インドネシアのコモド島やフローレス島、リンチャ島などに棲むコモドオオトカゲは世界最大のトカゲでコモドドラゴンとしてよく知られている。オオトカゲ類 Monitors は南アジアからニューギニア、オーストラリア、そしてアフリカに分布し30種ほどがあるが、その中でコモドオオトカゲはひときわ大きい。
 大きな頭、重々しい胴体、長くてぶ厚い尾、それらを支える頑丈な脚。巨体に似合わず意外に素早く動き、シカやイノシシを追いかけて食い殺すことができる。

 現地の噂では人を食べ、口から蒸気を噴出させるといわれ、スンダ列島を訪れた商人や漁師が、6m以上もあって、スイギュウをも引き倒すほど強力なトカゲがいるとの話をその尻尾と共に持ちかえっていた。
 ジャワ島のボゴール博物館館長、オーウェンスによって1912年その実在が確認されると共に、噂のコモド竜が実は巨大なオオトカゲであるとヨーロッパの学会に報告されたのだった。

全長(m)場  所備  考
7.0(推定)コモド島(1937)スウェーデンの動物学者によって目撃された。
4.4(推定)コモド島(1938)アメリカのジャーナリストによって目撃された。
4.0(推定)コモド島警官によって射殺された。

 発見後も大物の噂は絶えなかったが、オランダ(インドネシアの宗主国)などが探検隊を派遣して、標本や生け捕りにしたものを持ち返りやがてその正しい姿がわかってきた。実態は話半分ではあったがそれでもトカゲ類では群を抜いて大きい

全長(m)場  所備  考
3.0コモド島(1923)the Duke of Mecklenburg によって捕獲。
2.9ジャワ、Buitenzorg の博物館所蔵標本。
2.76コモド島(1926)Douglas Burden 探検隊によって集められた54頭のうちで最大のもの。
2.7コモド島オランダの動物学者 De Jong によって捕獲された。
2.66フローレス島西海岸(1915)De Rooij によって捕獲された。

 コモドオオトカゲは現在約5000頭が生息していると言われている(Carwardine, 1995)。1950年代中頃では2000頭くらいといわれていた。
 現在でも密猟は行われているが、インドネシア政府によって厳重に保護されていて、研究用にも、また動物園に送るためにも捕獲することはできない。1965年当時ですでにインドネシア国外の動物園には7頭しかいなかった。
 現在ではコモド島全体が国立公園に指定されている。ただ1種の動物(コモドオオトカゲ)を保護するためにしては異例の措置である。

全長(m)場 所(到着年)備  考
3.1セントルイス動物園(1933)体重165kg(O. ブレランド)。
2.75ジョグジャカルタ(1960)スラバヤ島から雌(2.5m)と一緒に到着。
2.7ロンドン動物園(1927)
2.7ワシントン動物園(1964)体重91kg、インドネシア政府から雌(1.8m、57kg)と共に到着。
2.54タロンガ動物園(1963)体重91kg、コモド島から雌(2.3m、72kg)と共に到着。
2.4ベルリン動物園(1927)オランダ・ドイツの探検隊が生け捕りにしたもの。

 2008年10月30日、札幌円山動物園にインドネシアのタマン・サファリからコモドオオトカゲのペアが到着した。同園では夏に日本とインドネシアの国交樹立50周年を記念してインドネシアの動物や文化を紹介するインドネシアフェアを開催。これをきっかけとして、コモドオオトカゲを借り受けた。
 やってきたのはどちらも6歳の雄(228cm、55kg)と雌(180cm、23kg)。日本では円山動物園でしか見ることができないコモドオオトカゲ、残念ながら2009年夏までの限定展示という。

 コモドオオトカゲも飼育下では肥満する傾向にある。野生のものは通常2.5m前後で体重50−70kgくらいだ。また若い個体(1m前後)は非常に動きが速く、短距離(200−300m)ならイヌに追いつけるほどである。しかし成長しきった個体はそれほどには速くはない。

ロンドン自然史博物館 写真はある大学生の方(環境情報学部)より提供して戴きました。

 2007年6月、コモド国立公園で8歳の少年がコモドオオトカゲに襲われ死亡した。少年は公園内の漁村で用便のために茂みに入ったところ、オオトカゲに腰付近をかみつかれ、引きずられるなどして右足に深い傷を負い、約30分後に出血多量で死亡した。
 インドネシアでは4月からは乾期で、コモドオオトカゲにとっては通常の獲物が少なくなっているという。同公園は「コモドオオトカゲが公園内の住宅地を歩き回ることは珍しくないが、人間を襲って殺すことは非常に稀で、たいていは軽いけがを負わせるぐらいだ」と話している(CNN)。
※ ざりがにさんから知らせて戴きました。


 コモドオオトカゲは藪の下などでシカやイノシシが通りかかるのを待ち伏せ、獲物の脚や喉を狙って突然噛み付き、投げ倒し、腹を引き裂くという。このようにしてしとめた18kgほどのイノシシの子を15分ほどで食べてしまう。
 また体重46kgの個体が40kgほどのブタを殺し、1回の食事でほとんど食べ尽くしたこともあった。
 スイギュウでさえ彼らの餌食となることがある。スイギュウの下肢に何度も噛み付き、筋を切断して動けなくしてしまう。もしスイギュウが逃げおおせたとしても毒が回ってやがて死んでしまい、他のドラゴンに食べられてしまう(Auffenberg, 1970)。
 現地では村人がコモドオオトカゲの犠牲になることが稀にはあり、さらに観光客が襲われ餌食とされてしまったことも数例知られている(Carwardine, 1995)。
スイギュウを襲う

