アンデスコンドル | Andean Condor |
全長:107−132cm | 翼開張:270−320cm | 体重:9−12kg |
コンドル類はアメリカ大陸に6種が棲んでいるが、このうち南アメリカ西部のアンデスコンドルは世界最大の猛禽類で、翼を左右に広げると3mを越すものがある。 アンデスでは平地から海抜4500mくらいまでの地域に棲む。ドイツの地理学者フンボルトはエクアドルの標高6000mの高山でこの鳥を観察している。一方ペルーからアルゼンチンに至る各地の海岸地帯にも棲んでいて、断崖絶壁に巣を作っている。 主に死んだ動物を食べているが、屍肉が得られないときはけがや病気で弱ったウシやウマ、あるいはそれらの子供を襲うこともある。このとき、鋭い嘴で傷つけ、そこをさらに激しくつついて傷口を広げるやり方で殺すといわれる。しかし嘴に較べ脚は余り強くないので、大型の動物をがっちりと抑えつけることはできない。 アンデスコンドルは、チリが独立する時、国鳥の候補に挙げられたが、死体を食べる習性と、攻撃にワシのような鋭さを欠くことから落選した。 英米ではコンドル科のうち、大型の2種(アンデスコンドルとカリフォルニアコンドル)だけを Condor、小型の4種を Vulture と呼んでいる。この Vulture は旧大陸のハゲワシの呼び名でもある。 |
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上の写真は Uchida さんから送っていただきました。
カリフォルニアコンドル California Condor これもしばしば世界最大の猛禽と称されるが、アンデスコンドルよりはやや小さい。全長115cm。一説に翼の開きが3.2mに達するといわれる。しかし現在残されている最大の標本は、カリフォルニア大学に保存されており翼開張が292cmである(Wood, 1982)。またロサンゼルスのカリフォルニア・アカデミーに保存されている3羽は翼開帳が287−291cmでその体重は12.3−14.1kgもあったと記録されている。 しかし Carl Koford (1953, The California Condor) はこれらの体重については疑いを抱いているようだ。 ハーバード大学比較動物学博物館には翼開張290cmの雌の標本がある。 合衆国西部の山地に生息していたが、現在では飼育下以外では、カリフォルニアの一部に見られるのみになってしまった。 |
1999年、カリフォルニア南部の民家に8羽のコンドルが侵入し、寝室を占拠する事件があった。その家の住人、84歳の Les Reid は冷静に、しかし厳格に、家から立ち去るよう鳥たちに命じた。コンドルは一列縦隊で出て行ったという。
1980年代に27羽まで数を減らしていたカリフォルニアコンドルを飼育下で給餌、増殖するプランが実行された。Reid 夫妻はコンドルの生息環境を守ることが大事であり、動物園で餌をやることは人に依存する鳥にしてしまうと、そのプランに反対していた。動物園関係者は、コンドルの頭を付けた人形を使って雛に餌をやり、人は姿を見せないように留意すると話したが、コンドルはそんなバカではないと Reid は断じていた。
はたして放鳥されたコンドルは野生の生態には戻らず、民家の屋根やベランダに止まっている姿が何度も目撃されるようになった。人の臭いがすれば、そこには餌があることを彼らは覚えてしまったからだ(Natural History)。
カリフォルニアコンドル(若鳥)がイヌワシをシカの死体から追い払う。イヌワシに比べるとかなり大きいのがよくわかる→ 足指の力はイヌワシの方が勝るはずだが、イヌワシが翼開張2.1m、体重5kgくらいであるのに比べ、カリフォルニアコンドルは2.7m、9kgほどもある。体力で圧倒できるのだろう。 ※ ホワイトファングさんから知らせていただきました。 |
コンドル類は昔は世界中で見られたようでヨーロッパや北アメリカで多数の化石が発見されている。 およそ1万−100万年前、カリフォルニアにすんでいたテラトルニス・コンドル Teratornis merriami は最もよく知られている種で100個体以上の化石が見つかっている。翼の開きが3.6−4.2mに達していた。 ロサンゼルスの有名な Rancho La Brea タール坑で多数の化石が知られている。ここからはカリフォルニア・コンドルも見つかっている。 |
テラトルニスはタール沼の陥穽に落ちた動物の腐肉臭が上昇気流に乗ってきたのを捉え、一気に降下して沼の屍に舞い降り食べようとしたところ、自らもタールの落とし穴にはまったと思われる。 テラトルニスに近縁でもっと大型の Aiolornis incredibilis は少し古い時代にネバダやカリフォルニアに生息していた。化石はテラトルニスよりずっと少ないが翼や嘴の骨からさらに大きかったと考えられ、翼の開きが5mに達したと推定されている。 |
1979年、アルゼンチンのおよそ800万年前の地層から非常に大きなコンドル類と思われる鳥アルゲンタビス Argentavis magnificens の化石が発見された。高さ1.5m、両翼の開きは6−7.5mもあったと推定されている。 これほどの大きな鳥になると、理想的な環境でしか生きることができなかっただろう。多くの餌が必要であるし、滑空のためにも気象条件が重要であったはずである。しかも推定体重は80kg(一説では120kg)と言われているが、これは羽ばたいて空を飛ぶことができる限界をはるかに超えており、いったいどのようにして飛翔したのかまだよくわからない。おそらくは滑空がほとんどで、必要な時にだけ羽ばたいていたと考えられている(Carwardine, 1995)。 |
英科学誌『ニュー・サイエンティスト(New Scientist)』によると、翼竜(プテロサウルス)が、実は飛べなかったとする仮説が登場して一時話題となった。この説を発表したのは、東京大学の佐藤克文氏で、羽ばたきの早さは筋力によって制限され、翼の長く体重が重い鳥ほど早く羽ばたくことができないという。佐藤氏は、体重40kg以上の鳥は風速ゼロの環境下では離陸するのに十分なだけの羽ばたきができないと試算した(AFPBB)。アルゲンタヴィスや最大の翼竜・ケツァルコアトルス(推定100kg前後)はこの試算を当てはめれば飛べなかったことになる。
これには当然ながら反論も現れた。イギリス・レスター大学の古生物学者デービン・アンウィン氏は「見つかっている大型翼竜の化石は皆、並外れて骨壁が薄かったと推定されている。サイズのわりに体重の軽い生物だった可能性もある」(NationalGeographic)。
※ Yamada さんから知らせていただきました。
単純には比較できないが、鳥人間コンテストというものがある。動力源に人間の筋肉のみを用いて飛ぶ人力飛行による競技である。機体や操縦者の重さは定かでないが併せて90kg以上あるだろう。それでも1998年に約4時間も飛行した記録がある(人力飛行機)。アルゲンタヴィスの飛行を想像する上で参考になるかもしれない。
※ アルゲンタヴィス(あるいはケツァルコアトルス)の体重を読者が推定する際に、人力飛行が参考になるかもしれないと、上田さんから提案されました。