寒帯のマンモス

 最も有名な古代獣といえばおそらくマンモスだろう。マンモスには何種類かあるが、単にマンモスといえば更新世後期(1〜30万年前)の毛深いウーリーマンモス Mammuthus primigenius を指す。北ヨーロッパからシベリア、そして後には北アメリカにまで分布を広げた。シベリア北部からは冷凍になった死骸が40体以上も発見されていっそう有名になった。

 最も保存状態の良好なマンモスの遺体は、1907年にロシア北部・タイミル半島で発見された。雌で鼻の一部がキツネかオオカミに食べられていた他は、暗い褐色の毛で覆われた全身が残っていた。肉も脂肪も、胃の内容物まで残っていた。
 これより少し前、1901年にもシベリア東部・コリマ川支流のベレゾフカ川で完全に近い保存状態の冷凍死体が見つかっている(Beresovka Mammoth)。こちらはまだ若い雄で、肩高約2.7m。鼻はオオカミに食べられたらしく失われていた。
 シベリア北東部・シャンドリン川で見つかったマンモスの胃と腸から見つかった植物は乾燥した状態で250kg以上もあった(ヴェレシチャーギン、1979)。

 2015年、札幌に元北海道開拓記念館の建物を活用した新たな北海道博物館がオープンした。1階のエントランスには、ウーリーマンモスとナウマンゾウの全身復元骨格が向かい合って展示されている。両者が同時期に北海道に生息していたかどうかは微妙なところだが。
 2014年に北海道博物館らとの共同研究によって約45000年前の北広島市周辺でケナガマンモスとナウマンゾウが共存していた可能性が明らかになる(北広島マンモス復活プロジェクト)。
 あり得ないとされてきた、マンモスとナウマンゾウの化石が、同じ地層から発見された。この2種のゾウの化石は北海道でも見つかっていることから『北海道でこの2頭のゾウが同じ時期に存在していた可能性がある』という(北海道博物館 The PAGE)。

 ウーリーマンモスは最大のもので肩高3.5m、体重6トンに達した(ヴェレシチャーギン、1979)。

 北海道の釧路市立博物館にはロシアで見つかった全身骨格のレプリカが展示されている。肩高2.9m、体長(頭胴長)3.5mで、ウーリーマンモスとしては平均的な体格だろう。牙の長さは2.5mある。



ウーリーマンモスの最初の組立骨格はレニングラードの St. Petersburg 博物館にあり、Adams Mammoth と呼ばれている。1799年にシベリア北部のレナ川河口付近で36000年ほど前の地層から発掘された。推定45歳の雄で肩高3m、大きく湾曲した牙も長さ3m。

 寒帯の毛深いマンモスは現在のゾウと同じくらいの大きさだったが、よく知られているように牙はもっと大きかった。
 レニングラードの博物館に展示されているウーリーマンモスの大きな牙(1対)は長さ420cm(重さ83kg)と396cm(75kg)ある。
 またヴェレシチャーギン(1979)がラプテフ海峡で切り取った牙は長さ380cm、重さ85kgあった。この牙の根元近くの直径は18cmだった。
 チェコ・Brno のFranzens 博物館には長さ502cmの牙があるという(Wood, 1972)。

 雌の牙は雄のものより細く、ほぼ真っ直ぐである。ノボシビルスク諸島から出土した18−20歳の雌の牙で長さ120cm、根元の直径6cmだった。


 世界最大級のシベリアマンモスとか。地面から肩までの高さ4.3m、頭頂まで4.7m。地面から足底までの分を差し引いても、ウーリーマンモスとしてはかなり大きい方だろう(MasterFossil)。



こちらもウーリーマンモスの最大級の標本と称され、高さ3.5mもある。

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