大蛇は人を呑むかとのテーマを考察した研究者は口を揃えて、云われるほど頻繁には人を襲うものではないことを認めている。にもかかわらず若干はそういう実例があったことも確認している(O. ブレランド、1963)。
 しかし重要なことは人を呑めるかどうかはともかく、あまり大きくない大蛇でも人を殺す力はあるということだ。

アナコンダ 11.5m
 人を餌食にするのに十分な力量があり、7mのアナコンダが2mのワニを呑み込んでいたことがある。
 しかし人を攻撃した例はあるものの呑み込んでしまったケースはごく少ない。

 Blomberg(1956)はアナコンダが人を殺した例を二つ確認している。ひとつは、エクアドルの Napo 川で泳いでいた男(成人)がアナコンダに巻き付かれ、水中に引き込まれてしまった事件だ。彼の父親がその死体を発見し、大蛇の締め痕を確認している。獲物が大きすぎて呑み込めなかったのだろう。
 もう一つは、Napo 川の支流、Yasuni 川で起こった。泳いでいた13歳の少年がアナコンダにさらわれたのだ。一緒に川にいた仲間の子供たちは岸の近くで泡が沸き立つのを見ており、一人は水中に潜って巨大なアナコンダを見つけている。
 息子の復讐を決意した父親は一昼夜をかけて仇敵を捜し回り、川岸に体を半分出して休息しているアナコンダを見つけた。彼はライフルを5発撃って大蛇をしとめた。ヘビの大きさには触れられていない。

 1979年にブラジルで漁師が殺されたが翌日にその死骸が見つかっている。胴体の直径が60cmもあるその怪物は以来何回か目撃されたそうである (Wood, 1982)。


アフリカニシキヘビ
 最も攻撃的な大蛇として定評があり、人を襲った例がいくつもある。特に有名な事件は、ビクトリア湖の Ukerewe 島で起きた。大人の女性が洗濯をしているところを襲われ締め殺されたのである。このヘビは長さは4.5mしかなかったが胴は太く直径が40cmもあった(Loveridge, 1931)。

 2000年6月、ケニヤで35歳の男性が6mのニシキヘビに飲み込まれた。腹を膨らませたヘビはすぐに発見され、被害者の死体が取り出されている。

 1979年11月、トランスバール北部の農場でウシを追っていた13歳の少年がニシキヘビに襲われた。一緒にいたもう一人が2人の兄を連れて戻ってきた時(20分後)、ニシキヘビは少年に巻き付いて締め付けていた。一人がツルハシで攻撃した。しかしヘビがその柄に咬みついて引っ張っただけで男は肩を脱臼して武器を落としてしまった。もう一人が石で攻撃した時、ニシキヘビは少年を放し逃走した。犠牲者は既に死んでいた。2日後にニシキヘビ(5m)は生け捕られた(Branch and Haache, 1980)。

 1982年10月、南アフリカで14歳の少年がアフリカニシキヘビ(5m)に巻きつかれた。しかし彼はニシキヘビの喉に咬みついてこれを殺してしまった。後に彼は家族とともにニシキヘビの死骸を運んで警察に現れた。少年の供述によれば、農場でヤギの世話をしている時にニシキヘビに襲われた。ヘビは彼の左肩を狙って攻撃してきたが、少年が Knobkerrie(南アフリカの Kafir 族が使う棒のような武器)を突き出すとそれをくわえた。ほぼ20分間、彼はニシキヘビを噛み続けついにこれを殺したという(Branch and Haache, 1982)。


アミメニシキヘビ
 東南アジアのアミメニシキヘビは動物園でオランウータンを呑みこんだことがあるので、人間でも呑みこめるだろう。
 1995年9月、ゴムの樹液採掘者、29歳の Ee Heng Chuan がマレーシアの Segamat で大きなアミメニシキヘビ(7m)に襲われて殺された。帰りの遅い彼を捜しに来た兄は、ニシキヘビに巻き付かれてちょうど頭が呑みこまれているところを発見した。
 ヘビを殺し、回収された死体の脚には歯形が残っており、彼は不意に(まだヘビの存在にも気づかない時に)脚を噛まれ、絞め殺されたようだった(AP)。

