イギリスのハンターでロンドン動物学会会員でもあった Danbur Brander はインド中部で、自分や他のハンターが射殺した約200頭のトラの測定に立ち会っている()。

性 別体重(平均)全長(平均)
160−232kg(190kg) 267−312cm(282cm)
  −156kg(132kg) 239−277cm(254cm)
 これらのトラの体重が全て計量されているわけではない。そのうちで最も大きかったのは彼自身がインド中部で撃ちとめた雄だがこれも体重は計られていない。そこで錘にした人の頭数からおよそ600ポンド(272kg)と推定している。
 全長302cm(尾は81cm)、肩高109cm、胴囲149cmあった。

 優れたハンターとして定評のあったインド北部 Cooch Behar のマハラジャは1871−1907年に365頭のトラを撃ち、その最大のものは推定で600ポンド近くという。このトラは彼のコレクションの中では群を抜いて大きい− by far the biggest −と記されている。全長309cm(尾は91cm)、肩高114cm、胴囲137cm。
 彼は(全長の順に)大きい方から30頭をリストアップしている。その内計量されている26頭の平均は219kg(191−248kg)である。また最大の雌は体重163kg。

 イギリスの John Prescott Hewett 卿はインド北部・テライで250頭のトラを撃っている。このうち何頭が計量されたのかは不明だが、最大の雄は体重258kg(全長293cm)、雌は157kg(269cm)。

 インドではしばしばウシ殺しと呼ばれるトラが出現する。常習的に家畜のウシを襲い、脂肪を付けて肥満したトラである。Khan Seheb Jamshed Butt(1963)は特に太ったウシ殺しには800ポンド(363kg)に達するものがあると述べていた。

 1967年11月、アメリカ・フィラデルフィアのハンター、David Hasinger はインド北部 Uttar Pradesh で非常に大きなトラを撃っている。全長323cm(338cm−along the curves)、体重なんと389kg。スミソニアンの H. W. Setzer によればこのトラは前夜にスイギュウを殺している。胃内容については記録されていないが、成獣の雄トラだと一晩に30−40kgも食べるので、並の倍も重いこのトラがどれくらい食べていたのかはかなり重要だろう。
 前肢を伸ばし、今にも跳びかからんばかりの姿勢をした剥製がワシントンのスミソニアン国立博物館に展示されている。しかしスミソニアンでこの剥製を見た印象は、スマートに作られているようであり、尾も長く、百貫虎の威容はとても感じられなかった。

スミソニアン博物館 

体重(kg)全長(cm)場 所ハンター
320ネパールE. A. Smythies
318304(尾は94)インド中部M. D. Goring-Jones 頭骨全長361mm
292320インド北部E. H. Morbey
288328(尾は102)ネパールThe Maharajah of Nepal
276310(尾は100)Gwaliorthe Kumar of Bikaner 肩高107cm
241311(尾は98)インド北部The Maharajah of Cooch Behar 肩高100cm

 インド亜大陸に棲むトラをベンガルトラ(インドトラ)と呼ぶが、なかでもインド北部からネパールにかけての山地に棲むトラは、インド中部や半島、沿岸部のトラに較べて大型である。かつての大記録の多くがこれらの地域から出ている。

 1969年に禁猟となって以来、当然ながらトラの狩猟記録はほとんどないが、これらの地域にはまだ過去の大物に匹敵する個体が存在する。
 David Smith や Mel Sunquist(1983)がネパールの Royal Chitawan 国立公園で計量したものは:
 雄(7)が200−261kg(平均235kg)
 雌(19)が116−164kg(平均140kg)だった。
 インド南部 Nagarahole 国立公園産の雄3頭は:
 体長189−204cm、尾長100−107cm、体重209−227kg。雌1頭は体長161cm、尾長87cmで体重は177kgもあった(Karanth, 1993)。
 R. C. Morris がインド南部で測定した雄6頭は:
 全長264−287cm。このうち1頭(全長274cm)の体重は191kg。Sanderson(1912)がインド南部でしとめた数頭のトラは最大のもので160kgにすぎなかった。ここでも低地のトラは小型のようである。

 インド東部・スンダーバンスのトラは雄でも130−160kgしかない(ハンス・クルーク、2002)。
 バートン(1933)によれば1頭の雄は全長283cm(尾は95cm)、体重172kg、雌は全長250cm(尾は89cm)、体重109kgだった。
オーストラリア DreamWorld

