恐竜からくるイメージでもっとも単純で重要なものは大きさではないだろうか? 恐竜の値打ちは大きいことに尽きるといっても過言ではないだろう。では数ある恐竜の中で最大のものはどれか? すぐに答えが返ってきそうなものだが、実はそうでもない。500を数える恐竜の中でまともな復元骨格が存在するものは少なく、たいていは化石の足りない部分をグラスファイバーや石膏で模型を作って補っている。最近相次いで発見された巨大な竜脚類(かみなり竜)の多くは骨組の断片しか見つかっておらず骨格を組み立てるにも至らない。そこから推定される大きさにはかなりの誤差があると考えねばならない。

 その最たるものは1980年、モロッコで発見されたたった一つの足跡化石(115cm)を元に記載されたブレピパロプス Breviparopus taghbaloutensis だろう。この足跡の主は推定体重50t、全長48mなどという発表がなされたがこれらの数字にどれほどの根拠があるのだろうか?
 2009年10月、フランス国立科学研究センターはフランス東部のジュラ高原で巨大竜脚類のものと見られる足跡を発見したと発表した。長さ1.2−1.5m、これまで発見された恐竜の足跡としては世界最大という。約1億5000万年前のジュラ紀後期の白っぽい堆積層に、丸く陥没した複数の足跡の主は、体重30−40t、全長25m以上の巨大な竜脚類らしい(AFPBB)。

 1908年に東アフリカのタンザニアで発見されたトルニエリア Tornieria も、全長48mもあってクジラよりもはるかに大きかったといわれた。見つかったのは脛の骨や大腿骨など。
 最初はギガントサウルス Gigantosaurus と呼ばれ上のような巨大な想像図が描かれたりした (左の小さい方がディプロドクス ! )。
 しかし幾つかの骨は後にバロサウルス Barosaurus africanus のものであると同定されてしまう。残りはジュラ紀後期に生息した最初のティタノサウルス科のものらしいとして新たに Janenschia robusta と名前を変えることになった。かなり大きな恐竜だったことは確かなようだが、48mには程遠かった (24m)。


 インドの Tamilnadu で発見された僅かな骨を元に、1989年、Yadagiri と Ayyasami によって全長20mもある巨大な獣脚類ブルハスカヨサウルスとして発表された。しかし、1995年に Chatterjee が竜脚類のティタノサウルス科に分類し直した。その脛骨はアルゼンティノサウルスのものより25%も大きく2mもあることから、アルゼンティノサウルスよりはるかに大きく全長40m以上、体重は200t前後もあっただろうといわれた。
 しかしながら白亜紀後期、マーストリヒティアン期(7000万年前)という新しい時代のブルハスカヨサウルスは、ティタノサウルス科であるかどうかはまだ確定していないのだ。竜脚類という位置づけも、その巨大さから他には考えられないからだとのシンプルな理由による(Dougal Dixon, 2007)。


 2001年5月、エジプトでティタノサウルス科の巨大な恐竜の化石が発見され、パラリティタン Paralititan stromeri と命名された。
 見つかったのは103個の断片に分かれた16ヶ所以上の骨で最も大きいものは1.7mの上腕骨で単体の骨としては、下のトゥリアサウルスの上腕骨が見つかるまでは最大だった。
 推定体重は50−80トン、全長:24−30m
 もっともこれらの数字はこれからの研究よって変わってくるだろう。

 パラリティタンが白亜紀後期、およそ9500万年前に北アフリカにいたということは,白亜紀後期においても、アフリカと南アメリカが繋がっていたことを示唆する。この時代、南米には多くの巨大ティタノサウルス類が生息していたからだ。
 ペンシルバニア大学の調査隊が発掘したのはカイロから320km南西の Bahariya オアシス、今はサハラ砂漠となっているが、当時はマングローブの生い茂る沼地だったようだ。パラリティタンとは海岸の巨人(Giant of the beaches)という意味。また種小名 stromeri は、パラリティタンが発見される1世紀前にこの地で活動していたドイツの古生物学者、Ernst Stromer にちなんでいる。

 2004年3月、スペインの Teruel でまた最大級の恐竜発見のニュースがあった。草食性の竜脚類、それもパラリティタンに近いだろうと考えられている。
 中生代ジュラ紀のもので、179cmの上腕骨や30cmの爪などが見つかっている。上腕骨はパラリティタンのそれよりやや大きく、the largest humerus ever found in the world と述べられているが、ではタンザニアやアメリカで発見されたブラキオサウルスの上腕骨が2m以上あるというのは? これらの骨は完全ではなく欠けた部分を復元してのことだった?
 古生物学会を揺るがすであろうこの恐竜は2006年にトゥリアサウルス Turiasaurus riodevensis と名付けられた。竜脚類のどのグループに属するのか明確にされていないようだが、全長30−37m、体重40−48tと推定されている(BBC)。
※ わたぴーさんと古谷さんから知らせていただきました。