 マレーシアのジャングルで、ブタを呑みこんだアミメニシキヘビは眠っていた。フランスの動物商 Charles Mayer(1920)とその一行は、ヘビを入れる箱(2.4m×1.8m)を据え付け、大蛇に近づいた。彼らはヘビに2本(首と尾)のロープをかけることができたが、もう1本をかける前に目覚めたニシキヘビの反撃を受け、数人がなぎ倒され、一人が絞め殺されてしまった。
 それでも彼らは何とかヘビを箱に引きずり込むことに成功した。押し込まれた窮屈な箱の中でヘビは再び眠りだし、ブタの消化を続けた。Mayer からこの大蛇を買ったリバプールの仲買人はそれが9.8mもあったことを彼に告げた。
 これが飼育された大蛇としては最大(最長)の記録である。

インドニシキヘビ
 他のニシキヘビよりもおとなしい種類で、観光地では人の肩にのせるなどのパフォーマンスに良く使われる。しかし1960年に東パキスタンで6.1mのインドニシキヘビが8歳の子供を呑み込んだことがある。
 2003年11月21日、バングラデシュで僅か3mのインドニシキヘビがおとなの女性を絞め殺した。村人が発見した時彼女は頭から腰のあたりまで呑み込まれていた (X51.org)。

1983年4月、セントルイスで42歳の男性が死んでいるのを彼の妻が発見した。最初は心臓麻痺かと思われたが、検視の結果、飼っていたニシキヘビ(4.9m、45kg)に殺されたと判明した。ヘビは彼によくなついており、しばしばベッドで戯れていたという。また天候の良い休日には庭に放したりしていた。飼い主を殺したニシキヘビはセントルイス動物園に送られた(AP)。
 1993年、コロラドで飼われていたインドニシキヘビ(336cm、24kg)が15歳の少年(43kg)を絞め殺したことがある。ヘビに攻撃された時彼は眠っていた。ヘビは彼の足の甲に咬みついてから巻き付いたらしく、彼の両手の指には歯形が突いており、咬みついているヘビの顎をこじ開けようと試みたようである。ニシキヘビが彼を呑みこもうとした形跡は見られなかった(Chiszar, 1993)。
 1996年10月、19歳の男性が飼っていたビルマニシキヘビ(4m)に絞め殺された。彼がペットのヘビに餌を与えようとしていた時だった(AP)。

 2007年1月1日、フロリダ州ターポンスプリングスで、同地の水族館でショーに出演していた4.2mのミャンマー産のニシキヘビが女性飼育員(18)に噛み付き、檻の中へ引きずり込もうとする騒ぎがあった。通報を受けた警官が、気絶させるスタンガンをヘビに発射、飼育員の解き放すことに成功した。
 飼育員は腕や腰にヘビを巻き付けさせ、入園者に見せていた。ヘビが体から離れないことから、水族館スタッフと見物人が協力して、檻の中へ入り込むのを阻止したという。同水族館の経営者も過去に1度、このヘビに餌をやっていた際、噛まれたことがあるという。今回の騒動を受けショーは当面中止が決まった(CNN/AP)。

 2007年1月24日、ロシア南部の Stavropol のサーカスで5.4m、約100kgのニシキヘビが62歳の女性飼育員を攻撃、窒息死させる事件が起こった。サーカスは同地方を巡演中で、ヘビは檻を脱出したとみられる。
 遺体はヘビの飼育場近くで発見され、女性の首周りにヘビが巻き付いた形跡があったという。ヘビは近くで見付けられ檻に戻された(CNN/AP)。
※ 上の2件は ac7059さんから知らせて頂きました。

カンボジアの村では7歳の男の子が自宅で雌のニシキヘビ(5m、100kg)と戯れている。少年はこの7年間で、ニシキヘビと厚い信頼関係を築いているとか(MSN 産経)。

 2007年9月17日、香港で公園を散歩中に愛犬が4.5mのビルマニシキヘビに襲われた女性が、大蛇と格闘し愛犬を救出した。ヘビを蹴り、愛犬をヘビから引き離そうとした。大蛇は彼女の体に巻きついてきたが、何とか愛犬を解放、ヘビは退散した(時事通信)。

アメジストニシキヘビ
 オーストラリア北部やニューギニアに棲む細長いヘビで、1948年にケインズで7.6mの記録がある(よく8.5mといわれているがこれは皮の測定らしい)。
 長い割に胴の細いヘビなので人を襲うには力不足かもしれない。オーストラリアで人が襲われた唯一の記録は、藪の中で眠っていた生後3ヶ月の幼児が大蛇に噛まれて引きずられているところを両親が見つけ、あわやのところで救出した話が新聞記事に見える(Caras, 1975)。
 ちなみにアメジスト(紫水晶)とはヘビの鱗が光を受けて輝くところから来ている。

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