これまでに知られる最大のウマは、1846年にイギリスの Bedfordshire で生まれた Sampson(シャイヤー種の去勢馬)で肩高219cm、体重1524kgに達した。後に Mammoth と改名された。(Guinnes Book, 1992)

 1966年7月15日に生まれたベルギアン種の雌 Wilma du Bos は、1973年4月、ベルギーのアントワープから出航する時には1460kgもあった。ニューヨークに到着した時は1400kgに減っていた。このウマは妊娠中、しかも出産を間近に控えていたためにかなり重かったらしい。肩高は188cmだった。

 1950年にスコットランドで生まれたクライズデール種の去勢馬 Big Jim は肩高216cmあった。1957年にミズーリで死んだ。

体重(kg) 肩高(cm) 愛称 品種(生年) 備 考
1452 200 Brooklyn Supreme ベルギアン(1928) アイオワ
1359 213 Dr. LeGear ペルシュロン(1902) セントルイス
1350 216 Firpon ペルシュロン+シャイヤー(1959) ブエノスアイレス
1325 178 Honest Tom 5123 シャイヤー(1884) イギリス
1285 219 Morocco シャイヤー ペンシルバニア
1257 185 Saltmarsh Silver Crest ペルシュロン(1955) イギリス
1194 178 Pinchbeck Union Crest ペルシュロン(1964)Saltmarsh Silver Crest の子
1180 197 Extra Stout シャイヤー(1980) イギリス
1170 178 Monarcht Suffolk イギリス
1135 178 Erfyl Lady Crey シャイヤー London Show Champion(1924-26)
1070 188 Wandle Robert シャイヤー ロンドン

 かつてイギリスではウマの大型化が推進され、このため多数のポニーが屠殺される悲劇を生んだが、最近では、重輓馬といえど過度に重くなることは抑制されている(Gerald L. Wood)。

 ウマは6500年ほど前にウクライナで肉やミルクを得るために野生のウマの飼育を始めたのが家畜化の最初とされる。またほぼ同時期に乗用も始められた(Mark Carwardine, 1995)。

 今現在で最も背の高いウマとされているのは、テキサスで飼われているベルギー種の荷馬 Radar で肩高202cm、体重約1100kgある。その足元にいるのは、世界最小のウマといわれるセントルイス生まれのミニチュアホース Thumbelina でこちらは肩高43cm、体重30kg。最大と最小の両者が一緒に写真撮影されるのは初めてのことでギネスブック2008に掲載された(DailyMail)。

世界最大のウマ

世界最大のウマ

 2010年3月、オーストラリアのメルボルンに、新たに世界最大のウマがいることが発表された。7歳のシャイア種・ノディで、肩高205cm、体重1.5tもある。競走馬サラブレッド(肩高1.7m前後)の3倍も重い。
 重い荷物を運ぶことに使役されてきたイギリス原産の労働馬シャイア種は今では世界に2000頭ほどしか残っておらず絶滅の危機にある。なかでも白毛や灰色の個体は非常に珍しい(AFPBB)。
※ 上田さんから知らせていただきました。

 ロシアからアジア中部にかけて生息していた野生種ターパン Tarpan は家畜のウマの繁栄とは裏腹に滅亡への道を歩んでしまった。1760年頃に絶滅した(世界動物百科40)。一説では19世紀にも生き残っていたとされる(Breeds of Livestock)。飼育下での最後のターパンはロシアの Askania Nova で1876年に死んでいる。
 モウコ野生ウマ Przewalski Horse は ターパンの亜種でアルタイ山脈南方の草原に棲んでいたが、1966年にハンガリーの動物学者 Z. Kaszab が8頭の群を目撃したのを最後に絶滅した。動物園では多数(約1200頭)が飼育されており、モンゴルでは野生に戻す計画があるとか。

 現在では真の野生種は存在せず、世界各地に見られる野生馬といわれるものは全て野生化したウマである。
 有名なのが、アメリカのムスタング Mustang でスペイン人によってアメリカに持ち込まれたウマ(アラビア−バーバリ種)が、野生に戻り、メキシコやカナダとの国境付近にまで拡がった。一時はその数200万以上といわれ、合衆国北西部のある一つの群は、通り過ぎるまでに、夜明けから日暮れまで続いたと表現されたほどだ。
 現在では中西部に1〜2万頭が残っていて、一つの群は多くて数十頭といわれる(リーダーズダイジェスト、1966)。1957年以降法律で保護されるようになった。

 シマロン Cimarrones アルゼンチンでは野生化したウマをこう呼んでいる。大平原に数千頭もの大群で棲む。かなり厳重に管理されており、広い地域に分散するのを防ぐために週に一度は集めて、外傷の手当や簡単な手入れをしている。

 ベネズエラとの国境に近いブラジルの Serrado の荒野に棲む Roraima の野生のウマは家畜のウマよりも速く走れるといわれる。ブラジルの国立農業研究所によれば競走馬よりも長い距離を時速60kmで走るという(Mark Carwardine, 1995)。

パラグアイでも野生化したウマをムスタングと呼ぶ

 1945年2月5日、メキシコシティで4歳の Big Racket が1/4マイル(402m)を51.7kgを背負って20.8秒で走った(時速69.6km)。
 また1989年10月14日、カリフォルニアの Arcadia で3歳の Hawkster が1.5マイル(2414m)を54.9kgを背負って2分22.8秒で走っている(時速60.9km)。


 日本在来馬 現在では道産子(北海道)、岬ウマ(都井岬)、トカラウマ(鹿児島県トカラ列島)などがおもなもので、その数は1000頭以下である。各地では保存の努力がなされている。
木曽ウマ 長野県 肩高1.3m

 ポニー Ponny イギリスでは肩高148cm以下のウマをポニーと呼ぶ。子供の乗用や、山岳地帯・炭坑での運搬、サーカスなどで使われていた。最近、日本でも野生化したポニーが問題になっている(山陽新聞)。
 世界最小のウマは、アルゼンチン産の Falabella 種で肩高75cm以下、体重も35kgまでにしかならない。サウスカロライナで J. C. Williams が飼っていた雄 Little Pumpkin(1973年4月15日生まれ)は2歳半の時で肩高36cm、体重9kgしかなかった。

 ラバ Mule 雄のロバと雌のウマの混血。繁殖能力がないにもかかわらず、ラバが生産されるのは、ウマの力強さとロバの粗食性を兼ね備えているからだ。どんなウマも尻込みするような急な傾斜の小道でも、重い荷物を背負って軽々と登る。おもに南ヨーロッパの果樹園やアメリカの綿農場で飼われている。

 ラバは肩高1.4〜1.7mもあるが、普通のロバはもっと小さい。祖先のアフリカ野生ロバと同じ肩高1.2mくらいのものが多いが、中国の河北・山西地方には大驢という大型のロバが飼育されている。これは肩高1.6mに達する。
 1902年、イギリスのグラスゴーで肩高213cmもあるとんでもなく巨大なロバ Dinah(オーナー E. Bostock)が Hippodrome に出展された(Gerald L. Wood, 1972)。
 また最大のラバは、イリノイ州コロンビアの Apollo(1977年生まれ、オーナー Herbert. L. Mueller)で肩高195cm、体重1トンもあった(Guinnes Book, 1997)。


最大のウマシャイヤー(左)と最小のウマ Falabella(右)

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