 現地でコモドオオトカゲの研究を続けたアメリカの爬虫類学者、Walter Auffenberg(1970)は、このオオトカゲは時には人を襲うことがあると述べている。野外で農作業をしていたり、木陰で眠っていた現地人が襲われ、一人は即死、もう一人は中毒で4日後に死亡した。後の数人は深手を負いながらも命は取り留めた。
 また Auffenberg の一行もテントやブラインドの中にいる時に襲われたことがあったが、この時にはたいした傷を負うことはなかったという。


 最近の研究で、コモドオオトカゲは歯の間に複数の毒管を持っており、噛みついてから引っぱるなどの動作をする間に毒を獲物の傷口に流し込むことが明らかになった。毒液には複数の毒性タンパク質が含まれ、血液の凝固、血圧の低下、筋肉の麻痺、そして意識の喪失を引き起こす。噛まれて毒を注入された獲物は、その場では逃げられたとしてもやがて絶命し、鋭い嗅覚で発見されてしまう(National Geographic)。

 2009年3月、コモド国立公園のリンチャ島で別の島から来た漁師が、コモドオオトカゲに襲われて死亡した。コモド国立公園管理局によると死亡した男性は、立ち入り禁止区域に漁師仲間と数人で果物を取りに入ったところ、木の陰にいた2頭のコモドオオトカゲに襲われ、首や手足をかまれて死亡したらしい。コモド島では2月に国立公園レンジャーが休憩中にコモドオオトカゲに襲われて負傷した事件があり、地元メディアによるとここ数カ月、襲撃が続いているという(毎日新聞)。

関西レプタイルプロ
コモドドラゴンに次いで大きく、長さではそれをも上回るのがニューギニアにすむハナブトオオトカゲ Salvadorii Monitor。しばしば3mを超え、4.75mに達するものがあったといわれる(Carwardine, 1995)。
 このトカゲは特に尾が長く全長の70%を占めている。体重の記録はないがおそらくコモドオオトカゲよりずっと軽いだろう。一説では6m以上のものさえいたといわれるが多くの専門家はあり得ないとしている。

 オオトカゲ類でもっともポピュラーで動物園でもよく見られるのは、東南アジアからニューギニアにかけて広く分布するミズオオトカゲ Water Monitor で、全長2.7mに達するものがあり、コモドオオトカゲと大差ないが、やはりずっと軽く、体重は23〜34kgほどである。

ミズオオトカゲ
藤枝市で保護されたサバンナオオトカゲ

サバンナオオトカゲ
 サハラ以南のアフリカに分布し、サバンナや開けたブッシュなどに棲む。ジャングルにはいない。他のオオトカゲよりもおとなしくなれやすい種類で、ペットとして飼育されることも多い。大きなものは全長1.4mに達する。

 2007年5月、1.2mはあるとみられる大きななトカゲがアメリカ・フロリダ州オーランド郊外の住宅地に出現した。発見した警察官は銃弾2発を発砲。それでもトカゲは捕まらず、素早く近くのため池へと逃げ込んだ。死体は見つかっていない。
 この大きなトカゲは、数カ月から目撃されており、当局の捕獲作戦を巧みにすり抜けている。地元ラジオなどで話題で、一時は懸賞金がつけられているというデマも飛び交った。当局は、以前ペットとして飼育されていたものが逃げたか、違法に捨てられたのだろうという(CNN)。

 ac7059さんから知らせていただきました

 日本でも飼われていたと思われるオオトカゲが見つかったことがある。
 2013年8月28日、静岡県藤枝市の用水路で全長約1mのオオトカゲが見つかり警察に保護された。用水路で泳いでいるのを付近の住民が見つけ、警察官二人が取り押さえた。
 全身が薄茶色で、アフリカ産のサバンナオオトカゲと見られる。飼主は見つかったのだろうか?(朝日デジタル

 2006年11月にも和歌山県海南市で、ペットとして飼われていたらしいサバンナオオトカゲ(約50cm)が発見され、海南市職員によって捕らえられている(和歌山県立博物館)。

新種のオオトカゲ

 このオオトカゲの現在の生息数は不明だが非常に差し迫った絶滅の危機にひんしており、前年6月に狩猟者から生きたまま助け出された雄がいなければ、リストに載せられることもなく絶滅していただろう。

オオトカゲの新種が発見される

 アメリカ・カンザス大の研究チームは2010年4月、フィリピン北部のルソン島で新種のオオトカゲ Varanus bitatawa を発見したと発表した。同大のレイフ・ブラウン氏によると、このトカゲは果物を餌とし、全長2m以上に成長する可能性があるが、体重は10kg程度だという。
 今回発見されたトカゲは)森で生活しており、肉を大量に食べるコモドオオトカゲほど大きくは成長しないだろうと説明されている。最大の特徴は、大量の新鮮な果物を食べることだとも(ARKive)。

※ Yamadaさんから知らせていただきました。

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