ハイイロペリカン
ペリカンというと南国、熱帯の鳥のイメージがあるから、もし日本で見かけたら最初は驚くだろう。それからきっと動物園から逃げ出してきたのだろうと考えるに違いない。確かにそんな例も幾つかあるが、大陸から渡ってきたものもいるのだ。 |
Dalmatian Pelican ハイイロペリカンは全長160−180cmもある大きな水鳥で、翼を左右に拡げると2.5m以上になる。最大の記録は確かなところで309cm、一説では345cmに達する。見ての通り肥大した体型で体重も10−13kgほどある(体重については K.WEDA さんから教えていただきました)。 ヨーロッパ東部から中国にかけての温帯地域で繁殖し、冬はエジプトからインドに至る南方に渡る。それをどう迷ったのか日本にまでやってくるものが(希にではあるが)いるわけだ。 本州と九州で何度か目撃例があり、最近では1998年から99年にかけての冬に茨城県や静岡県で見つかっている。また2000年1月には八重山諸島の与那国島に現れた。 2005年にも熊本市の中心部に近い江津湖で、5月末から1羽のペリカンが羽を休めたり餌をとったりしている姿が目撃されている。ハイイロペリカンかどうか確認はされていないが。 |
モモイロペリカン
Great White Pelican ヨーロッパ東部ではもう1種のペリカンも繁殖している。そして冬にはアフリカやインドまで移動する。そしてこの鳥もまた日本にやってくることがある。最近では南西諸島で何度か観察されている。北海道や本州でも見つかっているがこれらは動物園からのかご抜けのようだ。 宇部公園で飼われていたいたモモイロペリカンが近所にある幼稚園を訪問したニュースをテレビで見たのはいつだったか、もう思い出せないがそんなに前のことではなかった。 これら2種のペリカンはユーラシアでは分布域が重なっており、外見も結構似ている。どちらも白っぽい体で、下嘴は黄色い。目の周辺にピンク色の部分がはっきりしているのが、モモイロペリカンの特徴だといえる。ほぼ同大で全長135−175cm、翼の開張は240−315cm、未確認記録では3.6mに達する。 |
モモイロペリカンや北米のアメリカシロペリカン American White Pelican は魚を捕る時に水中には潜らない。魚の群を見つけると、水面に降りてきて、魚群の後に一列で半円に並び、翼を半開きにして岸に向かい、次第に円陣を縮めながら魚を岸の方へ追い立てる。魚が反対方向に逃げようとすると、ペリカンは翼で水をかき混ぜ泡立てて魚を脅す。こうして追われた魚が浅瀬に集まると、ペリカンは嘴の袋を水中に入れて魚をすくい取る。 アメリカシロペリカン 全長125−150cm → |
北アメリカのカッショクペリカン Brown Pelican は1列に飛翔して次々に海中に突入してダイナミックに魚を捕る。 カッショクペリカンのダイビングはかなり荒っぽいものらしい。水音はゆうに半マイル(800m)先まで届く。水面とぶつかる時の衝撃はたいへんなもので、魚が気絶してしまうほどであるという。それほどの衝撃を自分自身も受けるわけだが、羽の下に空気のポケットが作られて、それが緩衝クッションの役割を果たす(アニマルライフ154)。 |
ペリカンはすべての鳥類中、最も大きな嘴を持っている。ハイイロペリカンの嘴は36−45cmもある。下の嘴には大きな袋があってここに魚を納めることはよく知られているが、生きた魚をこの袋に入れて雛のもとに運ぶのではないらしい。 魚が1匹しかいなかったら、すぐに呑みこんでしまう。魚群がひしめいていると袋で網のようにすくって海水ごと魚を捕る。口を閉じる時に水がこぼれて魚が袋の中に残る。漁が好調の時は袋がぱんぱんに膨らむまでとり続ける。 この後、ペリカンは魚を呑みこんでしまい、雛のもとに帰ってから袋に吐き戻す。雛は袋に頭を突っ込んでそれを食べる。 カッショクペリカン 全長115cm → |
アメリカの海岸ではカッショクペリカンが釣り人から直接魚をもらって食べているところを見かけることがよくあるといわれる。実際にペリカンが餌をせがんでいるらしい。ジョージ・S・フィッシャー(1966)の友人たちも、自分のために餌を用意してくれているとでも思ったらしいペリカンにせがまれて、食べられるだけ食べさせてやろうという気になった。
ペリカンは魚を1尾、また1尾と片づけていき、ついには魚のしっぽが嘴からはみ出すほどに詰め込んだ。あまりに詰め込んだので、歩こうとすると転んでしまった。彼らはペリカンを起こしてやらねばならなかった。
腹一杯のペリカンは、2、3分ごとにごくりとのみ下し、魚は少しずつ喉を下がっていった。それから体を上下に揺さぶって食道の中のものを、もっと楽な位置に落ち着かせた。これを30分もやったあげく、15分間も寝ていたが、目覚めるとまた魚をねだり始めたという(リーダーズダイジェスト)。