ドゥロモルニス Dromornis stirtoni

 史上最大の鳥は従来、ニュージーランドのジャイアント・モア Terrible Bird か、マダガスカルのエピオルニス Elephant Bird だったが、両者に割って入ってきたのが、オーストラリアで見つかったドゥロモルニス類 Thunder Bird の最大種 Dromornis stirtoni だ。最初に見つかったのは脚の骨だが、後にはノーザンテリトリーの Alcoota Station で全身の骨格が発見され、高さ3m、体重500kgもあったと考えられた。
 現在オーストラリアに棲むエミュー(ダチョウ類)に近い鳥とされてきたが、最近ではガンカモ類に近いのではといわれ、別名 Giant Demon Duck of Doom

 ドゥロモルニス科には1839年以来、5属7種が記載されているが、Dromornis stirtoni の発見は1974年である。
 25000年〜1500万年前にオーストラリアの開けた草原に生息していたが、絶滅の原因はまだわかっていない。西ビクトリアの原住民の伝説に登場する Mihirung はこの鳥のことだとされている。
 1998年に発見された Bullochornis planei高さ2.5m、体重240kgに達する重厚な種で、大きくて頑丈な頭骨(50cm)とサッカーボールをくわえられるほどの嘴を持ち、これを含めたドゥロモルニス科のいくつかの種は、捕食者だったかどうかはともかく、肉食性ではなかったかと指摘されている。

最も重い鳥 エピオルニス Aepyornis maximus

 マダガスカル島に1000年前頃まで生存していた巨大な鳥で高さは約3mとジャイアントモアよりやや低いが、体重はその2倍近い440kgもあった。姿はモアに似ているが、系統的には現在のヒクイドリに近いといわれる。翼は退化しているが完全に失っているわけではない。しかし飛ぶための筋肉は発達していないので、飛べないことではダチョウなどと同じである。
 エピオルニスの絶滅も農業の進展が原因といわれている。開拓が進むにつれて森林から沼地へと追いつめられ、人やワニにより襲われやすくなったともいう。マダガスカルに人が進出したのは1万年以上前とされており(scitechdaily)、人の手に掛かったと思しきエピオルニスの骨も見つかっている。それだけではエピオルニスの絶滅が人によるとは断言できないが。

 アラビアンナイトに登場し、ゾウをつかんで飛び去る巨鳥ロック Elephant Bird はこの鳥のことだとされている。しかしマダガスカルでは最近 Stephanoaetus mahery という大型のワシ(カンムリクマタカに近縁)が見つかっており(500年ほど前に絶滅)、こちらの方がロックのモデルだったかもしれない。

 2018年9月、世界一大きな鳥をめぐって1世紀以上続いていた論争に一石が投じられた

 1894年に記載された Aepyornis titanAepyornis maximusと同一であるとされてきたのだが、ロンドン動物学会のジェイムズ・ハンスフォードよれば、エピオルニス・ティタンの骨は他のエピオルニスとは大きく異なっていることから、実は全く違う属の動物だったことが判明したという。

 ハンスフォードが新たに命名したボロンベ・ティタン Vorombe titan は、平均的な個体で高さ3m、体重は650kgもあり、大きなものでは860kgに達したという (AFPBB)。

※ 井上さんから知らせていただきました。

最も背の高い鳥 ジャイアント・モア Dinornis maximus

 比較的最近まで(1800年頃まで)ニュージーランドには原住民がモアと呼ぶ非常に大きな鳥が生息していた。ダチョウに似てさらに大きく、1937年から49年にかけて発掘されたほぼ完全な44体の骨格は高さ3〜3.7mもある。骨格は頑丈で、たくましい脚には太い3本の指があった。翼は全く欠けていた。大きな体の割に頭は小さく、フラットで短かった。

 モアの絶滅は原住民の狩猟が直接の原因だったと考えられているが、むしろヨーロッパからの移民による開発の方がモアにとっては深刻だったかもしれない。農地の開拓のために森林が切り開かれ、また焼き払われたりしたからである。

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