今の世界で最も背の高い動物であるキリンはサハラ砂漠以南のアフリカに分布し、なかでも木の葉模様を持つ亜種マサイキリン (ケニヤ、タンザニア産)が最も大きくなる。雄は肩の高さ3m、頭(角の先端)までだと5mになる。また体は細いが、体重も陸上ではゾウ、カバ、サイに次いで重く1トンくらいある
 20世紀初頭にケニヤで Caswell がしとめた巨大なキリンは高さが587cmもあった。体重は計量されていないが、推定1650kgといわれる(G. L. Wood, 1982)。
 1959〜1969年までイギリスのチェスター動物園に飼われていたジョージという名の雄(マサイキリン)は6歳の時に高さ5.5mに達し、翌年、成長が止まったときには角の先端が高さ6.1mの(キリン舎の)天井に届いた。(Mark Carwardine, 1995)

高さ(cm)場  所ハンター
579ケニヤHolwood
578南アフリカ。剥製がニューヨーク自然史博物館に展示されている。Henry Bryden
567モザンビークF. Vaughan Kirby
564ケニヤHall
549南西アフリカ。肩の高さ366cmCornwallis Harris
533南アフリカ。剥製がケープの Kaffrarian 博物館にある。
527ローデシアEdouard Foa
526ケニヤ。肩の高さ333cmPowell-Cotton
526ケニヤ。体長391cmKermit Roosevelt
523ケニヤ。体長406cmTheodore Roosevelt
518アンゴラ。肩の高さ295cmF. C. Selous

 雌は雄よりも小さく、高さ4.2m、体重550kgくらいである。最も背の高い記録は513cmで1917年に Henry Bryden がボツワナで射殺した。
 また飼育下では1934年にケニヤからイギリスの Whipsnade 動物園に到着した Rosie という雌で、約5.2mに達したといわれる。(Wood, 1982)


 キリンはこれまで単独の種(8〜9亜種)とされていたが、4つの明確な種に分かれているとの研究結果が発表された。キタキリン(西アフリカからスーダン)、ミナミキリン(アンゴラから南アフリカ)、アミメキリン(ソマリア、ケニヤ)、マサイキリン(東アフリカ)の4種である。異なる種間での遺伝的差異は、「少なくともホッキョクグマとヒグマとの差ぐらいある」としている。
 またキリンの生息数は過去30年で15万頭以上から10万頭以下に減っている。そのなかでもキタキリンは4750頭、アミメキリンは8700頭しか残っていないという(CNN)。
※ ac7059さんから知らせていただきました。

2頭の雌ライオンがキリンを仕留めたが、1頭が倒れてきたキリンの下敷きに…ライオンはキリンを襲う時にはその頚を狙う。そして咽に食いついて倒そうとする、この時にキリンの下敷になって死ぬことがある(Taylor, 1999)。

 キリンの主な敵はライオンである。ライオンはキリンの首を狙って飛びつき、強力な牙と爪を使って引き倒す。グッギィスベルク(1961)はケニヤで案内人にキリンの骨を見せられて、それが年老いたライオンに殺されたのだと聞いた。オードリー・ムーアはセレンゲティでは雄ライオンがキリンをよく襲うといっている。
 あるときライオンがキリンの群を攻撃した。逃げ足の遅い子供がいて、母親キリンが後ろを守って走った。ライオンが接近してくると、母親は子を脚の間に入れてライオンと向い合い、ライオンの動きに連れてキリンも回り、前脚で蹴りつけ、遂に追い払ってしまった。
 シャラー(1972)はライオンがキリンを狙うところを10回観察したがどれも成功しなかったそうだ。一度1頭の雌ライオンがキリンに突進したとき、キリンは後脚で立ち上がり、めちゃくちゃに蹴りつけたので、ライオンは引き下がった。しかしライオンに殺されたキリンの死体も5回見つけており、それらはいずれも尻に爪跡があり、喉を引き裂かれていた。

 南アフリカの野生動物保護区で、あるゲーム・ワーデン(監視員)はライオンがキリンを襲うところを見た。ライオンはキリンの背中へジャンプしたが、失敗して着地したところを両足で蹴られてあっさり死んでしまった。ライオンの肋骨はほとんどが折れていた。


 エトシャ国立公園でキリンを追う雌ライオン。成獣のキリンは単独の雌ライオンにとって−仲間の協力なしでは−難攻不落に近いが(Luke Hunter, 2005)。

 おとなのキリンにとってヒョウは警戒すべき相手ではない。しかしナイロビで雄のキリンが頭をもたげて木の枝を覗き込んだところ、そこで眠っていたヒョウがキリンの首に飛び掛った。そしてキリンが死ぬまで放さなかった(G. W. Frame, 1976)。


 大阪の天王寺動物園では、サバンナゾーンを設け、それまで個別に飼育されていたキリンやシマウマなどを一緒に飼育することで多様なサバンナの動物相を再現している。
 このサバンナゾーンで最も力が強いのは、意外にも一番大きなキリンではなくエランドだそうだ。平和的なキリンは争いを好まず、エランドに虐められることもあるという。また、シマウマは常に群がひとつになって行動し、キリンを追い回すことがあるそうだ。

 キリンは主に蹴りによってライオンに反撃するが、キリン同士の戦いでは首をぶつけ合うことが多い。クルーガー国立公園で観察された例では、首の一撃を受けた一方の雄が20分ほども気絶していたことがある。やはりクルーガーで死に至った例もあり、死んだ雄は第一頸骨が砕かれ、耳のすぐ後に角による穴があった(G. W. Frame, 1976)。

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