は意識を失った。
 牙が木の根か岩にぶつかったらしい。ゾウはアーケレーが死んだと感じたのか牙を抜き、その場を離れたのだった。彼はゾウが人を襲った時には、死体を突き刺したり、足で踏みつぶしたり、また鼻で手足を掴んで引きちぎったりしてとどめを刺すことを知っていたから、まったく幸運というしかなかった(小原、1971)。
 そのアーケレーは一群のゾウがサッカーに興じているのを目撃したことがある。注意深く近づいた彼は、ゾウがどたどたと足音を響かせながら、ぐるぐる回っているのを見た。かといって驚いたり、怒ったりしているようでもなかった。
 アーケレーはもっと接近して、これらのゾウたちが直径60cmくらいの土のボールを、鼻と足で強打しているのを見てあっけにとられた。ゾウはサバンナの通り道を1キロほどもボールを転がしていった。

サイとカバ

 

 2002年、初夏の暑い午後、シロサイの夫婦のもとに隣のカバがぬーっと顔を出した。何事かと雄(たぶん)のサイが出迎えに。
 見つめ合うこと数分、カバはそれ以上は入ってこなかった(入れなかった)。サイに挨拶するのでもなく、もじもじしている。
 サイの方もよくあることなのか、落ち着いて眺めていた。

 

 

 実はカバはサイの夫婦を訪問するために(?)石段によじ登ったのだったが、そこで身動きがとれなくなって焦っていたのだった。戻ろうとあがいていたが後脚が下に着かない。
 改めて自分の脚が短いことを実感しながらもがくこと数分、ようやく足が地について、カバも見ている人々も安堵。
 ここのカバは一人暮らしなので話し相手が欲しかったのかも。どうやらカバは見かけ通りの愛嬌を見せることもしばしばあるようだ。

 神戸市立王子動物園にて

 ここのシロサイは雄雌とも体重2t余りと聞いているが、カバはもう少し大きく見える。


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