ホッキョクグマ Polar Bear は最大の陸生肉食獣で、クマの中でも最も大きい。成長した雄は体長2.5m、体重500kgくらいになる。時にはその倍もあるものさえいる。

 1960年、米人ハンター Arthur Dubs がアラスカ北西部の Kotzebue 海峡の近くで撃ちとめたものは体重1002kgもあった。1962年のシアトル世界博覧会で高さ339cmもある剥製()が公開され、現在はアンカレジ空港に展示されている。Web 上では高さ3.7mと書かれているのをよく見かけるがいつの間に伸びたのだろう?
 またこのクマの全長は343cmといわれるが、クマの全長は背曲線に沿って測定されることが多く、特にホッキョクグマは首が比較的長いので、数字のバランスはこんなものかもしれない。
 フランクフルト動物園の Bernhard Grzimek 博士はシベリア北極圏にはときに1トンに達するものが現れると言っている。
 ロシアの動物学者 Ognev もシベリア北部のタイミル半島で撃ちとめられた老獣は胸囲が2.7mもあり、200kg近くの脂肪が採取されたことから体重が1トン近くあっただろうと述べている。
 アメリカのハンターで長年 Outdoor Life 誌の編集も手掛けた Ben East は1937年、ハドソン湾の沿岸で非常に大きなホッキョクグマを撃っている。体重を量ることはとてもできなかったが全長3.2m、首回りが1.3mもあった。

 ホッキョクグマは体の割に頭が小さめで、最大の頭骨は長さ470mm、幅が290mmである(1963年、Kotzebue 海峡)。上の Arthur Dubs の1トングマは解体作業中に誤って頭骨を壊してしまったため測定できなかったそうだ。

体重(kg)全長(cm)場 所備 考
820(推定)310アラスカ西部(1957)アメリカのハンター、Tom Bolock が射殺した。
820(推定)335(毛皮)バフィンランドフランス系カナダ人、Andre' Tremblay が射殺した。肩高137cm。
807カナダ北西州Wildlife Management Agency による
800ノルウェー(1995)オスロ Zoologisk museum、Professor Wiig による
784+(解体後の計量)剥製がフィラデルフィアの Carnegie 博物館に展示されている
725261カナダ北西州(1821)肩の高さ145cm、胴回り241cm
703カナダ・マニトバWildlife Management Agency による
694バフィンランド(1995)生け捕られた254頭の中で最大(Nunatsiaq News
680305アラスカ西部(1965)Robert E. Peterson が撃った。
658カナダ・マニトバ(1970)生態研究のため麻酔銃で捕獲して計量
654ハドソン湾生け捕られた94頭の中で最大(平均は489kg)(polarbearsinternational.org
650(推定)376(毛皮)フランツ・ヨシファ島(1931)

 ネバダの Elko にあるカジノ、そこのコーヒーショップには巨大なホッキョクグマの剥製が展示されている。高さ315cm。このカジノに体重1tもあったという White King が到着したのは、1957年にアラスカ北極圏でおこなわれた狩の成果だった。このクマをしとめたのはエスキモーのハンターだったが、翌年、カジノの当時のオーナー、Red Ellis はコロラドの Jonas Brothers から剥製を購入した(Commercial Casino

 理由は良くわからないが、動物園で飼育されたホッキョクグマはあまり大きくならないようで、以下の2例しか見出すことができなかった。これらもおとなの雄としては並の体重でしかない。
 488kg カナダ、カルガリー動物園(1970)
 467kg ニューヨーク動物園(1960)
 1965年11月に Dudley 動物園で死んだハロルドという名の雄は体長2.7m、体重約500kgあったといわれる。

 1936年2月、ワシントンの国立動物園で死んだ(雄のホッキョクグマと雌のアラスカヒグマの)混血のクマは体重526kgだった。いったいどんなクマだったのか、写真でも残っていれば…。
 ホッキョクグマとハイイログマのしかも野生下での混血の存在が2006年に確認されている。外見はホッキョクグマに近いか

 ホッキョクグマがヒグマにごく近縁であることは雑種が生まれることでも明らかだが、一方でホッキョクグマはクジラのような海棲の哺乳類に進化しつつあるとされる。
 ペンシルバニア州立大学の Martin Schein 教授によればホッキョクグマは泳ぐ時に、他の陸棲の哺乳類のような後足でのキック(バタ足)はおこなわず、クジラが尾鰭を梶のように使うのと同様に足を使う(ドルフィンキック)という。
 Schein 博士はまた進化は膨大な時を要するとも付け加えた。ホッキョクグマがクジラやイルカのような海獣になるには何百万年もかかるだろうと(United Press International)。


 プエルトリコのサーカスで飼われていた2頭のホッキョクグマ(18歳と16歳、体重およそ800ポンド=約360kg)は Point Defiance Zoo & Aquarium に引き取られて1年後に、それぞれ417kgと458kgになった。2頭はサーカスではグレープやレタス、ドッグフードなどを与えられていたが、動物園に来てから生の肉や魚、肝油などより肉食動物にふさわしい餌に切り替えられた。さらに自由に泳ぎ回れる広い海水プールが彼らの筋肉の発達を促したという(Seattle Times, 2001)。

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