頭骨全長(mm) 頭骨最大幅(mm) 全長(cm) 体重(kg) 地域・ハンター
406267 − 
400283 − 、Colonel A. Pollock
384260 Cooch Behar、Lord Stavordale
381262323(尾は109)223 Bengal、Colonel E. Gordon
378254315 Duars、Major S. H. Pollen
368264288 Deccan、Major W. J. R. Wingfield
368260312(尾は97) United Provinces、A. M. Markham
361241305 Nepal Tarai、R. Nolman


マレー半島のトラは最近ではインドシナトラとは別亜種だとの説がある。
 ビルマからマレー半島にかけてのインドシナトラ Corbett's Tiger はベンガルトラより小型で暗い体色をしており、縞模様は短いと言われる。ビルマの狩猟監視員だった E. H. Peacock が確認した約100頭のトラの内、全長9フィート(274cm)を超えていたのは11頭で最大のものは310cmあったが彼自身が撃った中では281cmが最大である。
 東に向かうほど小型化するようで、Kailash Sankhala(1977)によればマレーシア産35頭の平均全長は251cmである。
 マレーシア産の体重例では、2000年に樹液を採取していた老人を襲って殺したため警官に射殺された個体が110kgあった。フロリダ大学の Kei Kawasaki(2002)によれば2000年に生け捕られた2頭の雄は110kgと130kgだった。彼女はスマトラトラと同大であろうという。

 スマトラトラは小型で暗く赤味が強い体色で、縞模様は幅が広く長い。また上下が合流している。今泉吉典氏(1982)は(雌雄を通じて)体長142−173cmとしている。体重はスミソニアン国立動物園のかなり太目の雄で153kg、スリムな雌で84kgだった。
 ジャワトラもスマトラトラに似通っているが一層体色が濃いとされる。ほぼ同大のようで雄で全長248cmの測定例がある。残念ながらすでに絶滅している()。
 最小のトラバリトラについてはかなり以前に絶滅していることもあって記録が少ない。頭骨の測定例は幾つかあるが全長は雌の毛皮で213cm(尾は58cm)というのが知られているくらいだ。

 2007年10月、野生のアモイトラが写真撮影されたと中国で報じられたが、真贋に疑問を呈する声は根強い(Yahoo)。かつては香港でも見られたアモイトラは、1950−1960年に大量に駆除されたため、現在では絶滅しているとさえいわれるだけにその真偽は注目されているのだが。
 しかしその生存を証明する状況証拠はあるようだ。同じ10月に、雌牛が襲われて引きずって行かれた事件が陝西省林業庁の役人に確認されている。9月にはトラに殺されたとおぼしきクマの死体が発見されている。クマの毛皮、足、内臓の一部などと共に、トラの足跡も残されていた(SaveChinaTigers)。
 アモイトラの測定例もごく少ない。体長162cm、尾長76cm、体重150kg(Swinhoe)。大英博物館が上海から輸入した毛皮(かなり伸びている)で最大のものが全長297cmだった(Pocock)。アメリカのハンター、J. C. Grew が撃った大きな個体の毛皮はまだ新鮮な状態で全長320cmあった(Guggisberg)。

シベリアトラ

 ベンガルトラよりもシベリアトラの方が大きい。しかしながら信用できる記録に乏しく一般的に言われている数字−体長2.8m、尾を含めると全長3.9mとか−は毛皮の測定に基づくものらしく現実ばなれしている。冬のシベリアトラは脂肪が厚くその毛皮はより伸びやすいからである。
 ロシアの沿海州で1950年に体重384kgの巨大なトラが V. P. Sysoev(1960)によって撃ちとめられている。また、1933年頃、アムール川流域で350kgの記録がある(Filipek, 1934)。いずれも詳しいこと(体長など)は不明だ。

 1973年2月、北京動物園に飼われていたチョウセントラ(=シベリアトラ)が368kgあることが発表された(Wood, 1977)。このトラをご覧になったらしい神戸の王子動物園長(当時)の著書には、さらに大きなトラが当園にやってきたと書かれていたので、暑い中を見に行ったのだが、檻の片隅で眠っていた4歳のトラは並の大きさに見えた。飼育係の話では体重218kgとのこと。

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