硬骨魚類のうちで、最も体が長いのはオオチョウザメか、リュウグウノツカイ Oarfish だろう。世界の温帯から熱帯の海域に棲む深海魚で、稀に海岸に打ち上げられているのが見つかる。体は銀白色で鰭は赤い。
 1963年7月、アメリカはニュージャージーの沖合で、海洋学者の一団が目撃したものは長さ15mもあったといわれる。この数字は単なる目測にすぎないが、観察していたのが経験豊かな専門家(Sandy Hook Marine Laboratory のメンバー)であることから信頼できる目撃とされている。彼らは自分たちが乗っていた船 Challenger 号(26m)との比較から推定した(Carwardine, 1995)。

 この細長い魚はおそらく西洋で長く語り伝えられている大海ヘビ Great Sea Serpent の正体の有力な一つだろう。1860年にバミューダ諸島・ハミルトン島のハンガリー湾で岩場に乗り上げて暴れている大海ヘビが目撃された。それは長さ5.1m、胴の直径38cm。体色は鮮明で銀色の光沢を帯びていた。頭の形はブルドッグに似ていないこともなかった。最も目立つ特徴は頭の頂きに並ぶ鮮やかな赤い色をした細長い棘のような突起だったという。のちにこの遺骸を調べた博物学者マシュー・ジェイムズはリュウグウノツカイだと鑑定した。その精密な絵()がワシントンの国立博物館に保存されている。


7.6m1885年頃、アメリカ東部のメーン州近くで漁師が捕まえた。体重約270kg。
6.4m1901年、カリフォルニア、サンタ・アナの海岸に流れ着いた。
約14m1947年12月、蒸気船サンタ・クララ号がノースカロライナの沖合で引っかけて首を切断してしまった。体の幅90cm。

 リュウグウノツカイはふつう温帯から熱帯にかけての深海に住み、たまに(死んだり死にかかったものが)水面に現れるだけなので特に大きなものだったら怪物と思われるのも無理はない。
 生きているリュウグウノツカイが観察されたことはほとんどないが、海面を泳ぐ時には全身をくねらせるといわれる。また頭の上にある多数の赤いとげ状のものを立てることができるのでたてがみのように見えるだろう。これらも大海ヘビのイメージにマッチしている。
 銀色の光沢がある扁平でリボンのような細長い体をしているが、しっかりと骨がある硬骨魚類だ。

 リュウグウノツカイは深海魚だが、時にニシンの群を誘導するような格好で跳びはねることがあるので、イギリスの漁業者からはニシンの王 King of Herrings とも呼ばれている。



 2016年2月8日、新潟県佐渡沖の定置網に、リュウグウノツカイが生きたままで引っかかっているのが見つかった。長さ3.3m。リュウグウノツカイは佐渡の海岸で海が荒れる時期に死がいが漂着することはあるが、生きたまま捕獲されたのは非常に珍しいという。
 このリュウグウノツカイは、新潟市の水族館・マリンピア日本海が引き取り詳しく調べることにしている(日テレNEWS24)。



 2月9日から11日までマリンピア日本海で展示されたリュウグウノツカイは、その後は、同水族館で解剖・調査下上で剥製にされる(毎日新聞)。

 2015年12月22日にも、石川県能登半島で、生きたリュウグウノツカイが定置網にかかっている。長さ約3m、早速水槽に移された(日テレNEWS24)。




 2015年3月8日にも、長崎県で長さ3.3mほどのリュウグウノツカイが海岸から100mほどの海に仕掛けられていた定置網にかかっていた。発見者は、網の底に沈んでいるような状態で、死んでいるのかと思ったそうである。水族館に送られたが、翌9日には死んでいるのが確認された(テレ朝News)。


 2015年6月、カリフォルニアのロサンゼルス沖でリュウグウノツカイが打ち上げられているのが発見された。当初は大蛇だと思われていたが、海洋生物学者の調べで、この大蛇が深海に生息する硬骨魚類のなかで世界最長のリュウグウノツカイであることが判明したという。死骸はカリフォルニア州立大学の生物学研究室に送られ、解剖して詳しく生態を調査するとしている(ハザードラボ)。
 このリュウグウノツカイは全長4.3m。解剖を担当したペニントン海洋科学センターの所長デイビッド・チャン氏によれば、死骸には尾がなく、生前はもっと長かった可能性があるという。解剖後の死骸はカリフォルニア州立大学フラトン校やロサンゼルス自然史博物館で研究に使われる予定だ。
 尾のないリュウグウノツカイは珍しくないようだ。一部のトカゲが尾を切って捕食者から逃れるように、リュウグウノツカイも自己切断できるという。 現在、リュウグウノツカイには Regalecus russelliiR. glesne の2種がいるとされており、後者の方が冷たい水を好む(ナショナルジオグラフィック)。


2002年2月、唐津市神集島の海岸でリュウグウノツカイが見つかっている。長さ4.4m。
 写真は Cosmos Homepage さんからお借りしました。リュウグウノツカイが見つかった時は、テレビ局までやってきてかなりの騒ぎだったそうです。この標本は福岡県のマリンワールドに保管されているそうです。
※ わたぴーさんから知らせていただきました。

