中生代白亜紀の海のオオトカゲとか、海トカゲ竜などと呼ばれるモササウルス科にあって、8000万年前に北アメリカに生息していたティロサウルスは、日本では、ヨーロッパのモササウルス以上によく知られた種類だろう。長い三角形をした頭には鋭い歯が並んでいた。顎の関節が柔軟にできているので非常に大きく口を開けることができた。


 ティロサウルスは長い尾を使ってヘビのように海中を泳ぎ、魚類やカメの他、当時の大型海生爬虫類(首長竜等)を捕食したと考えられる。胃の内容は長い間知られていなかったが、1987年の報告では1頭のティロサウルスがサメやヘスペロルニス(海鳥)、クリダステス(小型のモササウルス類)を食べていた。狩がしばしば激しい戦いになったであろうことは、下顎や鰭に傷を負った化石が少なからず見つかっていることからも推察される。



 代表種 Tylosaurus proriger はカンザスから多くの化石が出ており、大型で完全に近い骨格(Fort Hays State University )は、全長8.8m、頭骨の長さ108cm(下顎の長さ123cm)もある。またカンサス大学自然史博物館にはさらに大きな頭骨(120cm)が保存されており、全長10m近くと推定されている。
 カンザスからはより小型(5〜7m)で原始的な Tylosaurus nepaeolicus も発見されている。遠く離れたニュージーランドからも別種 Taniwhasaurus oweni が知られている他、アフリカや日本でもティロサウルス属のものと思しき化石が出ている。



 カンザス大学の自然史博物館には、1911年にカンザス西部の Pierre Shale で発見されたおそらくは Tylosaurus proriger と思われる化石がある。見つかってから深く研究されることもなく長い間放置された標本が同博物館に到着した時は決して良好な状態とはいえなかったが、そこでクリーニングされ、組み立てられた標本はモササウルス類としては最大のもので頭骨が1.8m近く、全長は13.7mもある。
 東京・上野の国立科学博物館にもこの骨格(レプリカ)が展示されている。



2004年にテキサスで見つかったこれも巨大なティロサウルスの骨格。頭骨の長さ175cm、全長は12.8m。

 ベルギーで見つかった7000万年前のエイノサウルス Hainosaurus bernardi はティロサウルスに近縁な大型モササウルス類だが、背骨の数が多く、胴がもっと長かった。頭骨と胴体の前半分しか見つかっていないが復元骨格がブリュッセルのベルギー王立自然史博物館にある。頭骨だけで1.5m以上、全長は12〜13mと推定されている。


 Hainosaurusハイノサウルスと読むのが正しいが、発見がベルギーであったため(フランス語風に)エイノサウルスと呼ばれている。

 カナダのマニトバでは1974年に H. pembinensis が発見され Bruce と呼ばれている。これも非常に大きい()。



 カナダで見つかったエイノサウルス Bruce は1988年に Nicholls によって記載されたが、2010年に Bullard と Caldwell により、ティロサウルスに編入された。新たに命名された Tylosaurus pembinensis は全身の3分の2ほどの骨が見つかっており、推定全長は13mに達する。


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