アフリカのサハラ砂漠南端、ニジェール国内のテネレ砂漠で行われた発掘調査で、1億1000万年前の巨大ワニ・サルコスクスの化石が発見された。
1964年にフランスの研究者が西アフリカのニジェールで頭蓋骨の一部を発掘していたが、National Geographic Society のチームは2000年の発掘作業で、それぞれ長さ1.6−1.8mもある成体の頭蓋骨3つと、幼体の頭蓋骨3つ、その他の部位の骨など全身のほぼ50%の骨を発見した。
サルコスクスの頭骨は現在のガビアルに似て顎の部分が極めて長いのが特徴。しかし幅も広い。マチカネワニの頭骨と比べても鼻先は太めである。ガビアルのような脆さは感じられない。
サルコスクスは頭骨の大きさから全長11−12mもあったと推定された。最大のワニの一つといわれているが、ほぼ同じ大きさの頭骨を持つデイノスクス(現在のクロコダイルに近い)と比べてどうだろう。何故サルコスクスの方が大きかったといえるのだろうか?
巨大なサルコスクスは同じ時代の草食性恐竜−ハドロサウルス類−を餌食にしていただろうとよくいわれる。
イギリスで見つかった大型肉食恐竜・バリオニクス(9m)の化石(胃の中に魚の化石が残っていた)からこの恐竜は魚を食べていたと考えられている。そしてこれと似た顎の特徴を持つスピノサウルス(15m)も魚食だったと考えられるようになった。サハラは当時は大きな川が流れる緑豊かな地域だった。サルコスクスは淡水生の雑食で、魚や亀などを食べていたらしい。
2007年8月、パリの自然史博物館に、サルコスクスの実物大の模型が登場した。フランスの古生物学者 Philippe Taquet が、40年前にニジェールで発見された化石を調査し、この古代のワニを Sarcosuchus imperator と名付けた。
サハラ砂漠にかつて流れていた川に生息し、大きな魚や小型の恐竜を川の中に引きずり込み餌にしていたとみられている(AFPBB ニュース)。
サルコスクスの長い顎は現代のワニでいえばオーストラリアのジョンストンワニ(最大3m)やアフリカのクチナガワニ(最大4m)を想わせる。これらのワニは長い口を横なぐりに左右に振って魚を捕えている。もっと大型のインドガビアル Gavial も同様だ。
インド北部、バングラデシュ、ネパールなどには、非常に口の長いワニが分布している。このワニ、インドガビアルは最大で全長7mに達する大型のワニで、上顎に27−29対、下顎に24−26対の細長い歯を備えている。
ガビアルのような口吻の長いワニは、明らかに素早く泳ぐ魚を捕食するために適応している。口吻でなぎ払うように魚を捕らえるのだ。この時同じスピードで頭を振り回しても、口吻の長い方が大きく円弧を描くことになり、魚を捕らえる部分のスピードは速くなる。これは流れの速い川に棲む動きの素早い魚を捕らえるのに、他のワニよりも有利である(青木良輔、1993)。
飼育下ではインドガビアルの細長い口は折れやすいといわれる。闘争には不向きなのだ。インドガビアルが人を襲った記録はなく、また大型の哺乳類とも争わないのはそのためだろう。
6.4m | Jalpaigur, Cheko River | 1934 |
6.6m | Fyzabad, Gogra River | 1920 |
7.1m | North Bihar, Kosi River | 1924 |
ヒマラヤに源を発するインド北部の水系から推定全長18mといわれる巨大なランフォスクス Rhamphosuchus が発見されている。700万年前のこのワニは口吻が長いタイプのようでガビアルに近いのかもしれない。長さでは史上最大のワニかもしれない。しかし見つかっている化石はごく一部である。そして最近では(新しい発見があったのではなさそうだが)11mくらいだったとの見積もりも出ている。
現在のガビアルに近いと思われるワニの化石は、アメリカのフロリダからも見つかっている。550万年前のガビアロスクス Gavialosuchus americana は全長14mもあったという(Neill, 1971)。
しかし George Klein(2005)によるとこれまでに発見されたガビアロスクスの最大の頭骨は1.3mである(Polk County, Florida in 1990)。彼は全長9.5m、体重4tと推定している(これでも体重は少々過大か)。