 西洋だけでなく日本にも人魚の伝説があり、そこにあらわれる人魚の特徴は:
(1)頭や肌が白い。(2)頭に赤くて長い髪がある。
(3)体は魚の形で長い。
(4)九州北部、日本海沿岸で多く発見されている。
 どうやらその正体はリュウグウノツカイとみて間違いなさそうだという(海の中道海洋生態科学館)。

 2005年5月19日、鹿児島県の南大隅町根占山本の大浜漁港でリュウグウノツカイとみられる魚が漂っているのが見つかった。
南日本新聞  魚は3mほどで、タチウオのように体が薄く細長い。陽光を浴びて水色に輝いた。頭から2mもの長いひれがあり、先端の数カ所は白やピンクに光っていた。海面すれすれに頭を上に立ち泳ぎ。小エビでもいるのか漁船の係留ロープに付いたノリを食べるようなしぐさをした。
 これまで県内でもたまに死魚が漂着する例があるそうだが生きているリュウグウノツカイが現れることは極めて珍しいという。
 かごしま水族館の荻野洸太郎館長は、写真からリュウグウノツカイにほぼ間違いないとした上で「簡単に出合える魚ではない。10年に1、2回あるかというぐらい珍しい出来事だと思う。詳しい生態はよく分かっていないが、たまたま浅瀬を漂っているところを発見されたのではないだろうか」と話した (南日本新聞)。※ ワニヲタさんから知らせていただきました。

 2007年11月28日、中国は浙江省温嶺市石塘鎮の漁民が全長4m、重さ18.5kgの「超巨大太刀魚」を捕獲した。通常のサイズを超えた常識破りの大物だと猟師たちは興奮していたが、その正体は……。
 太刀魚は中国でもポピュラーな食材で、最大で全長2m、重さ5kgほどに成長する。ところが今回捕獲された“超巨大太刀魚”は通常のサイズをはるかに超えた常識破りの大きさだと猟師たちは興奮していた。
 また、普通の太刀魚が銀色の体をしているのに対し、この「超巨大太刀魚」はほんのりピンクがかっているなど、さまざまな相違点があるという。

 猟師たちを興奮させた「超巨大太刀魚」は実は極めて希少な深海魚リュウグウノツカイだった。言われてみればタチウオはリュウグウノツカイに似ている(RecordChina)。※ スズメっちさんから知らせていただきました。

 2008年6月9日、兵庫県浜坂沖でリュウグウノツカイが漁船に釣り上げられている。イカ釣り操業中に偶然かかったそうで、長さ1.4m、細長い銀色の体に灰色の斑点が多数見られた。これも釣った当初はタチウオかと思ったそうだ(日本海新聞)。

2008年12月11日、対馬沖で海面を漂っている長さ4.1mのリュウグウノツカイが発見された。すぐに捕獲されたが、残念ながらまもなく死んでしまった(長崎新聞)。
※ わたぴーさんから知らせていただきました。

 2009年1月26日には青森県の陸奥湾でも長さ3.9m、体重19.5kgのリュウグウノツカイが見つかっている。これも捕獲後すぐに死んでしまったそうだが、青森県県営浅虫水族館に届けられた。同館では珍しい魚のため冷凍保存し、解剖して生態を調べたり、今後は一般公開も検討しているという(河北新報)。※ ac7059さんから知らせていただきました。

 2009年12月15日、富山県黒部市の海岸に長さ396cmのリュウグウノツカイが打ち上げられた。散歩していた人が波打ち際まで約1mの岸で発見し、魚津市の魚津水族館に持ち込んだ。初めは銀紙かと思い、魚とは気づかなかったと驚いている。
 銀紙かと思われたこの魚は銀色の表面に黒い斑点がある。特徴的なのは、約1mに達する2本の腹びれで、先が丸くふくらんで鮮やかな赤色を帯びている。頭部付近にも約80cmの背びれがある。
 リュウグウノツカイは台風などの荒天や地震後に海岸に漂着した例が多く、魚津水族館の門田信幸・学芸員は「昨日からの荒波で打ち上げられたのではないか」とみている。
 リュウグウノツカイという風変わりな名前の由来も正確には分からないそうで、同館などでは「赤い腹びれや珍しさから『竜宮城』からの使いを連想したのでは」と推測。15日に袋の中でホルマリンに漬け、今後、ケースを用意して標本展示したいとしている(読売新聞)。
※ わたぴーさんから知らせていただきました。

 リュウグウノツカイは日本では、太平洋側よりも日本海側に多いといわれる。そして日本海では、水深25−50mから150−200mあたりを静かに遊泳していると推定されている。一般に水深200mより深い海域に棲む魚類を深海魚と呼んでいるので、リュウグウノツカイは(深海魚の名に)ぎりぎりセーフというところだろうか。

 2010年1月9日、リュウグウノツカイが平戸市沖で捕獲され、佐世保の九十九島水族館(海きらら)で泳ぐ姿が一般公開された。定置網にかかり、同水族館が譲り受けたリュウグウノツカイは長さ3.8m、体重35kgの雄。水族館で生きて泳ぐ様子が公開されたのはおそらく全国初。
 長くは生きられないと判断されたが「少しでも泳がせて生態解明につなげたい」との考えで九十九島湾大水槽に放った。ダイバーが補助しながら34分間公開された後、死んだ。これまでも平戸市付近で数回、発見されたがいずれも捕獲直後に死んでおり、1匹を剥製で展示している。今回も標本にする予定という(長崎新聞)。
※ Yui さんから知らせていただきました。

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