新大陸のコンドルに対し、ハゲワシは旧大陸に棲む。共に腐肉をあさって生活する「掃除屋」で、よく似た生態をしているが類縁関係はなく、コンドルはペリカンやウなどの全蹼類と古いつながりがあるといわれる。一方ハゲワシはもっとワシ・タカに近い。
クロハゲワシは他のハゲワシのようには群生せず、1対から数羽でくらしている。また普通、渡りはしない鳥だが、冬にはスーダンやインド北部に移動するものもある。稀に日本にも飛来することがあり北海道から沖縄までの各地で見つかっている。負傷したものが飛来して動物園で保護されていた例もあった(佐世保市いしだけ動植物園)。 今では生息数は4000羽以下と見積もられている。動物の死骸を見つけるのが難しくなったのが大きな原因だという(Living Desert)。 2000年3月、石垣島で目撃されたクロハゲワシ(真南風)→ |
シロエリハゲワシ Griffon Vulture 南ヨーロッパから北アフリカ、インドまで分布。全長95−105cm。死骸の横腹を嘴で裂き内臓を食べる。まだ新しい死体の皮は固いのでクロハゲワシが穴をあけるまで待つ。 |
ヒマラヤハゲワシ Himalayan Griffon クロハゲワシに劣らず大きいのが、中央アジアの山岳地帯に棲むヒマラヤハゲワシで、広大な翼を持ち、その開張306cmの記録がある。全長100−120cm、体重8−12kg。チベットの鳥葬で人の死体に群がるのはこのハゲワシ。 |
ハゲワシが死骸を食べ尽くす速さには驚くべきものだ。セレンゲティで40羽程が成獣のハーテビースト(カモシカ、体重約160kg)に群がり、シャッシャッという不気味な音をたてて、15分ほどで骨と皮だけにしてしまった。これなら、ライオンが食事中に水を飲みに行くなどで離れれば、その間に残りは食べ尽くされてしまうだろう(小原、1990)。
普通ハゲワシは日が上ってから行動するが、時には月明りで食事をすることもある。また、ハイエナやジャッカルがいると彼らが食べ終わるまで待たされるのが普通だ。しかしハゲワシの数が多いとジャッカルなどは閉め出されてしまうこともある。
ジャッカルがトラの食べ残しのスイギュウをあさっているとき、一羽の大きな鳥が舞い降りて、さらに数羽が加わると、死体の方へ向かって堂々と行進し、ジャッカルを追い払ってしまった。ジャッカルは何度か割り込みを試みるがそのたびに鋭い爪で攻撃され引き下がるのだった。 後から後から鳥が来て、42羽迄数えることができたが、あるものは死体の中に入り込んでいるので、一度に全部を数えることは出来なかった。鳥たちは肉を呑み込んでは、金切り声を上げていたが、一方ジャッカルはどうすることもできずただ眺めていた。ベンガルハゲワシ(全長90cm)は肉を咬み切るという動作は出来ないので、その食事の方法は、引き裂き、後退しながら引っ張ってちぎるということになる。(サンカラ、1977)。 |
ある朝、一斉に同じ方角に向かっているハゲワシが、次第に多くなってくるのが目に止まった。すぐに50−60羽が上空で輪を描いていた。そしてハゲワシが群がっている場所を発見したのだった。約200羽の鳥がその辺りの木や草に止まっていた。 次々とハゲワシがやってきて、地上にいる連中はゆっくりと臓物の山に近付いて行った。とうとう一切の用心を押し退け、彼らはぎこちなくぴょんと前に出て、その内臓を巡って争い始めた。すると1頭の雌ライオンがブッシュからハゲワシの群めがけて真っ直ぐに突進した。この大型の鳥たちは大きくはばたいて、急いで散った。 セジロハゲワシ、ズキンハゲワシ、シロガシラハゲワシの飛び入り勝手な獲物を巡る乱闘は、全く壮観である。ぞっとはするが、それにもかかわらず魅了される。たいていは数羽のハゲコウがその饗宴に加わり、遂にミミヒダハゲワシの1羽がその乱闘のまん中に下り、戦っている鳥たちをけ散らして、最上の部分を選び取ってしまった(グッキイスベルク、1961)。 ミミヒダハゲワシ Lappet-faced Vulture 全長95−105cm、翼開張260−280cm、体重7−11.5kg 単独、または家族で見られる大型のハゲワシ。アフリカの他の鳥たちより優先して死骸を漁る。大きな嘴で死体を引き裂くが、これにより他の力の弱い鳥にも食べやすくなる。クロハゲワシとシロエリハゲワシの関係に似ている。 |
タンザニアのセレンゲティ国立公園では、多い時には6種のハゲワシが同じ死骸に群がっていることがある(George W. Frame, 1976)。オランダの動物学者、ハンス・クルークによればミミヒダハゲワシとシロガシラハゲワシ White-headed Vulture(全長80cm)はたいてい死体の最も固い部分を引き裂いている。一方、コシジロハゲワシとマダラハゲワシは死体の柔らかい部分を引っ張り出して食べている。そしてエジプトハゲワシとズキンハゲワシは残りをつついていることが多い。
ミミヒダハゲワシとシロガシラハゲワシは生きた動物を捕食することもある。クルークはミミヒダハゲワシが自分でしとめたらしいトムソンガゼルを食べているところを2度見ている。彼はまた2羽のシロガシラハゲワシが殺されたばかりのオオミミギツネを食べているのも見たことがある。