 現在、最大の恐竜として最もよく話題に上がるのはアルゼンティノサウルス Argentinosaurus huinculensis (上)で、1989年にアルゼンチンの白亜紀後期(9000万年前)の地層から発見されている。最初見つかったのは6個の繋がった脊椎と脚の骨の一部だけだった。その脊椎は高さが1.6mもあるが、これだけで全体の大きさを推定するのは難しい。竜脚類の中でもどのグループに属するかで体型が大きく変わってくるからだ。
 今のところティタノサウルス科に入れられているが、残念なことにこのティタノサウルス科の恐竜の多くがかなり不完全な化石しか見つかっていない。脊椎からアルゼンティノサウルスの胴の長さは7mもあったと考えられ、それから推定される全長は30m以上、体重は70tといわれる。僅かな骨しか見つかっていないにもかかわらず、早々と復元された全身骨格


 ティタノサウルス科ではもっと早くから知られていた恐竜にアンタークトサウルス Antarctosaurus giganteus(右)がある。アルゼンチンやブラジル、ウルグアイなどから化石が発見されていて大きな大腿骨は長さ2.3mある。
 わかっている限りでは比較的細身だったようで、最初は全長40mという発表もあったが、その後プロポーションの修正がなされたのか、30mあたりまで下がった。一方体重の方は40−55tといったところから70tくらいまで上昇している。おそらくアルゼンティノサウルスと同じくらいの大きさだった。
 アンタークトサウルスのオリジナル標本は、大型竜脚類としては珍しく、頭骨や顎、肩、脚や腰の一部など、各部の骨が揃っている。もっともこれらの骨がすべて同一の個体のものかどうかは定かでない。
 またインドからも見つかっているとされるが、アンタークトサウルスかどうかは疑問視されている。

 1991年には、やはりアルゼンチンからアンデサウルス Andesaurus delgadoi が報告された。パタゴニアの1億年ほど前の地層から、脊椎や足、尾などの骨が見つかっている。アルゼンティノサウルスとは場所も時代も近いが、別の恐竜とするに充分な違いが認められるという(Dougal Dixon, 2007)。
 アンデサウルスも発見された化石は少ないのだが、これまた最大の恐竜の一つといわれ、全長40m、体重75tに達したとする説がある。しかし上腕骨は135cmとそう大きくはない。また15mとか18mとの推定もあり、アルゼンティノサウルスほど明確なイメージが与えられていない。


 2014年5月、アルゼンチンから、アルゼンティノサウルスよりも大きいといわれる新たなティタノサウルス類の化石発見のニュースがもたらされた。大腿骨(2.4m)からの推定では全長40mに達し、体重も77トンという。この(まだ命名されていない)恐竜は、1億年ほど前にパタゴニアの森林に棲んでいた。
 ロンドン大学の古生物学者、ポール・アップチャーチによれば見つかったのは頭や首、尾などで、少なくともアルゼンティノサウルスとほぼ同じ大きさ、しかし完全な骨格が見つかっていないので、大きさを確定させるためにはさらに材料が必要だとしている(BBC)。
※ ac7059さんから知らせていただきました。


 2006年7月、アルゼンティノサウルス並の巨大な新種の恐竜の発表があった。2001年にアルゼンチンで見つかったもので、発掘されたのは頸骨や背骨、尾の骨など。その背骨は高さ1.1m、幅1.7mもある。
 ティタノサウルス科の1種で、プエルタサウルス Puertasaurus reuili と名付けられ、全長35−40m、体重は80−100トン? もあっただろうという。
 特筆すべきは大きさだけでなく、白亜紀後期−7000万年前にこれほど巨大な竜脚類が生存していたことだ。また当時のパタゴニアは森林地帯であったと考えられている。(National Geographic)。

 2007年10月、またもやアルゼンチンから最大級の恐竜発見のニュースがもたらされた。ティタノサウルス科の新種と見られるこの恐竜はフタログンコサウルス Futalognkosaurus dukei と命名されており、全長32−34m、頭までの高さ13m、体重70tと推定されている。
 化石は2000年に湖のほとりの約8800万年前(白亜紀後期)の地層から発見されたが、大型恐竜としては珍しく全体の7割がほぼ完全に近い形で発掘されたという。またこの化石には肉食恐竜に食べられた痕跡が残っている。同じ場所からメガラプトルの化石も見つかっているのが興味深い(BBC)。
※ スズメっちさんから知らせていただきました。


 2014年9月、アルゼンチンでさらなる発見があった。白亜紀後期、約7700万年前の巨大なティタノサウルス類の化石が見つかったのだ。ドレッドノータス Dreadnoughtus と(仮に)呼ばれているこの新発見は、全長26m、体重60トンと推定された。この個体は、冠水した平原で身動きが取れなくなって死んだ時点ではまだ完全な成体ではなかったとみられる。隣には、体がそれより小さいもう1頭の個体の化石も見つかった。またこの化石は体の各部分の骨70%余りで、完全骨格の45%に相当し、、ティタノサウルス類としては、これまでに見つかった中で最も完全に近い形のものだという(AFPBB)。

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