オオカンガルーはオーストラリア東部とタスマニアの森林に20〜50頭くらいの群で生活している。夕方から夜にかけては平原に出て草を食べる。 カンガルーが好み、また最もよく知られている遊びはボクシングである。2頭のカンガルーがボクシングをする時は双方とも両手を胸に付けて身構え、どっしりした尾で体の安定をとり、それから相手に誘いをかける。活発な打ち合いが交わされるがそのうち互いに後に下がり、1回戦を終えて休憩する。長時間戦う時でも試合と休みを交互に繰り返す。スポーツとしてやっているのだ。 発情期には雄同士が戦う。これは遊びの戦いよりももっと激しい。2頭の雄は互いに向き合って立ち上がり、自分の大きさや筋肉の発達具合を誇示する。それから長い爪の付いた前脚で相手の顔や首に組み付く。さらに太くしっかりした尾を支えに、後脚で強烈な蹴りを繰り出す。雄の腹部は皮膚が厚く、衝撃を吸収するようにできているが、この闘争で負傷し、命を落とすことさえある。 この習性を利用してサーカスでは人間を相手にボクシングをやらせている。誰でもそのカンガルーがしっかり調教されているのだろうと考えるが、ボクシングは元々彼らの習慣なので、サーカスで教えるのは恐るべき足蹴りを使わせないことだけだ。 たとえばこのアイリーンのように。 |
カンガルーの後足には4本の指があるが、そのうち3本は退化してしまっている。しかし残りの1本は長くて丈夫で、大きな蹴爪となりその先は曲がってカミソリのように鋭くなっている。体を尾で支え、胸元で拳を固め、やにわに後足で蹴りつける。この一撃で人や強いイヌを殺してしまうことさえある。仲間のボクシングでもこの蹴りを使うがもちろん手加減している。サーカスでもこの手加減を教えるのだ。 追いつめられたカンガルーが立木や岩を背にして立ち、身構えた時には大変危険である。両脚で蹴りを繰り出してくるが、この時鋭い爪が敵の体をえぐる。何頭もの猟犬が腹を蹴り破られている。 |
1948年11月11日、オーストラリア南部のアデレード動物園から Joey the Thug という名のボクシング・カンガルーが逃げ出した。捕まえようとした警官はあっさりとノックアウトされてしまった。Joey は3時間後に取り押さえられたという。
1934年12月、ロンドン動物園に1頭のカンガルーがやってきた。Aussie というこのカンガルーはそれまでの9年間、プロのボクサーだったという。しかし尾を痛めてしまったため引退を余儀なくされたのだった。戦績は不明だが。 1966年7月21日、サーカスでボクシングをやっていたフジというカンガルーがグローブを着けたまま逃げ出した。数台のパトカーと大勢の歩行者を引き連れて東京見物にでたカンガルーは最高時速65kmに達したという。いよいよ追いつめられたカンガルーは通行人3名をノックアウトしてしまい、駆けつけた警官が柔道の寝技で押さえ込んで取り押さえた(Wood, 1977)。 |
1957年7月、アメリカ・テネシーのメンフィスにあったサーカスでは、Katie という雌のカンガルーが食事の時に、不注意にもトラの檻のすぐ側に座っていた。そのためこのサーカス・カンガルーは尾を45cmも失う羽目になった。トレイナーは尾を手当てし、包帯を巻き、首に紐をかけて尾を吊り、それが床に当たらないようにした。おかげで彼女はまもなく回復した(Wood, 1972)。
1951年1月、雌のアカカンガルーが、追われている時に何度も大きくジャンプした。その中には12.8mに及ぶ長大な跳躍もあった。オオカンガルーには13.5mの幅跳びをしたものがあったといわれる(Walker,1968)。 もっとも通常カンガルーがおこなうジャンプは2mくらいである。カンガルーの跳躍は、他の動物が四肢で走るよりエネルギーの消耗が少ないといわれる。 高飛びは普通1.5mを超えることはない。しかし猟犬に追われていたアカカンガルーが積まれた材木(高さ3m、幅8m)を飛び越えたことがある(Troughton, 1965)。 動物園の雄のオオカンガルーが、車が急にバックした際、驚いたあまり高さ2.4mのフェンスを飛び越えたことがある。また犬に追われていた雌のオオカンガルーは高さ1.8m、幅12.2mの材木の山を飛び越えている。
1927年4月27日、シドニーでカンガルーと競走馬とのレースがおこなわれ、最高10mものジャンプを駆使して疾走したカンガルーが圧勝した。 |
オオカンガルーの雄は普通に佇んだ姿勢で高さ1.5mくらいあり、直立すると1.8m以上に達する。体重は普通60kgまで。雌はかなり小さく体重30kgを超えることはほとんどない。
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クロカンガルー Western Grey Kangaroo オーストラリア南部・南西部に棲む。大きな雄で体長1.2m、体重55kgくらいになる。 |