ワタリアホウドリWandering Albatross

 世界で最も長大な翼を持つ鳥は、南極圏の島々で繁殖するワタリアホウドリで両翼を左右に拡げた時の幅(翼開張)が3mに達する。
 南極周辺の各大洋を5000kmに及ぶ渡りをするが北半球に来ることは滅多にない。しかし1970年に尖閣列島で2羽が発見されたことがある(原色日本鳥類図鑑、保育社)。

 特に大きな記録としては
363cm−1965年9月、タスマン海で捕獲された。この鳥は全身ほとんど白色で、かなりの高齢だった(Guinness Book,1997)。
361cm−1957年頃、オーストラリア西部(Wood, 1977)
351cm−1930年7月、オーストラリア西部(Wood, 1977)
345cm−サウス・ジョージア(Murphy, 1936)
 などが挙げられる。

 もっと時代を遡るとさらに大きな鳥がいたようだ。19世紀には翼開張3.7−4mもある個体が何羽か記録されている。
 また未確認情報としては422cmもあったのがいた。これは1929年4月にインド洋を航海中の船がナットをくくりつけたロープを投げて生け捕りにしたのだが、乗組員の一人が誤ってライフルで射殺してしまったため、後の非難を恐れて航海日誌に記録されなかったという(wood, 1982)。

 ワタリアホウドリの体重については、Tickell(1968)がサウス・ジョージアで16kgの計測をしている。この鳥は島を飛び立つ直前で、長い渡りに備えてかなりの脂肪を蓄えていた。
 Gibson & Sefton(1960)が1959年8月にニューサウスウェールズで計量した108羽の体重は5.9−11.3kg(平均8.2kg)で、これらの翼開張は272−323cm(平均299cm)だった。
 古いところでは、Scouler(1826)が翼開張3.7mで8.2kg、Mullenhoff(1885)が翼開張4mのもので12.7kgあったと報告している。

 ワタリアホウドリは時に人を襲うことがあるといわれる。通常は海面近くを飛びながら魚類やイカを捕らえるが、よく航海中の船に近づき船から投げ捨てられる残飯をあさる。そして水面に人がいればその20cmもある嘴で攻撃することがある。
 第一次大戦中、フォークランド海戦でイギリス軍がドイツの巡洋艦を撃沈したことがあった。その直後、イギリス軍が冷たい海に投げ出されたドイツ兵を拾い上げようと船を近づけたとき、数羽のアホウドリが悲運のドイツ兵を襲っているのを目撃した。

 ニュージーランドの海岸やその付近の島々で繁殖するシロアホウドリ Royal Albatross(左)も非常に長大な翼を持っている。
 Carwardine(1995)は翼開張3−3.5mに達すると述べているが、具体的な測定例には触れていない。Murphy(1936)は控えめで3mを越えることはないだろうと言う。

 日本の鳥島(伊豆諸島)では
アホウドリ Short_tailed Albatross(下)が繁殖している。かつては大量に生息していたが、羽毛を採るために乱獲され一時絶滅に瀕した。アホウドリの名はごく簡単に捕獲されたところから来ている。
 現在では特別天然記念物に指定され、厳重に保護されている。南半球の2種ほど大きくはないが、それでも翼開張2.3mになり日本産鳥類としてはオオハクチョウと1、2を争う。


 日本のアホウドリは、元々から鳥島や小笠原、尖閣列島などの限られた島に生息していた。羽毛採集のため多数が殺されていた上、太平洋戦争のためにほとんど絶滅したと考えられていた。1955年頃にごく少数が鳥島で繁殖していることが確認され、特別天然記念物に指定された。
 当初、30羽ほどが残存するのみと伝えられていたアホウドリは、1994年には約450羽に増えている。1999年には1000羽を超え順調に増えているのがわかる。そして2008年春の巣立ち後には尖閣諸島で繁殖しているものを加えると2500羽を回復する見込みであるという(読売新聞)。

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