更新世のオーストラリアには非常に大きなトカゲメガラニアが棲んでいた。現在のオオトカゲ monitor or goanna に近縁で復元図ではたいていコモドオオトカゲを倍も大きくした姿で描かれている。
 比較的新しい時代の動物ながら、化石はそう多くはない。オーストラリア東部、クイーンズランドからニューサウスウェールズにかけての地域で、断片的な骨が見つかっている。全身骨格はまだ発見されていない。頭骨でさえ不完全なものしか見つかっていない。
 コモドオオトカゲよりいっそう大きく長さ7〜8m、体重は1tに達したとよくいわれていたが、これはいささか過大な見積もりだったようだ。

 部分的な骨格からの推定では現在のコモドオオトカゲよりも頑丈な体格で、尾はやや短く、最大もので全長5.5m、体重600kgに達したとされる(Victoria Museum)。
 タロンガ動物園に現在飼育されているコモドオオトカゲが長さ2.7m、体重80kgなのでこれは妥当な見積もりかと思われたが、5.5mでも長すぎるかもしれない。
 Naracoorte Caves はコモドオオトカゲより少なくとも1/3は長いとしているが、コモドオオトカゲは大物でせいぜい3m、100kgである。これからするとメガラニアは大きくても4.5mくらい、体重は330kg前後となる。
 また Stephen Wroe(2002)はコモドオオトカゲの平均を2.5m、54kgとみて、平均的なサイズと思われる3.3mのメガラニアは100〜160kgにしかならないという。

 メガラニアは内側にカーブした鋭い歯と、大きな爪を備えており、当時生息していた大型の鳥や草食獣を捕らえて食べていたものと思われる。また死体漁りもしたことだろう。
 サイほどもあったディプロトドンを捕食したかどうかはわからない。しかしその死骸は食べただろうし、ディプロトドンを引き倒す力量はあったといわれる(Naracoorte Caves)。
 コモドオオトカゲが590kgのスイギュウを倒したことがある(Auffenberg, 1981)ことから考えて、メガラニアは自分の倍の体重の動物を容易に捕らえ、ディプロトドンさえ倒すことができたという(BBC)。しかし現在のワニとサイやカバの関係を考えると少し強引な想像と感じられる。

 一方、コモドオオトカゲはその生息域で食物連鎖の頂点にあり、また他には捕食者といえるほどの大型の肉食獣がいないことから他の肉食獣の食べ残しを当てにはできない。しかしメガラニアと同時代に、オーストラリアにはティラコレオがおり、これは歯の構造から現在のネコ科よりも死肉食には向いていなかった。トラやライオンは死体の25%くらいは残すのが普通だが、ティラコレオはもっと多くを残してくれただろう。そこでメガラニアが自ら狩りをしなければならない必然性はコモドオオトカゲよりも低くその分死肉漁りの機会が多かっただろうと S. Wroe は考える。
 もっとも同じ時代、同じ地域に大型の肉食獣が生息していたからといってメガラニアが捕食者でなかったとまではいえない。メガラニアの化石が少ないことから生息数も少なかったようだが、メガラニアのいた所全てにティラコレオがいたわけでもないだろう。現在のブチハイエナがライオンの多い所ではその食べ残しを当てにしていても、ライオンの少ない地域では主体的に狩りをしているのだから。

 メガラニアは150〜200万年前に現れ、2万年前頃まで生存していた。しかしオーストラリアでは今なお生き残っているとの噂がある。1979年7月、Rex Gilroy は非常に大きなトカゲの足跡を見せられた。 Gilroy はその型を取ってメガラニアの足と比較し、非常に似ていることを確かめた(unmuseum.org)。
 また6m以上もありそうな巨大なオオトカゲを実際に目撃したとの話も幾つかある(驚異の未知動物コレクション)。メガラニアが絶滅したと信ずべきはっきりした根拠はなく、現在でもオーストラリア北部では超大型トカゲの目撃談が後を絶たない(金子隆一、1996)。
 現在のオーストラリアで最大のトカゲは、ペレンティオオトカゲで全長2〜2.5m、しかも細身で体重は17〜27kgしかない。ペレンティの誤認とは考えられないが目撃談そのものが怪しいとの疑問も払拭できない。

ペレンティオオトカゲ

Perentie Monitor

 オーストラリア最大のトカゲ。中部の内陸部から西海岸までの乾燥した地域に棲み、岩の割れ目や下の穴などに潜んでいて、小型の鳥獣や昆虫を食べる。

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