エランドはオオカモシカともいい、レイヨウ類では最大の種。見かけは痩せて背の高いウシといったところで、特に顔つきはウシに似ている。最大のシカであるムースよりも重く雄は600〜700kgはあり、体長2.8m、肩高も1.7mくらいになる。
 レイヨウ Antelope はニホンカモシカ Japanese Serow と同じウシ科の動物だが、もっとウシに近い種類で(ニホンカモシカはヤギに近い)そのためあえてレイヨウ(羚羊の音読み?)と呼び分けられている。いわゆるカモシカの脚の持ち主はこちらだ。

 エランド Common Eland はアフリカ東部・南部に分布し、近縁種ジャイアント・エランド(クロクビオオカモシカ)Lord Darby's Eland がセネガルから中央アフリカにすむ。
 どちらもよく似ていて同一種とする説もあるが、ジャイアント・エランドの方が白い縞模様がよりくっきりしている。角が大きく、喉の毛が長く、肉垂れも長い。またサバンナよりも森林や深い藪を好む。
 左がエランド
 右はジャイアント・エランド→

943kg Minerzhagen(1938)がマラウイで撃った。肩高165cm。
898kg Rowland Ward(1971)による、老齢の雄。ジャイアント・エランド。
893kg Minerzhagen(1938)がケニヤで撃った2頭の雄。どちらも同じ体重だった。
820kg Adrian Fauvie がジンバブエで弓でしとめた。体重は推定かもしれない。
650kg 柳田佳久氏が1979年にスーダンで撃ったジャイアント・エランド。体長311cm。

 アメリカの Vince Lupo が2001年に南アフリカでうち止めたエランド。体重2500ポンド(1134kg)ということだがおそらく推定、それも少々過大な見積もりではと思えるが(→)。

 エランドの角は雌雄ともほぼ同大だが、一般に雌の方が細長い。Edouard Foa(1899)がザンベジで撃った例では、雄が長さ66cm、周囲25cm。雌の角は長さ76cmで周囲は20cmだった。
 Stephen Portoがボツワナでしとめたものは左が長さ97cm(周囲28cm)、右が98cm(30cm)だった。また最も長い記録は111cm(Hanak & Mazak, 1979)。

 ジャイアント・エランドの方が角が大きいのでこう呼ばれるとされる。
 中央アフリカにおける最近のトロフィは Darryl Hastings がしとめた雄で、その角は左が長さ145cm(周囲42cm)、右が143cm(41cm)もあった(www.huntingreport.com)。
 →は E.B. Shawver がやはり中央アフリカで撃ったジャイアント・エランドで長さ132cm、周囲41cmある。

 繁殖期の雄はかなり危険で、動物園でも飼育係が攻撃されたことがある。1971年にはこの鋭い角で刺し殺される事件がイギリスであった。


 エランドの群はふつう数頭の雌と亜成獣から成り、時には1頭以上の大きな雄が加わることがある。単独の雄や雄だけの小さな群もある。群の大部分は25頭以下であるが、シャラーが調査したある群は184頭を数えた。(セレンゲティライオン)
 主な敵はライオンで、セレンゲティでのシャラーの調査(1972)ではライオンの獲物520例中、エランドが12頭含まれていた。またナイロビ国立公園(1954-66)では257例中5頭、カフェ国立公園(1960-63)では410例中12頭が、そしてカラハリ(1990)では370例中16頭がエランドだった。
 エランドはたいていの地域でシマウマやヌーより数が少ないのでライオンの餌の主要な部分を占めることはない。ブチハイエナの群がエランドを襲うことがあるといわれるが未確認。

 エランドの子供がヒョウやリカオンに殺されることはたまにある。しかしサンキスト(2002)によれば東アフリカで成獣のエランドがヒョウに殺されたことがあるという。通常、ヒョウが獲物とする最大の動物は成獣のヌーやシマウマで、これらでさえ珍しいのだが。


 エランドを家畜化しようとする試みがある。ウクライナの Astaniya-Nova Zoo では1948年からエランドを放牧し、採乳をおこなっている(Treus & Lobanov, 1971)。テキサスでも移入がおこなわれすでにいくつかの群が形成されているという(Laycock, 1966)。

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