世界最大のサカナ

 1919年、非常に大きなジンベイザメ Whale Shark がタイのシャム湾に設けられた仕掛網に入り込んで閉じ込められ、7日後に射殺されたが残念ながら死体を引き上げることができなかった。目撃者達の推定ではそのサメは長さ17−20mもあったという(Hugh M. Smith, 1925)。このような少しは確実性のある大物の目撃例は他にもいくつか知られている。



長さ(m)場 所備  考
16.2南アフリカ(1934)ケープの海岸に打ち上げられたといわれる。
約17南太平洋(1934)航海中の定期船が衝突して串刺しにしてしまった。
約17大西洋(1905)航海中の定期船が衝突して串刺しにしてしまった。
約20カリフォルニア湾(1926)船に乗っていた釣客が目撃、船の底に仕掛けられた水中カメラにも映っていた。
20プエルトリコ(1906)サンフアン港近くに入り込み7年間住みついた後死んで岸に打ち上げられた。

 水面下にいるジンベイザメの大きさを推定するのは難しいことだし、たいてい過大な見積もりになりがちである。一方、学者や研究者らによって正確に測定された記録は非常に少ない。
 今のところ、公認記録とされているのは、1949年11月にパキスタンのカラチ南岸にある Baba 島で捕獲された長さ12.7mの個体である。胴の最も太い部分で周囲7mあり、体重は推定で15−21t。



2012年2月、やはりパキスタンで12.5mもあるジンベイザメが捕獲されている(iltasanomat.fi)。※ 田鹿さんから知らせていただきました。

 ところでジンベイザメの名前の由来を御存知の方はいらっしゃるだろうか? いかにも風体にあった名前だと思うのだが。また昔は漁民の間ではエビスザメと呼ばれていたそうだ。こちらも似つかわしい名前だ。

 ジンベイザメの名前の由来については、何人かの方からお知らせいただきました。着物のじんべえの柄から来ているとのことでした。どうもありがとうございます。私はまた漁師の名前からではと思っていました。

長さ(m)場 所備  考
13.7セーシェル(1868)アイルランドの自然観察家パーシバル・ライトによる。
約12ノース・カロライナ(1934)
11.6フロリダ(1912)胴回り5.5m、推定体重12トン。
11.3バハマ(1958)推定体重15トン。
11フィリピン・ネグロス島(1925)
10.4キューバ(1930)
10.4スリランカ(1889)剥製が大英博物館に展示されている。
10ルソン島(1925)
10日本・犬吠崎(1901)剥製は長さ8m、胴回り4.3m。
9.8キューバ(1927)体重は解体後の計量で8トン。
9.8アラビア海(1959)
9.6フロリダ(1923)胴回り7m。
9.2ニューサウスウェールズ(1964)推定体重7トン。



2009年1月、マレーシア・ペナン州の Teluk Bahang という漁村にジンベイザメ(6.8m)の死骸が引き上げられた。このジンベエザメは沖合いで魚網に絡み、漁師らが救出しようとしたが、重過ぎて助けることができなかった(ロイター)。

 ジンベイザメは成長すると長さ10m、体重9tくらいになるのが普通である(Wood, 1982)が、最近目撃される個体の平均的なサイズはこれをかなり下回っているようだ。オーストラリア海洋科学研究所の Mark Meekan によれば、過去10年間で目撃されるジンベイザメの平均全長は7mから5mに下がった。ジンベイザメが性的に成熟するのが6−7mであることからすればこれは気になることだと(BBC)。


 西オーストラリア大学で数十年分のデータを見直したところ、1990年代中ごろに発見された最大の個体は全長13mだったのに対し、2000年代初めには10m、2011年には8mと、年を経るごとに小さくなっている。
 最大サイズだけでなく、平均サイズも小さくなっていた。最近では平均が僅か6mだった。つまり、大半は子供だ(ナショナル・ジオグラフィック)。

 2009年9月14日、富山県氷見市の氷見漁港に約6mのジンベイザメが迷い込んだ。17日になって氷見漁協職員が乗った漁船3隻がジンベエザメを漁港外へ誘導し、ようやく防波堤の外に出た。同漁協によると、ジンベエザメは漁港内に餌が少ないため、やや弱っていたとみられ、無事解放に漁業関係者もほっとした表情をみせた。
 9月17日は朝から、大勢の見物客が訪れたため、同漁協は事故が起きる危険性を心配し、サメを漁港の外に出すことにした。魚津水族館などのアドバイスを参考に、漁船から鉄パイプをたたいてサメが嫌がる金属音を発生させ、誘導する方法で40分以上かけて沖合まで出した。
 ジンベエザメはこの日、氷見漁港南側から同北側の氷見フィッシャーマンズワーフ海鮮館付近まで移動していた。再び漁港内に迷い込むことを懸念し、職員らが約30分間、入り口付近で待機したが、ジンベエザメは姿を見せなかったという。氷見漁協の廣瀬達之参事は「ジンベエザメは漁業者の間で、魚を連れてくる縁起のいい魚と言われており、無事に港の外に出てくれて良かった」と話した(富山新聞)。
※ ac7059さんから知らせていただきました。

 ジンベイザメは全ての動物の中でも最もぶ厚い皮膚をもっている。長さ9mの個体で皮膚の厚さは10cmもあり、まるでトラックのタイヤのように頑丈である。さらに加えて筋肉の収縮力も強く、ジンベイザメに銛を打ち込んでもサメが筋肉に力を込めると銛がはじき出されてしまうという。
 この堅牢さ故にジンベイザメには天敵となりうる動物は存在しないと考えられる。1970年代の初頭、紅海北東のアカバ湾岸にジンベイザメ(かなり大きな個体と思われる)の尾鰭が流れ着いた。それは鋭い刃物で切られたように見えたが、はっきりとした歯形が確認できた。
 失血によりジンベイザメを死に追いやった主はシャチ以外にはあり得ないが、そこまでは確認できなかった(Wood, 1982)。


HOME