世界最大の大蛇、アナコンダが生息する南米北部−アマゾン川、オリノコ川、ネグロ川、マデイラ川など熱帯雨林のあちこちに延びる大きな河川が形成する沼沢地−にはワニの仲間のカイマンも棲んでいる。アナコンダはカイマンを襲うことがある。

 アナコンダがカイマンを締め上げている写真をごらんになった方も多いだろう。7mのアナコンダが2mのカイマンを呑み込んでいたことがある。
 Nicholas Guppy(1963)がガイアナの Yampari 川で長さ5.3m(胴囲71cm)のアナコンダを捕獲したのは2.3mのカイマンを絞め殺した直後()だった。これは(アナコンダが勝ったうちでは)両者の大きさが最も接近していた例だがこのアナコンダはカイマンを呑みこむことができただろうか?

Pantanal Anaconda vs クロカイマン(亜成体)
上の2葉の写真は韓国の Kukaka さんから送っていただきました。

 アナコンダはカイマンを捉えると水しぶきと泥を跳ね上げながらワニの首に巻き付こうとする。そこがワニの体で最も弱い部分だからだ。しかしいつもアナコンダが勝利するわけではない。
 またカイマンがアナコンダを襲うことも少なからずある(Anacondas et caimans)。

 1996年5月、Rivas(1999)はカイマンがアナコンダの頭に噛みついているのを目撃した。アナコンダはカイマンの首のあたりを締め付けていたが、15分ほどするとその巻き締めを解いてしまった。力が尽きたようだった。そこで彼らは両者の間に割り込んでヘビを救出した。アナコンダは雌で494cm、カイマンの歯は脳にまで届く傷を与えていたが致命傷というわけではなかった。しかしこの戦い以前に負傷していたようで、結局アナコンダは2ヶ月後に死亡した。
 Rivas らはカイマンに殺されたアナコンダを12例発見している。このうち8回はワニはメガネカイマンだった。比較的大きなアナコンダはカイマンの攻撃から辛くも脱出できたがその後に死亡したようだった。

写真(右)はUchidaさんから送られてきました

↑ クロカイマン
 カイマン類は中南米に分布し5種があるが、最も代表的なのがメガネカイマン Spectacled Caiman でメキシコからパラグアイまでの広い地域に生息している。最大のもので2.6m、普通は1.8mくらいまでの小型のワニだが気の荒いことでは定評がある。
 南アメリカ北部には最大種クロカイマン Black Caiman も棲んでおり3〜4.5mになる。Malcolm Penny(1991)によれば昔は6mに達するものもあった。泳ぐのも走るのも速く、川や沼を移動する時には広大な密林を苦もなく横切る。
Pantanal Anaconda →
ブラジル北東部に棲む別種のアナコンダ

 インドではヌマワニがインドニシキヘビを襲うことがある。ダンバー・ブランダーはヌマワニの腹の中から何度かニシキヘビの残骸を発見している。
 ワニとニシキヘビでは体重が違う。ヌマワニはクロコダイル類では中型だがそれでも全長3〜4m、体重は200kg以上になるだろう。インドニシキヘビはかなり太目のニシキヘビだが特に大きなもので5.8m、91kg(Cooch Behar, 1875)だった。自分より重い動物を殺す可能性はあるが、ニシキヘビが先手を取ったとしても水中に入られたら、ワニにふりほどかれる可能性が高い。

 アフリカニシキヘビは比較的乾燥した地域に住むのでワニとの遭遇は少ないかもと思っていたが、たまには水の中にも入るようで、ナイルワニの餌食になることがある(National Geographic Magazine, vol.140)。

 マイアミのエバーグレーズ国立公園で2005年9月26日、1.8mのミシシッピワニと、4mのインドニシキヘビ(ビルマニシキヘビ)の死体が発見された。現場の状況から、ニシキヘビがワニを呑みこもうとしたが破裂してしまい、2匹とも死んでしまったと考えられた。
 フロリダ大学のフランク・マッツオティ野生生物学教授は「このような事例は自然界ではほとんどないがここでは、すでに4度も起きている」と話した。
 他の例では、ワニが大蛇との闘いに勝つか、引き分けた場合もあったということだ(Mongabay.com)。
 エバーグレーズではペットとして飼われていたものが、逃げ出したか捨てられたかしたインドニシキヘビがかなりの数生息しているという。既に繁殖しているとさえ言われ、生態系への影響が懸念されている(Sun-Sentinel.com)。
 ニューヨーク動物園に飼われていたミシシッピワニは1.8mの時(6歳)で体重33kgだった(R. Ditmars)。また爬虫類学者 Clifford Pope が飼っていた雌のインドニシキヘビは4mの時(15歳)で32kgあった。ワニやヘビの体重は個体によりかなり変化があるので一概には言えないが、両者の大きさはかなり接近していただろうから、ニシキヘビはやはり無理をしすぎたに違いない。
※ このニュースは tomoko さん、tpb さん、ジムケリーさん、熊澤さんから知らせていただきました。

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