コモモジロ

 5月中旬、近所の公園の池でチュウダイサギを見かけた。背中の飾り羽がきらきらと輝き、非常に美しかった。この時期のチュウダイサギは婚姻色と呼ばれ、夏羽ながら目の縁の青や、脚のピンクが強調されているようで、コモモジロの名はここから来ているのだろう。秋や冬にもチュウダイサギを何度か見かけたことはあるが、繁殖期に目にしたのはこの時だけだった。

チュウダイサギ Eastern Great Egret

 夏鳥としてわが国に渡来し、近畿地方の御陵の森にはチュウサギ、コサギ、アマサギ、アオサギ、ゴイサギ等に混じって集団営巣するものが多い。
 本種は広く、インド、中国南部からオーストラリアに分布し、夏鳥として日本に渡来する。関東以南の本州と九州で繁殖し、北海道や四国にも飛来する。わが国で繁殖したものは、冬は南方に渡るものが多いが、少数は冬もわが国に残留する(保育社・原色に本鳥類図鑑)。

 チュウダイサギは、全長90cmくらい、首を伸ばすとかなり大きく見えるが、体は細い。
 夏羽では胸に細い飾り羽が、背中にもレース状の蓑羽と呼ばれる飾り羽が生える。この蓑羽が光を反射してきらきらと光り、大変美しい。繁殖期には嘴は黒くなり、一時的に目先は青緑に、脛節は濃い桃色になる。


 チュウダイサギは、5月中旬、婚姻色が現れ、目先はコバルトブルーになり、脚は濃いピンク色

 冬羽では嘴は黄色、目先は黄緑色、そして脚は全体が黒くなる
コモモジロ

チュウダイサギ

 チュウダイサギは、汎世界的に広く分布する大型の白鷺・ダイサギ Great Egret の亜種とされている(最近では独立種とする説もあるようだ)。ダイサギの中で中国東北部やシベリアで繁殖する亜種・オオダイサギが冬鳥として日本に渡ってくる。
 オオダイサギはチュウダイサギより一回り大きく、全長100cmくらいになる。脚はもっと明るい色をしている。オオダイサギは、冬鳥として主に九州以南で見られる(成美堂出版・日本の野鳥カタログ)。以前は稀な鳥とされていたが最近では数が多くなっているようだ。
 日本ではチュウダイサギは夏鳥、オオダイサギは冬鳥なので、地域によっては、両者が入れ替わっているのでダイサギとして一年中いるように思われてしまうといわれる。しかし近畿以南では、チュウダイサギは冬も留まるものが少なくないので、同時に同じ所で両者が見られることもある。一緒にいると大きさに差があるのがわかる。また先に述べたように脚の色で区別できる。

オオダイサギ(冬) チュウダイサギ(冬)

いずれも冬羽のオオダイサギ(左:日本の野鳥カタログ)とチュウダイサギ(右:日本の鳥550)

 サギ類は何種もが一つの場所に集まって集団で繁殖する。この集団繁殖地をコロニー、あるいはサギ山と呼ぶ。サギ山には3種のシラサギの他に、アマサギ、ゴイサギなどもいる。サギ山では最も大型のダイサギが、木の天辺の一番よい場所に巣を作る。その他の、チュウサギ、コサギ、アマサギなどは木の中枝に巣を作る。近年ではあまり大きなサギ山はみられなくなったという。
 サギ山の木は、大量の糞がかけられるため、数年で枯れてしまう。するとサギは別の場所にコロニーを移す。枯れてしまったサギ山のあとには、地中に残されたサギの糞の養分で、若い木が他の場所よりもよく育ち、何年か後には元のような立派な森に戻る(オルビス学習科学図鑑)。

 ある朝、年配の方が池の岸に腰かけ、釣り糸を垂れていた。向こう岸にはアオサギがいた。老人(失礼)が魚を釣り上げ、片手を挙げながら、お〜いと向こう岸に向かって声をかけた。アオサギはすぐさま池面を飛び越えて彼の脇に舞い降り、朝食の魚を呑み込んだ。
 数日後の朝にも老人は釣りをしていた。その隣にはアオサギが控えていた。通勤途上なので長居はできなかった。だから確認はできなかったが、アオサギはその朝も食事にありついただろう。

アオサギ

 アオサギ Grey Heron は全長95cm前後、ダイサギほど細長くない。ユーラシア中南部とアフリカに分布し、日本でも全国的に見られ、数も多い。北日本では夏鳥、本州中部以南では留鳥だが、一部は南方へ移動する。また冬には南西諸島や伊豆七島にも渡来する。
 アオサギといっても羽色は灰色。夏羽では一時的に嘴と脚が赤っぽくなる。

 福岡の中州では、真夜中でもアオサギが川岸にたたずんでいるそうだ。ネオンで十分に明るいのだろう。ネオンに魚が引き寄せられるからかもしれない。そして寝るのは日中、近所のビルの屋上である。

 最近ではダイサギ、チュウダイサギはシラサギ類 Egretta ではなく、アオサギ類 Ardea であるとされている。コサギ、チュウサギ、ダイサギの白鷺トリオは解散してしまうのか。特にダイサギとチュウサギは見た目そっくりなだけに(野外での区別はなかなか難しい)しっくりこないのだが。

アオサギ(冬)

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