今からおよそ3億年前、古生代石炭紀、後に哺乳類の祖先となる哺乳類型爬虫類が出現した。時代が下がって二畳紀(ペルム紀)は南半球の氷河作用が石炭紀後期から持ち越された、冷たい時代だった。石炭紀の祖先によく似た多くの両生類はペルム紀にも生き残ったが、地上の主役の座はすでに爬虫類に譲られていた。適応力に優れた盤竜類ペリコサウルスは一層進化・発展し、その中から強力な肉食動物のディメトロドンが北アメリカに現れた。


 ディメトロドンは全長3.2m。頭骨は45cmくらいあり、鋭い歯がびっしりと並んでいた。この時代の最強の捕食者だった。ディメトロドンの大きな特徴は、背中に非常に大きな帆を立てていたことだ。背骨の突起が著しく伸びてそこを薄い皮膚が覆っていた。真ん中あたりの最も長い突起は1mほどもあった。ディメトロドンは変温動物だったが、この帆が体温調節の役目をはたしたと考えられている。

大阪市立自然史博物館

 ディメトロドンは毎朝、帆を太陽に向けて熱を吸収し、血液を暖め、それが体に循環して体温を上げていた。それからディメトロドンは獲物を探しに出かけたことだろう。そして体温を下げる時には、太陽を避けて帆を風に向けたと思われる。これよりずっと後、ジュラ紀のステゴサウルスや白亜紀のスピのサウルスも似たような働きをする帆を持っていたことは興味深い。

 ディメトロドンの体重は200kgと推定されるが体温を26度から32度に上昇させるのに1時間半ほどかかったと思われる。もしこの帆がなかったら倍以上の時間が必要だっただろう(Savage, 1988)。


 エダフォサウルスはディメトロドンと同じ時代、同じ地域に生息していたやはり哺乳類型の爬虫類で、全長4mに達したが頭はディメトロドンより比較的小さい。背にはやはり巨大な帆を立てているが、ディメトロドンのそれとは異なり、エダフォサウルスの帆には長い突起の1本1本に太いとげが幾つも付いていた。
 これはディメトロドンの攻撃を防ぐために発達したのかもしれない。というのもエダフォサウルスは恐ろしげな外観とは違って、歯の構造から植物食だったと考えられるからだ。そして胴が太く、脚が短く動きは遅かった。
 エダフォサウルスの帆は鮮やかな色をしていたかもしれない。外敵に対してだけでなく、同じエダフォサウルスにもディスプレイとしての働きもあっただろうという(Savage, 1988)。


 ディメトロドンの復元図を目を凝らして見つめてもどこが哺乳類的なのかはわからない。ディメトロドンやエダフォサウルスを含む盤竜類は一見したところ大きなトカゲとしかいえないからだ。その歯には−口の中での位置によって、歯の形や機能が異なるという−既に哺乳類的な特徴が現れているとされる。しかしそれよりも盤竜類の一部から獣形類という新しいグループが派生していることの意味が大きい。
 爬虫類の最も古いグループは石炭紀に出現したコティロサウルス類で、初めは肉食動物だったが、ペルム紀には草食性のものが現れた。一方ペリコサウルス類にも肉食型と草食型があり、ペルム紀後期には一般的になっていた獣形類 Therapsida を生じた(クルテン、1968)。

 獣形類は歯だけでなく、骨格も哺乳類的になり今のサイを想わせるような重厚なタイプも多く出現し、後には(中生代三畳紀)体毛を有していたのではと推察される種も現れた。

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